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勘違いしちゃったお姫様
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しおりを挟む「ちょっと!! なに!? この地味な服!」
シーヴァの片眉がピクリと上がった。傍目には分からないけど分かってしまった。
そりゃ怒るわな。この国最高品質の絹シルクでできたドレスを地味って言われちゃ。しかも一見なんの意匠も施されてないように見えるけど、その実、裾の方にはとても丁寧な透かしが入ってる。
なんで分かるかって? そりゃあ街で暮らしてるといろんな仕事の人と出会うからねぇ。自然と目も肥えるって話さ。
そして何故それを私に訴える?
「なんであんただけ優遇されるの!? この世界はゆりあのためのものなのに!」
おーい。今まであなたって呼んでたのに本性ですか? それ、隠せなくなった本性ですか? しかも自分のもの発言って……笑える。
さーて、ジョシュア?
宰相殿が言いたいことあるようだから、ちょっとお耳塞いでおこうか。
「この世界があなたのもの? それはとんだ勘違いですね。そもそもあなたは異世界人。それも本来ならば生け贄の身。今なお五体満足衣食住なんの問題もなく生活できているのは陛下のご温情に他ならないというのに。随分と国庫の金を使いあさってくださったようで」
うん、えっと~。どこから私はツッコメば良いのかな?
「い、けにえ? ……なに、それ。私、そんなの、しらな…」
「君、本当にこの国のこと何も知ろうとしなかったもんね。君を召喚した女神様、彼女が何を司っているか知ってる?」
なんとなく話の先が読めたような。側に立つシンに目を向けるとスーっと目を背けやがる。ビンゴか。
「知らな……」
「彼女が司るのは“死と生け贄”だよ。きっと君を魔王封印の礎にしようとしたんじゃないかな?」
「じゃあ何か? その女神サマはゆりあを人柱にしたてるために呼んだってこと?」
「まぁ簡単に言えばそうだね。まさか自分のもの発言するまで驕りがすぎるようになるとは思わなかったけど」
突然現れたユアンに驚かない私。もう慣れた。
「ねぇ、神殿騎士の件や今までの浪費癖。本来なら厳罰ものなのに何故君を操ってた公爵にしか罰が下らなかったと思う? みんな君に同情してたのかもねぇ。いつ気が変わって差し出されるか分からないから」
ジョシュアや。私達、シンで良かったね。神様界の中間管理職バンザイ!
ゆりあが真っ青通り越して真っ白になってガクガク震えている。そりゃあ、怒らせちゃならん二人を怒らせてるんだから仕方ないか。同情は……まぁ、さすがに人柱はあんまりじゃなかろうか。だって、呼び出したのはそちらの都合だろうに。
「でも今回はサーヤ達がいるから人柱はいらないし、正直君、いらないんだよね。でも一応女神様の呼び出した相手だし、失礼がないように神殿が預かっているだけで」
「本来ならサーヤ達の方が王都に、むしろ王宮に住んでほしいくらいです。あなたは単なるオマケですよ」
「神殿側も君には辟易してるんだよね。いっそサーヤを巫女姫にすれば良かったと思うよ。……うん、我ながら良い考えだと思う。ねぇ、サーヤ? 今からでもならない?」
「丁重にお断りします」
「えー残念」
それは使い勝手のいい駒をすぐに呼べる範囲に置いておきたいからですよね? そんなの絶対イヤだ。それに巫女姫なんてガラじゃないし、今の生活で十分満足してる。
「………なんで。なんであんたばっかり!」
どーん!
「きゃっ!!」
……………何が起きた?
私とシン、ユアン、そして珍しくも本日二度目のシーヴァ驚きの行動。
目の前には尻餅をついたゆりあとその前に今にも泣きそうなジョシュアが足を踏ん張らせていた。
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