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勘違いしちゃったお姫様
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しおりを挟む「魔術師様、この度は本当にありがとうございました」
騎士達の中で一番偉いんだろう青年が最上礼をすると、騎士達皆今までと顔つきががらりと変わり、青年の後ろに続いた。
「この御恩は忘れません。何かありました時はこの命、国と陛下、王太子殿下、神官長様の次に魔術師様に捧げます」
「えぇっと。とりあえずその魔術師様っていうのやめてくれます? 他にもいるわけだし」
「分かりました。ではサーヤ様と」
「あ、様もいらないわ。だって国に使われる身は同じだし。むしろ私の方が平民扱いだし。みんなほとんどいいとこのお坊っちゃんでしょう?」
「神殿騎士になる時に家名は捨てておりますので」
そ、そうですか。なかなかストイックですね。
「あーとりあえず様付けはなしで。あと敬語も。みんなに対してそうじゃないならする意味ないから」
「分かりま……分かった」
「皆もいいね?」
一番偉い彼が頷いたのだから他から否が出るはずもなく。皆それを了承してくれた。
だってさ、敬語だとシーヴァの慇懃さを思い出して嫌になるんだよ。それがただ言葉通りなだけの人格だったなら大層いい人ですむんだけど……彼の場合は……ねぇ?
それなら初めから敬語ぬきで話してくれた方がありがたい。
………………あ。
「あと一つお願いしてもいいかな?」
「は……あぁ。何だ?」
「後ろにいる二人をどうにかしてくれる?」
騎士達が後ろを振り向くと全員の動きが固まった。
「ねぇ、あの豚に喧嘩売った?」
「よくもまぁあなたは次から次へと」
ユアンとシーヴァが連れだってこちらに歩いてきた。
シーヴァ……仕事しなくていいの? ユアンも神様に礼拝とか、あるでしょ?
「でもまぁ、いい口実ができたよね」
「えぇ。向こうも色々と仕掛けて下さるんですから、こちらもお返しして差し上げなければ無礼というものでしょう?」
あ、あれ? 私は……怒られて、ない、んだよね?
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「………………」
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