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隣国でのオタノシミ
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しおりを挟むことは死の番人が逃亡した翌々日に遡る。
死の番人が逃亡したことで騒ぎになる王宮内と神殿。ただでさえ総出で探そうかと揉めている最中にとある方から私宛てに招待状が届いた。
一応国に属する魔術師故に国を通しての招待。そこまではまぁ問題ない。でもまぁその招待されたのが何なのか、それに加えて見え隠れする向こうの思考がまずかった。
王太子の婚約パーティー。しかも、なにやらオモシロオカシイイベントも用意されているらしい。だからそれに参加してみないかと。
ちなみにこのオモシロオカシイイベントとは、ある令嬢と王太子の婚約破棄、並びに別の令嬢との婚約イベントとなるらしい。
……この茶番。しかもこの二番煎じ感。
わざわざ他所の国の魔術師捕まえてきて自慢げに見せれるものですか?
そんな感じのことをシーヴァに尋ねたら
「国の恥ですね」
ばっさり切られましたね。
このことは王太子の独断で招待状を出したらしく、向こうの国王は知らない模様。知っていたら絶対止めるわなぁ? この息子にしてこの親ありなんてことにならない限り。
イベント内容が知れたのは単に魔王サマ子飼いの密偵による情報です。密偵さん達も呆れてて声や表情には出さないものの、出て行くときの背中が語ってたね。
こちとら逆隣の国との対抗試合、死の番人の逃亡、その他もろもろあるというにこの招待。正直燃えカスにして葬ろうと思っていた所にシーヴァとユアンから謎の待ったがかかった。
「面白そうじゃないか」
魔王サマのパシリ―自分で言ってて悲しくなるけど事実だ―たるものこの言葉の裏に隠された意図を読み取らずして我が身を守ることなどできやしない。いかに生贄を捧げて我が身の救済をはかるか。これ超大事!
生贄が向こうからネギしょってやってきただー!
魔王サマはこうおっしゃる。
自国を不利に陥れる王族、それも王太子。外交においてこれほど有利になりえる使えるカードはない。この世界を救わんとする勇者の養い親にして自身も最強を冠する魔術師によもやこのような茶番の見届け人になるべく招待状を王の許しもなく送りつけるなど。初見の相手、しかも他国に仕える魔術師を自国の王の許可なく招待できると思えるほど我が国はそちらに劣るとでも? それはそれは大した自信ですねぇ。
多少は違いがあるかもしれないけど……えげつない方に。大筋はこの路線で間違いないと思う。
それで私はお目付役としてユアンとシーヴァ、護衛としてリヒャルトを伴いその国に向かっている。地理的には由貴の国と反対側に位置しているから由貴が知ることはない。あの子は自分の国を私が通るとしたら確実に足止めをするだろう。そしてコトを知るや否や戦争だ侵略だと言いだしかねん。
「ほら、早く」
現実逃避も許されず、現実に引き戻される私。言い訳なんてできるはずもなかろうに、それはそれは楽しそうにいたぶってくれるのだ魔王サマは。
「ユアン、その位にしておきなさい」
「え?」
いや、なんでもありません。
魔王サマの片割れから飛び出したのは予想外もいいところな言葉だった。あれ? おかしいな? 寝ぼけてんのかな? 私、ちゃんと現実逃避できてるじゃん。ちゃんと気絶できるなんて。
……大人しく寝れたなんて思えないところが辛い。
「あちらに行くまでの時間で弁解を聴き終えられるなど思いませんよ」
……はい、上げて落とされたー。
分かってたよ? 分かってましたよ? こうなるってことくらい。でもちょっとは夢見てもいいと思う。
がっくしと肩を落とす私の姿にユアンも今度は満足げに笑っている。このドS魔王どもめ!
「それより、サーヤ? 今回はうちの威信がかかっています」
「はぁ、まぁそうですねぇ」
だからあなた達二人が供につけられたんだろうし。
……言葉による報復的な期待ももたれて。
「確かにあちらはこちらよりも領土は広いですが、所詮それだけです」
おいおい。所詮って言い切っちゃったよ、この人。
「こちらがより優れているということを見せつける絶好の機会です。その結果、少々の力業にも目を瞑りましょう。ただし他の国に目をつけられて余計な面倒事を起こすのも考え物です。必要最小限にしてください」
……………これは、マジですね?
滅ぼせとか言いださないのは大人の理性ですか?
「返事は?」
「はい」
「いいお返事だね」
「………」
自業自得だ。王太子らに同情するつもりは一切ない。だけどさ、もっとこう、なんていうの? 相手は腐っても王族なんだからさ。
そう考えてふと思った。
この人達に常識通用しねーな。
自分がクロだと思ったらシロでもクロにしかねん御方達だ。身分制度も上手くすり抜け、自分に都合の良い結果のみを手にするのが当たり前な彼ら。
この二人を魔王と呼ばず何と呼ぶ? あぁ、自国じゃないし、そんなお馬鹿な脳みそしてる王太子サマなら彼らの真の恐ろしさなど耳に入らないに違いない。所詮は宰相と神官長と侮っているかと。
……無知って本当に恐ろしい!
私はそんなのが王になりかねん御国の民達に手を合わせた。合掌。
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