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幽霊の正体見たりなんとやら
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しおりを挟む「あーっ! もうっ!」
おにぎり二つ目の半分を過ぎた時、かなりイライラしたご様子の都槻さんが戻ってきた。背後に雷を伴った暗雲が立ち込めている。
「ダメだったの?」
「ダメだったの! むーかーつーくー!」
い、院長先生が運ばれた後で良かった。
今の様子じゃ、床に転がっていた院長先生はきっとていのいいサンドバックになってたかも。
さすがに血を吐いた事実はあるし、もしそのままだったら都槻さんが止めを刺しかねなかった。
「私が追いつけなかった時点で人間じゃないのは確実だし、人間を害した罪で捕縛対象決定よ。ってことで、私、院に戻るから! 地の底までも追いかけて必ず捕らえてみせるわ!」
「何故院長を狙ったのかの詳細や、裏にいる者等の確認もお願いいたします!」
橘さんの声が最後まで聞こえていたかは分からない。
うーん。
あれは、ほぼほぼプライドから来る私怨だと思う。
まぁ、捕まった方がいいことは確かだけどもね。
「院長が狙われたということは、敵は私達が勘付いたことにも気づいているでしょう」
「あぁ。院長自身は彼女が見ていてくれるからいいとして、その周りの動向も調べたいな。各家に忍び込ませている間者に怪しげな行動をする者がいたら今まで以上に目を光らせろと伝えてくれ」
「すぐに」
帝様の指示を受け、橘さんが部屋を出て行った。
「……あぁ、雅。さっき夏生から連絡があった」
「えっ!? なつきしゃん!?」
なんてなんて?
「お前がまた何かしでかしていないかだと」
む。なぜそんな心配されるのか。
いつだってそんな変なことなんてしてないのにさ。
「戻ったら連絡するよう言っていた」
「おおとりしゃん! けーたいかしてくださいなっ!」
まったく。けしからん。
私を歩く問題製造機かなにかと誤認してるんじゃなかろうか。
まったくもってけしからんよ、これは。
『もしもし?』
「あっ! なつきしゃん?」
電話の向こうで待機してたんじゃないかってくらい夏生さんの番号にかけたらすぐに出た。
「あのですね、なつきしゃん。わたしはなつきしゃんにいわねばならぬことがあるのです」
『そーかそーか。奇遇だな。俺もある』
「ん?」
なんぞ?
電話口だと相手の顔が見れないから不便だ。
私はいつも相手の顔を、夏生さんの表情を見て逃げ時を……
『お前はなんでそう行く先々でトラブルを引き起こしてんだ! しかも今回は鳳が目をつけるほどの病院だって言うじゃねーか! また力使っただろ!?』
「……」
ば、ばれてるわぁー。
鼓膜をぶち破られかねないほどの声量で怒られた。これはもう、いつもだったらすたこらさっさと逃げ出している。
で、でもさでもさ、今回のは必要な力の使い道でっ。言うなれば人助けだったからっ。
「ま、まぁまぁ、おちついて」
『それは傍観者だけが言えるセリフであって、当事者のお前が言っていいセリフじゃねーよ!』
「……ぴゅーぴゅー」
吹けやしない口笛で誤魔化してみました。
『まぁまぁ、夏生さん。ちょっと代わってくれます?』
『あ? ……ほらよ』
よ、良かった。夏生さんから綾芽に交代だ。
とりあえず、あの鼈甲飴のお礼を言って……
『何かあったらあの人呼ぶよう言わへんかった?』
「い、い、いったねー!」
言わなかったかもしれないなんて嘘はつけなかった。
誰だぁ、綾芽に代わって良かったなんて思ったのは。……私だねぇ。
『君、はいってお利口なお返事しいひんかった?』
「し、しましたー」
『で、呼んだん?』
「よ、よんでないけどきました」
『……それで、君はちゃんと大人しゅうしとったん?」
「お、おとなしく……してましたヨー」
『嘘やろ』
瞬殺だった。もう鮮やかなくらい瞬殺だった。
「ち、ちはやさまと」
『ん?』
「い、いっしょだったから……その、だいじょうぶだったから」
『それ、結果論やから』
やだ。どうしよう。
綾芽の怒ってる顔が夏生さん以上に頭にはっきりと浮かんでくる。
『これは戻ったらホラー鑑賞会せなあかんなぁ』
「ひっ!」
いくら耐性がついたとはいえ、まだまだ序の口。
怖いものは蛇とホラー。
あとそれに、夏生さんのお説教と、綾芽の怒った時も加わりそうです。
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