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プロローグ
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しおりを挟む「何をしている!」
「か、体が……動かぬのですっ!」
「なにっ!?」
「どういうことだ?」
「この者達は一体……」
ざわざわとうるさい外野は無視。
私は玉座に座ってこちらを見下ろす王をしかと見上げた。
この国にまだ短期間とはいえ暮らす身としては頭を垂れるべきなんだろうけど、私はまだ知らない。
この国の王、つまり目の前の人物がどんな人格で、将来養い子が己の命を懸けてまで魔王討伐を行う必要があると思える国なのか。
だからまずは様子見しておきたい。
頭を垂れるのはそれからでも遅くはない。
「初めまして。私、サーヤと申します。これから十年後の魔王討伐のため、やんごとなき方に別の世界から無理矢理連れてこられ、この国で生活している者でございます。この子は私の庇護を受ける少年です」
若干無理矢理の部分を強調してやった。とことん根に持つ主義の私はきっと死ぬまでこれを許さない。
隣に立つシンがそろ~っと目線を外すのが横目で見えた。
「魔王討伐!?」
「そんなこと……できるわけが」
「隣国の魔術師の集団もダメだったらしいぞ?」
「しかも女子供ではないか」
隠しもしない、小声にもならない大臣と思しき男達の声が耳に届いた。
そちらに目をやると、明らかに馬鹿にしたような顔つきで私を見ていた。
シンがどうしてもこれを着てくださいと最初から下手にでて渡してきたのがドレスだったからそれをいやいや着ただけだってのに。だって下手に出られればねぇ? 仕方ないなと思うじゃん? 一応神様だし。
……女甘く見んじゃねぇぞコラ。どこの男尊女卑だこのヤロー。
私はニコリと笑い………
「わぁー!! 耐えて! 深呼吸!」
私の口を塞ごうとしたシンの奮闘むなしく
「冗談じゃないね。なら勝手に死ねば? 行くよ。もうここには用はない。あぁ、そう。せっかくここまで来たんだから何か一つ置き土産をしよう」
神にまで無理と言わしめた王宮内への転移を目の前で成功させたんだから、自分達が知り得る魔術師達よりも魔力があると知り得てしかるべきでしょうに。
その身を持って己が身の過ちを知るが良い。
指をパチンと鳴らす。
するとさっきまでうるさかったのが少しは減った。
「……なっ!」
「私の気の済むまでそうしてるがいいよ。いつになるかは分からないけどねぇ」
一部の特にうるさかった連中を豚に変えてみた。ブヒブヒこれまたうるさいっちゃうるさいけどまだ許せる。何て言ってるか分かんないし。私もう帰るし。
某ジブリアニメを参考にしてみました。こっちはリアルな豚だけど。
「では、皆様。せいぜい解呪を頑張ってください。もし無理でも葬式には呼ばなくて結構。魔族側につくのもまた一興でしょうから」
「な!? ダメだよ!」
「シンは黙り。さ、帰るよ」
私は踵を返し、ジョシュアの手を引いた。
うん、大人しくしているな。良い子だ。帰りに何かお菓子を買ってやろう。
「お待ちを」
「ご無礼お許しください」
すっと前に出てきて礼をとった青年二人組。
顔を上げたその表情を見ると……笑顔だった。
この状況で笑顔を見せれるような輩はなかなかいない。いるとすればそれは……大体の想像がつくのでひくつく頬をなんとか抑えこみ、回れ右をしてジョシュアを抱えて素早く逃げようとした。
「お待ちを、と」
「申し上げているでしょう?」
肩を両脇から掴まれた。
ゆっくりと振り向いた先には。
笑顔が、怖かった。
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