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勘違いしちゃったお姫様
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しおりを挟む「ジョシュア、私はお前を捨てたりしないよ。捨てるならこの世界の方だ。二人で一緒に元の世界へ帰ろう」
その術はまだ見つけられていないけど。むしろシンには絶対帰れない言われたけど。やる時はやるよ? 私はね。
ユアンもシーヴァも空気を読んでくれたのか、私のこのちょっと問題発言にも目を瞑ってくれるらしい。何も言ってこなかった。
「本当? サーヤは僕と一緒? いなくならない?」
「いなくなるもんか。私とお前が離れるのは仕事の時とお前が学校に行くようになった時だけだよ」
「うぅ……」
「ほら、男ならいつまでもメソメソするものではないよ。そんなにサーヤと離れるのが嫌ならサーヤがこちらに来ている間、神殿でリヒャルト達に稽古をつけてもらえばいいんじゃない?」
「いいの?」
「ちょっとユアンさん? ジョシュアにはまだ早いんじゃ…」
「いいよ。早速頼んであげるよ」
「あ、ありがとう!!」
「おーい」
「ふふ。どういたしまして」
「お話聞いてー……」
ユアンとジョシュアだけで会話が成り立っちまった。ユアンのは絶対わざとだ。
ぐぬぬと歯軋りしているとシーヴァが目を細めた。
「ジョシュアの方が寂しがっているかと思いきや、その実、あなたの方が自分だけの庇護でなくなるのを寂しがっているように思えますね」
「………………ふん」
そんなんじゃない。そんなんじゃないけど。
呼び出されたリヒャルトと楽しげに話しているジョシュアを見た。
本当の両親の元へは……無事に帰してやりたいだろう?
何年かかるか分かんないけど。危ないことからはなるだけ遠ざけてやりたい。
そのために今の私の力があるんだから。
「男の子というものはそういうものです。今はあぁでも自然と親の手から離れる時が来ますよ」
「あーあんまりそういう時が来て欲しくないなぁ」
「今が一番最初の時です」
シーヴァにそう言われるとそうなんだろうなって思えてくる。実際シーヴァも男だし。
…………シーヴァとユアンに可愛い子供時代があったなんて想像もできないけど。
「サーヤ、今とても失礼なこと思わなかった?」
「思ってません」
油断するとこれだ。ユアンは心の声が本当は読めているんじゃないかと毎度毎度思わされる。そういう術を早々に会得してそうだ。
「サーヤ!」
「うおっ、なんだ?」
リヒャルトと話していたジョシュアが私のお腹にタックルをかましてきた。
地味に痛い。けどジョシュアのキラキラとした目を見て先を促した。
「僕、すっごく強くなって、サーヤを守るからね!!」
ニコッと笑ってまたリヒャルトの所へ戻っていくジョシュア。
「……おーい。サーヤ?」
「二人とも、どうしよう」
「……何が?」
「うちの子が可愛すぎて死ねる」
「「………………」」
黙った二人に生温い視線を受けようとも気にならない。だって本当のことだもの。
うちの子最強!
シンを見るとシンも穏やかな顔で私達を見ていた。
ジョシュアに反抗期は当分訪れそうにありません。良かったです。まる。
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