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勘違いしちゃったお姫様
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しおりを挟む「よっこらせっと。……なぁ、公爵さんよ。因果応報って言葉、知ってますかぁ?」
「自業自得という言葉も当てはまりますね」
「なにを……」
「本日、ミルドレッド家の貴族位剥奪、及び財産のほぼ全てを没収が決定されました」
「っ! わ、私は……私は国王の叔父だぞ!?」
「そう。ただの叔父。国王じゃない。だろう? ……あぁ、そうそう。財と家柄を持たないものはどうなろうと構わない、だっけか? 良かったなぁ。あんた自身が自分の言葉の意味を確かめられるぞ?」
パチンと指を鳴らせば鎖は耳障りなほど大きな音を立てて床に落ちた。
もう一つおまけに牢屋の鍵も粉々に。こんなの朝飯前だ。
「はぁ。手首が痛い。背中も痛い。今夜は薬草風呂だなぁ。……あ、薬草代は労災として別に回収しますんで」
「構いませんよ。国庫に多少の潤いができましたから」
「それは何より。昨日ユアンに脅されるようにしてここに入ったかいがあった」
昨日のアレは酷かった。
呼び出された私が王宮に向かえば、笑顔のユアンとシーヴァにご対面。
犯罪人を断罪する並みに恐ろしかった事情聴取はどこから聞き付けたかあの悪魔が私の家を訪れたことを知る公爵によって中断させられた。
正直この時ほどこの愚かな公爵に感謝したことはないし、これから先も一度もないかもしれない。
『………………では、この娘を牢に入れましょう。処遇は後程、ということで』
その時、垣間見たユアンの笑みはヤバかった。
あれはダメだ。まさしく魔王の笑みと言っていい。
ほんの一瞬だったのに、まるで……そう、蛇がとぐろを巻いて締め殺そうと虎視眈々と獲物を狙っているようだった。
本当にユアンが魔王であったなら私は何の迷いもなくその配下に下っていただろう。誰だって我が身は可愛い。
ジョシュアには、あれは無理だ、諦めなさいと言い含めて勇者を辞めさせている。
しかし、悪者の最後の悪あがきはなかなかしぶとい。
「……なんの罪でだ!? 私は何も悪いことはしていない!!」
「ほぉ! ここまで面の皮が厚いと、感嘆せざるを得なくなるな」
「まったくです。……例の物をここへ」
シーヴァに促され、彼の侍従が運んできた物に公爵は目を見張り、ガクガクと震えだした。
先程の震えとは違う。それは、怖れ故であることは誰の目からも明白であった。
「だから前に言っただろう?」
牢から出て地面に手をつく公爵を見下ろし
「喧嘩を売る相手は選びなよ、って」
まだ顔に幼さの残る侍従君や、途中から隅の方で傍観していたシンの身体がブルッと震えた。
目の端にそれを見ながら私は踵を返し、その場を去った。
……………お腹空いた。
後に宮中で牢屋には魔物が住むと真しやかな噂が流れるが知ったことではない。
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