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イタズラよりお菓子
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しおりを挟む◇ ◇ ◇ ◇
「ひとーつ、かみしゃまのちからはむやみにつかいません」
「うん」
「ふたーつ、かってにおでかけしません」
「うん」
「みーっつ、オヤツはいちにちひとつまで」
「うん」
「よーっつ、おさけはぜったいにのみません!」
「そう」
以上、私専用ルールでした。
大広間の鴨居にかけられているここでの皆が守る規範の横に、この間の一件の翌日から私専用のルールが書かれた紙が貼られるようになった。
そして、毎朝の日課である綾芽を起こす・ラジオ体操に、大広間に行ってルールの読み上げが追加されたのだ。
……未だに思うけど、最後のは不可抗力だよねー?
それに、次の日頭ガンガンしたからお酒はもう飲まない。痛いのはイヤ!
「さて、ほな朝ご飯食べに行こか」
「あい!」
手を繋いで、朝食が待っている食堂へ向かう。
今日のは何かなぁ?
昨日はベーコンエッグサンドとコンソメスープとフルーツヨーグルト、一昨日はシシリアンライス、そのまた昨日はパンケーキとみかんゼリー。もちろん、おじさん達はこれで足りるわけがないから別メニュー。
さすが厨房の皆さん。お手数かけます。ありがとう!
「んふふふー」
食堂へ着くと、皆に挨拶して回り、すっかり定位置と化した厨房から一番近い席に私専用の椅子をズルズルと押していく。
途中で手伝ってくれようとするおじさんもいるけど、ご心配無用です、ありがとう。
その間に、綾芽が自分の分と私の分を席まで持ってきてくれる。
いい匂いが溢れるご飯時の食堂は二番目に好きな場所だ。
一番目は……ふふふ、内緒!
もう恒例となった綾芽に向かって手を万歳。これをすると、綾芽が抱き上げて椅子に乗っけてくれる。
さてさて、本日の朝食とご対面!
「フォー!」
今日の朝食はスコーンとフルーツ盛り、あと林檎サラダ。
まったくもう。けしからんほどに私のお好みを分かっていらっしゃる。しかも、栄養バランスもきちんと忘れない。さすがです。
「いただきましゅ」
早速スコーンを取ろうとすると、綾芽が横から皿ごと掻っ攫っていった。
「そんな顔せんでも、取って食おうなんて思ってへんて」
その言葉通り、綾芽はスコーンについていた苺ジャムやブルーベリージャムをせっせと塗っていく。
……なんだか……すまんね、勘違いして。
「ほら、もうえぇよ。膝にちゃんと紙のやつ引いた?」
「あい」
「なら、腹の虫が暴走せんうちに早う食べよし」
「はーい!」
五月蠅いもんね、ヤツは。食堂中に聞かれてしまったらコトだ。
薫くん達が私用にってわざわざ一口サイズに作ってくれてるから、パクパク何個でもいけちゃいますねぇ。
あ、これ、中にレーズンが入ってる! こっちはチョコだ!
綾芽も事前に聞いていたのか、ジャムは何も入っていないものにだけ塗られていた。
……ほんと嬉しいなぁ、みんなの心遣いが。
「……りょーりにんさんたち、きょうもおいしー!」
「チビちゃん、声大きいよ」
厨房の料理人さん達がくすぐったそうに笑っている。それを見て、私もさらに笑顔になっていく。
今日はこの後、夏生さんへの大事なお話しという用事が控えている。その前の景気づけにはぴったりだった。
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