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本当は怖い賑やかなお祭り

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「パ、パパさんっ!」


 あー恥ずかしや。
 ものすっごい早口で言い切った。

 ……ん? なんだなんだ? ポトリポトリと何かが上から落ちてくる。
 ぬぐってみると……水?

 上を見上げると、アノ人が例の無表情のまま静かに目から涙を流していた。


「すげぇ。チビのやつ、神さん泣かしてやがる」
「なかせてないっ! わたしのせいじゃないよっ!」


 聞き捨てならないことを言わんでくれるか、海斗さんっ! 
 あなたもどーして泣いてるのさっ! おかげであらぬ事を言われてます。心外です。オコです。


「雅が……吾子あこが自ら我をパパさんと……」


 ……どんだけ呼ばれたかったの。恥ずかしいからやめてよ。ほら、これで涙拭いて。

 ……あ、これ台拭きだ。


「はい、ここにすわって」
「……ん」
「いや、わたしはすわらんよ」


 手を広げたって無駄だ。私の今日の定位置は劉さんの横って決まってる。


「こちらに来れば、何でも願いをかなえてやろう」
「……」


 なんてこと。神様パワー使うなんて卑怯ひきょうじゃあるまいか。

 まぁ、仕方ない。
 座るだけで叶えてくれるなら座ろうじゃないか。


「すわるだけ。おさわりきんし」
「うむ」
「あのね、もとにもどりたいの。ちょっとのあいだだけ」
「元に? 元に戻るのはそなたの自由だ。平時は戻りたくないと思っているから戻れぬだけ。強く願えば良い」


 そういえば、そんなこと言われたっけ?
 でも、高い所の物を取る時とか、わりと元に戻りたいなぁと思ってるけど、それだと戻ってないし。

 戻れー戻れー戻れぇーぃ!

 ……ふぅ。ダメだ。


「だめです。もどれましぇん」


 力が抜けて、へにょっとなってしまう私の身体。

 前に戻った時は無我夢中で大変な時だったから、戻りたいなんて微塵みじんも思ってなかったし、戻れるとも思ってなかったからなぁ。


「あの時は確か、そこな人間を助けるためであったか。もう一度、誰ぞが怪我けがえばよいのではないか?」
「だ、だめだよっ!」


 いきなりなんてことを言いだすんだ、この人はっ!

 皆も、もちろんドン引いている。
 やっぱり神様の感覚は人のソレとは大違いだ。

 ……でも、人柱にされそうになっている人は実際にいる。だから、その人を助けたいって思えば。


「……んーっとこどっこいしょーっ!」


 ……戻れた! 戻れたぞーっ!


「……今の掛け声は聞かなかったことにします」
「ははぁ。ありがたき幸せ」
「……なーんかチビといると、神様に対するありがたみが一気に薄れるよね」
「それは面目めんぼくない」


 それにしても、前も思ったけど、元に戻った時に身体に合わせた服に着替えてるのすごいよねぇ。

 でなきゃ今頃、私全裸ぜんらだし。
 さすがにこの姿で皆の前で全裸は恥ずかしいし色々まずい。


「雅、ちゃん?」
「はい!」


 そういえば、瑠衣さんと黒木さんはこの姿では初めましてだ。

 それでは、改めまして。


「柳雅、今は十六歳です! ……この姿でも、仲良くしてくれますか?」
「んーっ! もっちろんよっ!」


 瑠衣さんは私の元ににじり寄ってきて、首の位置で抱きしめてくれた。

 瑠衣さんっ。お胸がやっぱりすごいっ。

 ……さて、準備も整ったし、いつでもカモンッ!
 悪いことするコは、大人も子供も引っくるめてお仕置きをさせていただきまっす!
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