異世界って色々面倒だよね

綾織 茅

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隣国でのオタノシミ

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 人を見た目で判断するの、良くないっていうよね?
 私はてっきりユアンやシーヴァで理解してるかと思ってたんだけど、違ったんだねー? 驚きだ。


「女の寝込み襲うなんてサイテー」
「うぐっ……」


 ……誰? こいつ。

 とりあえず逆さ宙吊りだな。このやたら豪華なシャンデリアが役に立つなんて、世の中は何が起こるか分からんよなぁ。事実は小説よりも奇なりってよく言ったもんだよね。うんうん。

 さて。今現在の状況を分かりやすくお教えしよう。
 王宮の一室で仮眠を取っていたら何かいきなり男が侵入してきたよ? そんで短剣振りかざしたよ? そんでそんで短剣消したよ? 男驚いて怯んだよ? 寝起きだよ? 手加減できないよ? 潰したよ? 今ココ。


「ごめん。たぶん一生困るわ」


 何がって? そんなこと、女の子にきくもんじゃありませんって。ま、いいよね? 自業自得だし。

 でもなーんで扉潜れたのかな? ちゃんと寝る前に結界術かけてたのに。失敗なんてしてないみたいだし。

 ……なぜに?

 こいつに何かあんのかなぁ? 見た所普通の……あぁ、これかぁ。

 縛り上げた男を吊るし上げ、その時ポケットから落ちた物を拾った。

 ジョシュアにと思って日々魔力を込めているペンダント。いつかジョシュアが魔王退治に旅立つ時、私は側にはいてやれないらしい。

 シン曰く、本来なら召喚すべきでない私を召喚してしまったことにより、世界の均衡を保つためとかなんとか。正直神族の意向なんて知ったことかと言ってやりたいが、いかんせん相手が悪い。
 神は祟る。祟られるとジョシュアにも弊害が及びかねん。そんなザマをさらすくらいなら大人しく従うべきだろう。シン以外には。

 さて、そのペンダント、当然私の魔力が注入されているわけで。結界を張った私の魔力と同調してすり抜けるなんざ朝飯前のことだろう。
 ただしこのペンダントの存在を知る者はここでは魔王サマ方しかいないはずなんだけどねぇ。……帰ったらネズミ駆除だなこりゃ。


「あぁ、他にもお仲間さんか」


 たまたまこの男が魔力を持たなかっただけか。外にはわんさかいる。

 ……へぇ。ふぅん。そう。


「剣を消したのは不可抗力だよね」


 この国に入る前にシーヴァに言われてたんだよねぇ。外交問題になりかねないから魔術を使うのは必要最小限にしなさいって。
 今はオッケーかなぁ? でもなぁ眠くて眠くて……加減できないしなぁ。


「……はん。睡眠妨害は万死に値する」


 ようはさ? 相手だけどうにかなればいいわけでしょ? 周りの物は壊さないように汚さないように。あれ? でも壊したって直せるなら別に魔術使っても良いんじゃない? んん? んー。……面倒だなぁ。
 眠いんだよ、私は。分かるだろう? ん?

 テラスへと続く窓を開け、廊下へと続く扉を指ひと鳴らしで開けた。

 そうだ、こいこい。はやくこい。

 月が煌々と輝いている。

 テラスに躍り出た私は、元いた世界で家族達と行った刀剣博物館で見た美しくも妖しい刀を顕現させた。刀身が月明かりに反射し、より妖しさを増している。

 こちとら男所帯の紅一点。もちろん女の子的な遊びはほとんどなく、やってきたことといえば……


「武芸諸々、女であること疑われた私の相手。死にたい奴から来なよ」


 父の柔道、長兄の剣道、次兄の空手、弟の少林寺拳法。全てにおいてそれぞれには敵わないけれど、それでもそれぞれの得意分野以外で競った場合になら勝ってきた。


「……おいで」



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