26 / 65
勘違いしちゃったお姫様
22
しおりを挟むおっさん?本人曰くまだ三十路には手が届いていないおっさん?に連れられ、たどり着いたのは高い塔の最上階の一室だった。
部屋の前には衛兵が二人立っており、私達の行く先をほんの少し阻むように持っていた槍を動かした。そいつらに近寄り耳元でごにょごにょ話し出すおっさんと衛兵達。その間私は大人しく待っている。偉くね? 凄くね? ビックリじゃね?
――分かってる。全然偉くも凄くもビックリでもないわな。
そんな冗談はさておき。話し終えた彼らがおっかなビックリといった様子で扉の前から退き、私の前には貴人の居室らしい豪華な装飾が施されたでかい扉の全貌が見えた。
それを見た私が思うことはただ一つ。
腹減った。これに限る。……いや、だってお昼ご飯まだだったんだもん。
「陛下。連れて参りました」
「遅い。入れ」
低い声にビビるような私ではない。しかし、声をかけた男はそうではなかったらしい。明らかに動揺していた。
じゃあまぁ入れと言われてますし。入らせてもらいましょうかね。
「はいはい、失礼しますよ、っと」
中は……あーここは案外普通だったとか予想通り豪華だったとかいう反応の方がいいのかな? いいんだよね? ざーんねん。
「待ちくたびれてまた誰かオモチャを用意しなきゃいけないかと思っちゃった」
中には博物館とかでしか見たことのないものが揃っていた。その中に一人、気だるげにソファーに寝転ぶ少女がこちらを見上げていた。
うん。なるべく見ないようにしようっと。怖いもんね、聞けないよ? なんで鉄の乙女アイアン・メイデンとかギロチンとか磔台とかがあるんだろうってね。本能が叫んでるし。あ、ヤバイやつだこれ、って。
「お前は下がりなさい」
「しかし……」
「私の言うことが聞けないって言うの?」
「い、いえ! 失礼します!」
……なんだろう。なんか分かりたくないけど、今若干おっさんにシンパシーを感じてしまった。誰に対してのシンパシーなのかは黙秘権行使で。
「もっと近くに来なさい」
「……はい」
周りを見れば分かる通りめちゃくちゃアブナイ嗜好の持ち主みたいだから逆らわない方が賢明だよね。うん、自らメイデンさんに飛び込んでいくようなドM気質じゃないから、私は正常だから、たまにシンにドSとか呟かれるけど聞こえてないから。
「あなた、異世界から来たそうね」
「えぇ、まぁ、そうですね」
「どこから来たの?」
どうやらこの目の前の女王様は私がいた世界に興味深々のようだ。僅かに身を乗り出して尋ねてきた。
「説明しても分からないかもしれませんが……地球と呼ばれていて、日本という国に住んでいました」
「……っ。あぁ」
そう答えると彼女は顔を覆い、ソファーから体を起こした。次に彼女の顔が見れた時には先程まで彼女の顔に浮かんでいた気怠げな表情は綺麗さっぱり消え去っていた。
そしてあろうことか
「やっと……見つけたっ!」
「のわっ!」
「姉さん!」
「……………………はい?」
私の腰に縋り付いてワンワン泣きだした。そして私を姉だと言う。
………………なにゆえ?
私の頭の上にはハテナマークが飛び交っている。
父さんは私と母さんが知らないうちに異世界に来ていて娘をこさえていたのか。いやいやいや、二人が急に長くいなくなるなんてことはなかった。
なら、彼女は何で私のことを姉だと?
0
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
【完結】王甥殿下の幼な妻
花鶏
ファンタジー
領地経営の傾いた公爵家と、援助を申し出た王弟家。領地の権利移譲を円滑に進めるため、王弟の長男マティアスは公爵令嬢リリアと結婚させられた。しかしマティアスにはまだ独身でいたい理由があってーーー
生真面目不器用なマティアスと、ちょっと変わり者のリリアの歳の差結婚譚。
なんちゃって西洋風ファンタジー。
※ 小説家になろうでも掲載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる