異世界って色々面倒だよね

綾織 茅

文字の大きさ
上 下
38 / 65
隣国でのオタノシミ

3

しおりを挟む





◇◆◇◆



 耐えに耐えた馬車の旅。
 
 もうどうにでもしてくれ。
 ストレスで胃に穴が開いたら労災で休暇をもぎ取ってやる!


 大国の名に相応しく、華麗なる王宮に到着した私達一行は国王へ謁見するべく控えの間に通された。

 出迎えた宰相は私達が持ってきた招待状を見るや否や顔色を無くしていた。その後、失礼に当たらない程度に挨拶を済ませた後、飛ぶようにどこかへ立ち去った。大方国王の元へ報告に向かったんだろう。苦労するね、宰相殿よ。


「夜会は明日かぁ。あんまり時間がないね」
「なに言ってるの。一日もあれば十分だよ」
「……そうですね」


 馬車の中で告げられた今回の作戦はいつにもましてえぐ……スバラシイものだった。まぁ、私に害はないから問題なし! 他人のことなんて気にしてられるぐらいの余裕なんてありゃしない。

 魔王サマ二人が周囲に値踏みの視線を廻らせていたところに、複数の足音が聞こえてきた。ノックにシーヴァが応えると扉が開き、先程の宰相と国王らしき壮年の男性が気まずそうな表情をして立っていた。
 宰相が後ろに控えていること、着ているものの質を鑑みて……やっぱりこの男性は国王陛下だな。
 いかな経緯があろうとも相手は王族、それもトップ。私達は当然立ち上がり、二人を迎え入れた。


「今回は我が愚息が大変失礼なことをした。私の許可なく他国の、しかも魔術師に招待状を送りつけるとは……。リュミナリア国王には正式に謝罪の文書を送らせてもらう」
「いえ、我が主は今回のことをそれほど深く考えておられませんよ」


 いや、それは間違っている。どこかの二人が禍々しいオーラを出しまくっていたから怯えてそれどころじゃなかったというのが正しい。

 そもそも、友好関係にある国同士ならいざ知らず、魔術師を他国へ派遣するのは基本的にのっぴきならない事情がある時だけと聞く。それもそうか。魔力が潤沢にある魔術師を味方につければ怖いものなしだ。しかもそれは日常的なだけではなく、軍事策謀にも……。いわゆる引き抜きを狙う国の上層は魔術師とお近づきになれる機会を虎視眈々と狙うものらしい。

 ……まぁ、私に至ってはこの魔王サマ二人の子飼い化してるからそういう話は今まで一度もなかったけれど。


「王太子殿下も成人なさって婚約にこぎつけるとあって余程嬉しいらしいですね。文面から溢れる想いがとても伝わってきますよ」
「……」


 おーい。黒いオーラが透けて出てるぞー。
 決して額面通りに言葉を受け取ってはいけないのが国と国との外交術だ。ここでも国王はしっかりと言葉の裏に隠された本音を受け取ったようだ。成人してこれか、と。


「……そちらが異世界から来たという魔術師かな?」
「お初にお目にかかります。リュミナリア王国が魔術師、サーヤにございます。この度はこのように楽しげなイベント付きの婚約のお披露目にお呼び頂きまして誠にありがとうございます」
「……楽しげなイベント付き?」


 字面だけを見れば可もなく不可もなくなのだが、私とて報復を誓った身。我が子を制御できなかった親も同罪である。ちくりと言葉の針を刺してやった。


「……ごゆるりとおくつろぎくだされ」
「ありがとうございます」


 来た時よりもさらに顔色を悪くして出て行く国王と宰相。
 とりあえず宰相に文面見せたから、これ以上国の恥とならないためにも自分の愚息が何をしでかそうとしているかは探らせるでしょう。

 噂に違わぬリュミナリアの宰相と神官長が黒い笑みをオブラートに包んでいるうちに、ね。


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。 何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。 本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。 何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉ 何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼ ※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。 #更新は不定期になりそう #一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……) #感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?) #頑張るので、暖かく見守ってください笑 #誤字脱字があれば指摘お願いします! #いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃) #チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

処理中です...