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勘違いしちゃったお姫様
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しおりを挟むなんだかんだと文句を言えど、行かなくて良くなるわけでもなし。いやいや向かった公爵邸。広いエントランスでリヒャルトに出会い、中へ進むとそこは王宮の造りを模した広間だった。
さすがは元王族。臣下に下ったとはいえ、よほど王宮に住まうことに未練があるのか、至るところにここは王宮かと錯覚させるような意匠が施されている。広間の壁は鏡張りでより広く感じられ、中にいる人達の色とりどりの衣装でより空間が華やかさを帯びていた。
着慣れぬドレスを着、履き慣れぬヒールの高い靴を履き、髪もこれでもかとひっつめられ。なにが楽しくてニコニコと笑ってなけりゃいかんのか。
さっきから感じる突き刺すような視線もわずらわしいことこの上ない。これについては目下ジョシュアの護衛兼お守り役を担っているリヒャルトの見目による影響だろう。
お嬢さんと呼ぶに相応しいお年の方からもう無理があるんじゃないかと思うような方までリヒャルトの動向を扇の影から窺っているのがもろ分かりだ。その顔はぽうっと紅く色づいている。
それとはまた別に常識のありそうな老年の紳士達はジョシュアを見て眉をしかめている。しかし、それはジョシュア自身に非があるわけではない。
「異世界から来てこの国を救ってくれる魔術師の庇護を受けている少年だからといっても、いくらなんでもまだ社交デビューは早い」
「あぁ。だが、ミルドレッド公爵自らが彼にも招待状を出したらしい」
「何を考えておられることやら」
彼らの声を遠くからでも聞こえるよう術を施してみると案の定そんな会話が小声で交わされていた。
ミルドレッド公爵、もとい豚……あ、間違えた。私がこの国に来てすぐに豚にかえた男は私達を目の敵にしている。
狡猾というか悪知恵だけは働くバカというか、私達より先に来たかなーり操縦しやすいゆりあを使って王位につこうなんぞと野心を抱えているんだからまぁ……バカだよね?
王位? んなもん勝手にすればいい……と言いたいところだけどあいつが王になれば国が乱れる。民が貧しさにあえぎ、一部の貴族が甘い汁をすする。
………あはは。冗談じゃないよね。だから私は全力で阻止してあげるしかないじゃないですか。
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