48 / 65
隣国でのオタノシミ
13
しおりを挟む◆◇◆◇
まさかの事態を迎えた婚約破棄イベントが終わり、私達は国に帰ってきた。
ステラシアとは手紙を書くからねと言って泣いて別れましたよ。
別れ際に新しく王太子となったキドラク殿下に
「今度直にお会いするのは我々の婚約式になるでしょうね」
そう言われていた時のステラシアの顔は絶望に染まり、それを見てキドラク殿下はイイ笑顔で笑っていた。
「サーヤ! お帰りなさい!」
「ただいま。いい子にしてたか?」
「うん!」
王宮の入り口につけられた馬車から降り立つと、ジョシュアとミハエル、エンリケが出迎えてくれた。
「ご苦労様でした。万事恙無く行えております」
「そうか。お前もご苦労だった」
リヒャルトの代わりに神殿騎士を纏めていたのはエンリケだったようだ。彼は得物さえ持たなければすごく気弱な青年なのに……刀や銃、その他諸々の武器を持つだけで人格豹変する。
死の番人程ではないにしろ、戦闘大好きっ子になるだなんて……どんな幼少期を送ってきたのか少々心配になるよ。
「ほら、渡すんだろう?」
「う、うん」
ミハエルに何やら促され、途端にもじもじしだすジョシュア。激カワです。なに、なんなの? 何を渡してくれるの? ていうかジョシュアからもらえるもんならなんでも嬉しいんだけど。
「これー」
「ん?」
しょうたいじょう? 招待状か?
ジョシュアの筆跡だからこれはジョシュアが書いたものに間違いないとして……なんの招待状だ?
ミハエルを見ると黙ってニコリと笑っている。……なんか自分は全て分かってますから的な微笑みむかつく。
「そういえば今日はユートリアの日でしたね」
「ユートリアの日?」
ユートリアの日って確か……あ。異世界版母の日。
ごめんよ、お母さん。こんなにも子供からの贈り物って嬉しいものだったなんて。いっつも何事もなく終えてたもんなぁ。
「今日は僕がご飯作るからね!」
「うん、ダメです」
「えっ!」
「え?」
だって料理ってなかなかに怪我の心配とか火傷の心配とかあるんだよ? キッチンは女の戦場とはよく言ったもんだ。そんなヒヤヒヤさせられる状態で私がなんの手も出さずにいられると思うか? 思いません。
ジョシュアもまさか断られると思っていなかったのか口をパカッと開けて私を見上げている。でも次第に言葉の意味を理解したのか泣く三十秒前くらいの顔をしてきた。そんな顔をしてもダメなものはダメです。
「ひ、一人っきりじゃなくとも、誰かと一緒にやればいいのでは?」
「私がやってもいいのか?」
ジョシュアはフルフルと首を横に振った。なんだ、このフられました感。
「シン、一緒に……」
「神様をそんなことに使うんじゃないよ」
「……はぁい」
そんなこと……料理よりもさらに下らないことに使ってるけどね。お使い行ってきてとか、留守番とか。言わなきゃ分からんから黙っとこう。
そしてシン、ちょっと感動したみたいな顔やめろ。バレるやろ。
「王宮の料理長に頼んでみましょうか。彼ならジョシュアでもできるような簡単な料理を知っているでしょうし」
「なるほどね。それなりに厨房も広いから邪魔にもならないし」
魔王サマ達の言うお願いは常ならば脅迫といってお願いとは言い難い。だけどそれを知らないジョシュアは期待に染まった眼をして二人を見つめている。
「そうと決まれば厨房へ行きましょう。サーヤ、頼みましたよ。私達も後から行きます」
「あ~了解です」
はいはい、アレですね? まったく、人使いの荒い。
もうちょっとくらい休ませてくれたっていいだろうに。
そうは口に出して言えない悲しさよ。
0
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。


異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる