25 / 65
勘違いしちゃったお姫様
21
しおりを挟む□■□■
あー、おっほん。
「本日も晴天なりー」
家の庭の木と木の間につい先日届いたばかりのハンモックを吊るしてみた。これがまたマジ気持ちいい。
ぶらんぶらんと揺られ、たまに吹くそよ風が体に当たっていく。
のどかだ。実にのどかだ。
本日ジョシュアは神殿騎士達と野外訓練に出てお留守。シンもついていかせてるし、私はのんびりと休日気分を味わっているというわけだ。
ジョシュアが心配過ぎて胃が口から出そうだった私はもういない。……ふっ。本人に構いすぎだって嫌われたら元も子もないでしょっと某神官長サマに脅さ……諭されたからね。内心グルングルンだけど。
……ふぅ。ここは優雅に雑誌でも見るとしますかな?
元の世界だったらわざわざ取りに行かなきゃいけなかったけど、ここは便利な魔法が使える世界。パチンと指を鳴らすだけで、あら不思議。家の中にあった雑誌が手の中に。……なんか物悲しくなってきたな。
……あ、これ行こうかなって思ってた温泉だ。
雑誌には今評判の隣国にある温泉宿が載っていた。なんでも効能がありとあらゆる万病、ストレスに効く…とかなんとか。万病はどうだか知らないけど、ストレスには確かに効きそうだよねぇ?
ほら、例えばどうしようもない男と女の相手をしていたとかさ? 他にも年中無休並みの労働を強いる悪魔じゃなくて魔王ばりの二人組みとかさ? 人の迷惑考えずに自分の欲求押し付けるどっかの悪魔とかさ?
この温泉の効能、私のために付け足したんじゃねってくらい心当たりがありすぎる。
せっかく一人だし、パパッと行ってジョシュアが帰ってくる前に帰ってくれば問題ないよね? うし。行こう。
わっかんない。なんで私が国同士のいざこざに巻き込まれてるのかホント理解不能です。あれか。ちょっとどこかへ旅行してみようかなって気になったのがいけなかったのか。
「ねぇ、この鎖ってどれくらいで切れるの?」
「どんな魔術師でも切れやしねぇよ! いいからとっとと歩け!!」
「歩いてるじゃん。ていうかこの鎖、錆びついてて臭いんだよ。ちゃんと磨いとけよ」
「うるっせぇなぁ! 黙ってろ!!!」
どっちがうるさいんだよ。お前だろ。
……はぁ。公爵の時の牢屋に宿泊体験といい、今回の捕虜扱いといい。私はなんだ? 罪人になるスキルでもついてんじゃないか?
隣国の温泉宿が数多くある町に滞在中、宿で寛いでいる所に押し入ってきた兵士達。いやぁ~これで入ってきたのが女性兵士とかだったらまだ穏便にいってたかもしれない。いかなかったかもしれない。まぁ要するに突然入ってきた不審者に遅れをとるような私ではないってことですな。
文字通り水攻めにしてやりました。本当なら火攻めもあったんだけどここ宿だしね? 水で我慢してみました。
そんなこんなで当初の捕縛理由に妨害行為も付け加えられてなんか理不尽な気分を味わってます。ちなみに捕まったのはついさっき。
この偉っそうなおっさんが涙ちょちょぎれにして
「俺には養わなくちゃなんねぇ家族が……」
とか言っちゃってくれたから。
それならまぁ仕方ないよね? 私もジョシュアを養ってる身ですから? 同情もするでしょう。えぇ、それくらいの人情は持ち合わせておりますよ? なにか?
「ねぇ、おっさん」
「おっさんじゃない! まだ二十後半だ!!」
「あーはいはい。おっさん、質問」
「おっさん違うと言ってるだろうが!」
「なんの罪で私に縄かけてんの?」
「こいつスルーしやがって……。そんなの知らん。俺が知らされるような事じゃないからな」
「けっ。下っ端め」
「いちいち人の事ボロカス言うんじゃねー! このヤロー!!」
いちいち怒鳴り散らかすなこのヤロー。おかげで鼓膜がピリピリだわ。
「ねぇ、そんなことはどうでもいいんだけどさ?」
「どうでもよくねー」
「どこに連れていくつもり?」
「スルーしやがった! ……ちっ。王宮だよ」
王宮とな。なんか面倒臭そうな臭いがプンプンするなぁ。
ここで隣国と揉め事起こしたとあのお二人に知られたら……あれ? これもしかして死亡フラグじゃね? この国で拷問される方がよっぽどマシなんじゃね?
……か、帰るの、よそうかなぁ。
そんな私の葛藤とは裏腹に足は本能に忠実だった。ルンタッタもかくやと言わんばかりのペースで足は進んでいた。
目は口ほどに物を言うと言うけど、私の場合足もそうであったらしい。
「なに黙り込んでんだ? 着いたぞ」
「……おぅ」
…………こうなりゃヤケだ! あの二人に比べりゃ何とでも闘える!!
お二人のお母さーん! 育て方間違っておられますよー!!!
こうして私は自分の身の安全の確保のために大人しく王宮への入場を果たした。
私のそれまでの抵抗を側で見ていた男がかなり不審がっていたけど、私はそれどころじゃなかった。
マイボディー イズ ベリーベリー 大事
0
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界のリサイクルガチャスキルで伝説作ります!?~無能領主の開拓記~
AKISIRO
ファンタジー
ガルフ・ライクドは領主である父親の死後、領地を受け継ぐ事になった。
だがそこには問題があり。
まず、食料が枯渇した事、武具がない事、国に税金を納めていない事。冒険者ギルドの怠慢等。建物の老朽化問題。
ガルフは何も知識がない状態で、無能領主として問題を解決しなくてはいけなかった。
この世界の住民は1人につき1つのスキルが与えられる。
ガルフのスキルはリサイクルガチャという意味不明の物で使用方法が分からなかった。
領地が自分の物になった事で、いらないものをどう処理しようかと考えた時、リサイクルガチャが発動する。
それは、物をリサイクルしてガチャ券を得るという物だ。
ガチャからはS・A・B・C・Dランクの種類が。
武器、道具、アイテム、食料、人間、モンスター等々が出現していき。それ等を利用して、領地の再開拓を始めるのだが。
隣の領地の侵略、魔王軍の活性化等、問題が発生し。
ガルフの苦難は続いていき。
武器を握ると性格に問題が発生するガルフ。
馬鹿にされて育った領主の息子の復讐劇が開幕する。
※他サイト様にても投稿しています。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる