籠ノ中ノ蝶

第六章―切実なる願い―

8

　先生の屋敷に戻ってきて、気付いたことがある。

　どうやって戻ってきたんだろう？

　確かに起きていたはずなのに、ジョエル君の屋敷を出た所から先生の屋敷の玄関をくぐるまで何も覚えてない。

　それに、小さい頃の私はどうやってここまで来たんだろう？

　……それも気になるけど、まずはとにかく……。


「先生。先生が知っている私のこと全て教えてください」
「……分かった。でも、先に約束して？　何を知っても、僕の隣にいてくれるって」
「……分かりました」


　いつもの定位置化しているベッドの縁に二人で腰かけ、私は足元に擦り寄ってきたコハクを膝の上に乗せた。


「君のお父さんは……」


　先生は私を抱き寄せながらぽつぽつと昔語りを始めた。