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イタズラよりお菓子

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 ここはどこだろう?

 目覚めた私は座敷牢ざしきろうみたいなところに入れられていた。幸いにも手足は縛られてない。

 ……怖くない。怖くなんかないよ?

 立ち上がって鉄格子てつごうしつかんでらしてみたけれど、当然ビクともしない。


「……」


 選択肢せんたくしその一。
 みんなが助けに来てくれるまで大人しく待つ。

 そもそも私にすらここがどこか分からないから却下きゃっか

 選択肢その二。
 自力でここから出る。
 
 後で色んな方面からすっごく怒られるかもしれないから、とりあえず保留。

 選択肢その三。
 アノ人を呼ぶ。

 一番選びたくない選択肢だけど、背に腹はかえられない。でもやっぱり保留。

 どうしよう。選択肢が不穏か絶対イヤなのしか残ってない。

 私がウンウンうなって考えていると、そばにあった階段を誰かが下りてくる音がした。


「あら、本当に捕まえられたのね。私、何故かあのお屋敷に入れなくなってしまったから、どうしようかと思ってしまったわ」
「……せりしゃん」


 現れたのは自称・綾芽の婚約者サマだった。


「最近、綾芽さんがちっとも私と会ってくださらなくなったのは、貴女がいたからなのね。ずるいわ? 綾芽さんを一人占めだなんて。だから、私、考えたのよ。貴女がここにいればいいじゃないって」
「あやめはこないよ?」
「いいえ。来るわ?」


 何かしらの根拠があるのか、瀬里さんは自信満々に応えた。

 私は綾芽を呼び出すための人質ってわけですか。むぅ。
 綾芽、来るな来るな来るなー。

 届くか分からない念を必死に送ってみた。

 自称・私のパパさんよ。たぶん聞こえてるだろうし、居場所も知ってると思うけど、綾芽には言わないで! そんでもって助けてください! お願いします!
 

「お嬢様、綾芽殿が参られました」
「あら! うふふ。やっぱり来てくださったのね」


 ……アノ人に頼ろうとした私が馬鹿だった。

 階段の上から声をかけられ、瀬里さんは頬に手を当てながら上へ戻って行った。代わりに、私をここまで連れてきてくれおったおじさんが下りてくる。


「……おじしゃん、きらいよ」
「うん。ごめんなぁ?」
「あやまったってゆるしません! おなかすいたの。おかし、かえして」


 気絶する前まで持っていたお菓子入りの袋がなくなっている。

 あれは! 私の! ものだ!
 正当なる返還要求に応えてもらうことを所望しょもうする!


「あー、それなんだけどなぁ」
「なに? たべたか!? たべたのか!?」


 先程よりも鬼気せまる私の様子に、おじさんは若干引いている。


「い、いや、食べてなんかいないよ。ちょっとこれからまた移動しなくちゃならないんだ。だから、その後に渡すよ」
「いどう? あやめのとこいくの?」
「……いや。俺の主人のところにさ」
「しゅじん? せりしゃん?」
「いや。君のお父上もよく知ってる御方のところだよ」
「えー?」


 お母さん、だといいなぁ。

 と、思ったけど、それはないってことはすぐに分かった。


「へ、へへへ、へびぃぃぃぃっ!」


 お母さんも私も大の蛇嫌い。
 おじさんの姿が大きな蛇に変わった時、これはないなと理解。
 鉄格子を上手くすり抜け、身体に巻きつかれた時にはもう。全身が鳥肌で覆われ、きむしりたくなってくる。

 とりあえず、今回のことで学んだ教訓を一つ。

 良く知らない人からお菓子はもらいません! 同じく、知らない人外からもです!
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