異世界って色々面倒だよね

綾織 茅

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「それで? とりあえずこの子が勇者で私が補佐というわけでいいんだよね? でもさ、もう少し人選考えなかったわけ? この子、まだよくて小学一年生くらいじゃないの?魔王と対決させて本当に勝てると思ってる? それとも何?勝つ気ないの?」
「と、とりあえず足を……」
「あ、忘れてたよ。ごめんね?」


 本当に忘れてたんだってば。そんな恨めしい目つきで見ないでよ。


「年齢のことなら問題ないよ。魔王に挑むの十年後だから」
「……十年間何するの?」
「この世界に慣れたり、修行とかかな?」
「……この世界の住人だったら慣れる必要もなし、修行をすぐ始められたんじゃないの? それに十年間も悠長にしてられるくらいならその魔王って本当に悪者なの? 私からしてみればこの世界に連れてきた君の方が悪者にしか思えないんだけど。しかも二人も必要なの? なんなの、バカなの? 死ぬの?」
「……………………………人選ミスったぁ!」


 私の口が悪いのは昔からだから自分でも理解してる。だからって直すつもりはないけどね。

 最早神様としての威厳を微塵も感じない、感じさせない。やる時には徹底的に、逃げ場なんて決して与えない。これ、私のモットー。
 相手が神? 相手にとって不足なし。しかも諸悪の根元ともなれば、ねぇ?
 言い負かされるのぐらいは覚悟してもらわないと。


「……で、私にくれるものは?」
「え?」
「え、じゃなくて。なに、この世界に拉致ってくるだけで後は見放そうなんて随分な話じゃないの? よもや自分の仕事はもう終わり。これからは天界で高みの見物してようかな、みたいなこと考えてないよね? ……アハ、冗談でも笑えないよね。あ、分かる? 最近ね遅ればせながらハリー・〇ッターに出てくる秀才少女に憧れててね。いやーあそこまで魔法を一年生から使えるとなると気持ちいいだろうね。……言いたいこと、神様の君なら分かるよね?」
「わ、分かります。……それじゃあ生活に困らない程度の」
「え? 今なんて?」
「…………そこらの魔物を倒せる程度」
「ん?」
「……魔王と互角にやれる程の魔力を差し上げます」
「話が分かる神様で良かったよ」
「…………マジで人選ミスったっ!」


 なんだか小声でごちゃごちゃと呟いている神。まるっと無視。
 鬼畜? 誉め言葉ですね。


「言っとくけど、君は魔王討伐部隊には入れないからね!?」
「あぁ、はいはい。本来なら干渉しちゃいけないんだぁとか言うんでしょ?もうすでに二人分の未来に干渉しているのにそういう状況作るのもどうかと思うけど。さ、早く拠点となる場所に連れていって。あ、あと私とこの子にこの世界の言語翻訳会話術もよろしく」
「……」
「よろしく」
「……了解です」


 こうして妙に俗物染みた神様と憐れな少年との生活が始まった。

 え? 神様もって?
 もちろん。こんな良いパシ……あ、なんでもない。
 うん。近くにいた方が何かと都合がいいじゃん? そういうことにしとこう。


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