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かの肩書、王太子なり
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しおりを挟む……うん? アイツは確か……。
「……ゲッ」
「あぁ! 由貴の手駒のおっさん!」
道の反対側から歩いてくるのは、由貴の国で私を拉致って城まで連れて行ってくれたおっさんじゃないですか。
どうして方向転換して逃げようとするんだい? 悲しいなぁ。
というわけで、そこでストップ、アンド、ステイ。
「やぁ、こんにちは」
おっさんが立ち止まらされた場所までゆっくりと歩いた。
真正面に回り込むと、まるでこの世の終わりみたいな顔をして立っているじゃあるまいか。失礼な。
まだ挨拶しただけだというに。まだ。
「ここで会うなんて奇遇だなぁ。何してるの?」
「べ、別になにも……」
「へぇ? サボり?」
「違うっ!」
冗談だよ、冗談。
理由を話すまで私が解放する気がないのを悟ったか、おっさんは深い溜息をついた。
「……明日、あそこの学園では保護者の見学が認められる日になってんだよ」
「ふぅーん」
「もちろん保護者だけじゃなく、将来的に子供達が仕えることになる王族達も中には来るところもある」
「ほうほう」
「で、うちのワガマ……女王陛下も視察に行きたいとごねたんだ」
「へー!」
由貴も明日来るんだ。なーるほど?
ふむふむ……いーこと思いついちゃった!
リュミナリアからは誰が来るか分かんないしね。
治安もなかなか悪くなってるみたいだから、シーヴァとかが国王夫妻を直接行かせるのは止めそうだし。
「……おっさん、取引、しよっか」
ニッコリと笑って見せた私に、おっさんはゴクリと重々しく唾を飲み込んだ。
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