憧れのゲーム世界へ

胸脇苦満

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バーミリオン流 魔法師

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息抜きにゲームとしてプレイできていた時のお話でもどぞ
本編とは関係あるのかな?あるんだろうね。多分あるよね?
そんな感じです。



~~~~~~~~~~~~~~~



ゲームリリースから1年半

蠱毒の迷宮
ランクAの最高難易度迷宮にして過去一度しかクリアされた記録がない。
この迷宮が攻略困難な理由は三日おきに大幅に構造が変わることと虫系モンスターが多いことが理由に挙げられている。短期間でマッピングは意味をなくし虫系モンスターは甲殻が固かったり大きさがバラバラだったり多種多様な進化で攻略が面倒。毒虫や火に耐性を持つものが混じっているだけで複数のパーティーで脱落者が出てしまう。
運悪く迷宮の構造が変わる日に突撃してればレイドチームがバラバラになり戦闘そのものが困難になることもある。ボス部屋ないならマップの変化に巻き込まれることはないのだがボスのリポップが起こると被害が拡大するだけのこともある。
最深層の迷宮主にたどり着くことがまず不可能ではないかと言われるほどの難関迷宮である。


その迷宮をクリアしたのがアメリカサーバの120人に及ぶ大規模レイドチーム『ranger』
元軍人や現役軍人のチームなのだがクランではない。
一度もクリアされた記録がないというのでクリアしようと集まった有志の団体だ。

運営推奨人数が90人だったのだがその人数で一度もクリアされず結局120人という大所帯でクリアされることとなった。

日本以外のサーバでは英雄・勇者・プロ・天才・さすが軍人等の賞賛を浴びたのだが日本サーバでは賛否両論。
どちらかというと否が多く『物量じゃねーか!』『プライドねぇのか』『オ○ニー乙』『まぁその人数いればね』という始末で賞賛の声はあまり目立たなかった。どうして叩く人間の方が目立つのやら…
日本人プレイヤーもかなり攻略を進めていたのだが、なぜか90人未満のレイドチームで攻略することに躍起になっていてボスまで到着することには這う這うの体でまともな戦闘になるチームはごくわずか。他のサーバと比べるとボス戦まで行くチームは多いが人数的にタンクやヒールが間に合わずヘイト管理もかなりギリギリな調整であるために失敗する。

最初のクリアから約一月ほど経った頃だろうか?
この迷宮でドロップするアイテムやボスのドロップ品がようやく一部公開された。
『ranger』はクランでないためかドロップ品の分配で少しもめたのが原因だ。
とはいえ軍人上がりが多いのでおおごとにはならずなんらかの決め事に則って公平に決めたのだろう不平不満を言う奴はいない。

他の迷宮やダンジョン、フィールドではお目にかかれないようなアイテムの数々が掲示板に晒され唯一のボスドロップ品を自慢げに武器に加工した『ranger』のリーダー格に憧れて多くのプレイヤーが蠱毒の迷宮にアタックをかけた。
ボスは『蜘蛛の女王クイーンタラテッラ』の亜種が三匹
蠱毒というだけあって迷宮内のモンスターを食い散らかしボス戦のたびに特性が異なる厄介なボスだ。他のイベントやフィールドで出てくる時は3パーティーもあればどうにかなるのだがここのは飛び抜けて強い。
同時に三匹現れ、そのうちの一匹はアラクネ化しているのでそのアラクネが指揮を取っているというのがわかるので序盤はどうにかなるらしい。

レインもこのボスからのドロップ品は欲しかった。
だが友達がそもそも少ない上に蒐集家として有名になったためかペナルティーに関しても知られている。
膨大な職業を取得しているためにフレンド以外の初見のプレイヤーとの連携にマイナス補正がかかるのだ。選択する職業によってはそのマイナス補正を消すこともできるが今度はまた別のペナルティーとあっちを消せばこっちが出てくるといった風に何かしらのペナルティーがかかる。ソロプレイでレインだけペナルティーならいいのだがレイドとなると他のプレイヤーへの影響も計り知れないので組んでくれるものなどほとんどいない。
故に基本ソロプレイかフレンドとパーティーを組む以外にないのだ。たまに初見の人とも組むがパーティー上限の6人で組むとペナルティー、1パーティー増えるごとにペナルティーが増えるなどレインは少数でしか行動できずレイドボスからのドロップ品はオークションなどで購入するしか手に入れることができなかった。





この時までは





当時バーミリオン流は自称魔法師のグラップラーネタ集団と思われていた。ゲームの設定上はかなり強力な魔法を使えるとされていたので時折起こるスタンビートなどモンスターの異常発生討伐で失敗した時にやってくるお助けキャラのバーミリオン流創始者でダークエルフのアノールド・トライ・バーミリオンがモンスターの海に突っ込んで魔法をぶっ放しても本人が使ったかどうかすらわからないのでなんかの魔道具だろうとの噂がまことしやかに流れていた。
その噂の中にはバーミリオン流免許皆伝者には特別なアイテムを与えられるとの詳報がありその魔道具を使ったのではないかと予想するものも多い。

レインもただの設定で本当は魔法を使えない。または身体強化系の魔法を極めた集団だと思いつつも弟子入りイベントをあちこちめぐって探し出していた。
正直乗り気ではなかったが特別なアイテムという餌に食いついたレインはデマだと思いつつアノールドに弟子入りして必死に修行している。

弟子入りはちょうど『ranger』が蠱毒の迷宮にアタックし始めた頃だ。
ログインの度に『ranger』の経過報告が掲示板に上がっているのを眺めては今自分がやってる弟子入りイベはなんなのだと自問自答する。


「今日も筋トレ明日も筋トレ。筋トレの合間にミッド特製ドロドロ激不味ドリンク!」

幸い味覚の再現度がかなり低いために不味いという感情しか入ってこない。

「兄弟子はキチガイドワーフで休ませてくれない。」

ギリギリのラインで筋トレを増やして休憩がないミッドの鬼教官っぷりに嫌気がさす。

「ゲームで筋トレって何か意味あるの?疲労?特にないけど節々が痛いんだよ!!精神的にも辛い!!」

弱音を吐きつつ腹筋・背筋・腕立てを続ける。
動いていないと辛いってどんな状況ですか?ログアウトした後もそわそわ落ち着かない体に戸惑ったのは仕方ないと思います。

「ゲームでいくら鍛えても筋肉なんてつきませんから!!ざんね~~~ん!!」

ミッドから解放されて早2日ようやくそわそわする感覚が落ち着いてきた。
それでもまだ動いていないとしんどいのはなぜだろう?
師匠アノールドも逆立ちで走り回りながら「ミッド…奴はダメだ!奴の頭は筋肉だ!もう会うものか!会いたくないぞ!!」と叫んでいる。
ただそれも筋トレ後の師匠特製のプロテイン(まぁまぁ美味しい)を飲み干した後に「いいトレーニングメニューを考えるだけに惜しい!!」と言ってることからどうせまた会うのだろう。
怖いもの見たさに会いたくなる日が絶対にある。そしてまた後悔するのだ。この人は絶対そういうタイプだとレインは確信する。
今回ミッドに会うことになったのも「いい筋肉を持つ弟子がいるのだ一度会いに行こう!奴のトレーニングはきついがよく考えられているぞ!!」とか言いだしたせいなのだから……


閑話休題


ミッドとの修行から一週間ほどが経ちようやく免許皆伝試練を言い渡された。
実はもっと早く試練をしたかったのだがミッドとの筋トレで酷使した筋肉を休ませる必要があった。
修行開始から約一ヶ月とちょっと。すでに『ranger』が蠱毒の迷宮をクリアしていくつかのドロップ品がオークションに流れ始めていた。レインは血の涙を流す思いでアイテムを諦めて修行に勤しんでいたのだ。

「く!これでアイテムくれないとマジでキレるぞ!!修行の半分以上が筋トレとか狂ってやがる。」

申し訳程度にあった詠唱・魔法陣・触媒に儀式の方法などの魔法講義。
いや、よく考えれば動きながらの講義とかあれはただのトレーニングだ!
トレーニングメニューや食事の栄養を考えることを含めほぼ100%トレーニングな修行から解放されることに喜びと筋トレが楽しくなってきている自分との葛藤に驚きを隠しきれない。

(筋トレがしたい)
「何かの間違いだろう…」

不意に頭に浮かぶ考えに冷や汗を流しつつ師匠に呼び出された場所へと赴く。
最終試練として龍の顎門と呼ばれる大峡谷の最下層にいる師匠の元へと魔法を使わずに降りる。そこで免許皆伝アイテムを受け取り今度は魔法を使わずに崖を登る。そこで『MYO』に入会して入会特典をもらうこととなるのだ。
正直入会したくなかったがコレクションとなるアイテムを思うと頑張る他ない。


レイメルト聖王国とヴァルガード帝国を割る形で伸びる峡谷。北端はエルトゥールル。南端はつい数ヶ月前にプレイヤーが建国した『ゲットー日の丸』おそらく国王はアニヲタであろう。


最下層は大峡谷の南側1/3にある。レイメルト聖王国側の方が高い崖となっているようでそちらから降りて最下層まで凶悪なモンスターをさばきつつ崖下の師匠の元へと向かう。
レインはロッククライマーの気分でゆっくり足場を確認しながら降りる。
下を見たり上を見たりモンスターが飛んでこないか背後を気配りながら降りていく。

「はぁ、はぁ…ん!これって登りより下りの方が難しいんじゃね?」

悪態をつきつつ数センチの凹みに指や足を引っ掛けて降りる。
職業取得数ペナルティーにより純粋なステータスは貧弱。メイン職以外のパッシブスキルや幾つかの初期スキルを活用しながらなんとか降る。

「素人にロッククライムとか…いやおりてるからクライムじゃないか?」

頭が正常に働かない中ヤケクソ気味に体の感覚のみを頼りにして降りていく。
その結果モンスターが攻撃する時にそこにいなければ問題ないという結論に至ったレインはどんどんスピードを上げて降っていく。右へ左へ崖を蜘蛛のように飛びつき攻撃をかわし時には反撃しながら降りていく。時折モンスターの巣になっている場所に入っては中にいたモンスターを殴り殺して休憩を数分。

「こんなもん簡単にクリアできるわけねぇだろ馬鹿野郎!鬼畜だなおい!」

巣穴の奥から光る目が見えるとたかられる前に飛び出して降る降る。
下に行けば徐々に湿気が出てきて苔むした岩肌に手が滑りそうになる。踏ん張りの利かない足場に悪戦苦闘しつつうっかり手を離してしまうと崖下に真っ逆さまという想像に身震いする。
どうにか手足を強引に岩に突き刺して降りる方法を思いつき実践してみる。

ガ!ガ!バギ!!ガ!

「滑るなら突き刺せばいいんだ!俺っててっんさ~い!?」

すでに脳筋の仲間入りしていると言う自覚はないレイン。
見たこともない苔や植物をしれっと採取しながらこれまた見たことないモンスターを見つけては崖を蜘蛛かゴキブリのごとく駆け回り仕留めてはイベントリに保管していく。

「うっひょ~う!アイテムがっぽがっぽ!この崖ってもしかして天国?ボーナスタイム突入だーー!!」





峡谷に木霊するレインの叫びを聞いていたアノールドをはじめとする『MYO』のメンバーは試練というより自分の趣味全開で楽しんでるレインに若干引いていた。

崖上『MYO』メンバーの会話

「おいおい!あいつなんだ?すごい勢いで降ってったぞ!」
「今日中にクリアするつもりなんじゃねぇか?」
「俺が試練受けたときは降りだけで一週間かかったんだが…」
「あれ見ろよ!ワイバーンの攻撃が来る前に移動してるぞ!」
「うわ!あれは尻尾掴むか顎をなぐりとばすしかないだろ!」
「今度はガケツツキの一撃も躱しててもうあんなとこだと!?」
「げ!ロックリザードの巣に飛び込んだぞ!!」
「無茶だ!ここのロックリザードって他より数倍強いんだぞ!実質スチールリザード並みの『バゴーン!!』」
「「「「な!」」」」

大きな音とともに巣の中から尻尾の破片らしきものが飛び出す。

「魔力は感じない。」
「え~っと…素手で倒したのか?」
「だな…」

末恐ろしい
あんな弟弟子がいるとは思いもよらなかった『MYO』メンバー一同
ペナルティを受けてるとはいえパッシブスキルで相殺しているレインはソロに限ればほとんど上位プレイヤーと遜色ないステータスだ。魔法を使っては行けないと言われたがスキルがダメとは言われていない。
オンオフできるパッシブスキルもあればできないものだってあるのだから使うなと言う方が無理なのだ。

「あのスピードだとそろそろ苔ゾーンじゃないか?」
「は、はえぇ~~」
「ちょっと待てあそこは滑るんだぞ!あのまま降りれば拙くないか?」
「「「あ!」」」

レインを心配していると谷底から木霊して来る声。

『滑るなら突き刺せばいいんだ!俺っててっんさ~い!?』

「え?」
「突き刺す?何を!?」
「足じゃねぇか?」
「指か?」
「マジか!」
「あそこって金属が混じってるから刺さらんだろ。」
「確か何箇所か大きな足場があってそこに飛びつくんじゃなかったか?」
「あぁそうだったはずだ。」
「向かいの崖と行ったり来たりして辛かったなぁ~」
「足滑らせたら一巻の終わりだもんな!」
「「そうそう」」

現実逃避気味に話題をそらしていると再び声が木霊する。


『うっひょ~う!アイテムがっぽがっぽ!この崖ってもしかして天国?ボーナスタイム突入だーー!!』


もう誰も喋る気力もなく引きつる顔で谷底を見るだけだ。
ワイバーンが襲って来るその間際まで皆頭が真っ白になっていたのは言うまでもないだろう。






ひとしきりアイテムを確保して気がつけば50mほど向かいの壁面を含めてかなりの範囲が禿げ上がっている。
取り尽くしてはいないが岩肌が見えるほど採ってしまった苔に薬草の類、虫やモンスターに至るまで採りすぎたかもしれないと若干反省しつつ元いた場所まで戻って来る。

「ふぅ…こんな罠があったとは……恐ろしい試練だ。よくみんなクリアできたものだな。」

危うく目的を見失うところだった。レインは人間の欲望をくすぐるなんとも狡猾で汚い罠だったんだとブツブツ呟きながら試練を再開する。

滑りやすい粘液を出す苔や草がなくなり。根っこからほじり返したために手がかかりやすい。とはいえ今から降りるのだからそこまでしても特に意味はない。
何箇所かで鉄鉱石や銀、金、ミスリルなどの金属を見つけて強引にほじり出したレインはそのまま階段を作るかのようにゴリゴリ金属をほじって最下層にいる師匠アノールドの元へと向かう。





(ドウシテコウナッタ)

アノールドはレインが暴走しているときもずっと見ていた。
本来ならの1メートルほどの足場をあちこち飛びながら降って来るはずなんだが…
まさか岩盤に手足を突き刺し、ゴリゴリと壁を削って階段を掘って来るとは思わなかった。ましてや苔や薬草、虫にモンスターを採取しながら降りて来る余裕っぷり。

今後の試練難易度が下がってしまう緊急事態ではあるがクリアの仕方は人それぞれ。
本来なら滑らないように考えて足場になりそうな場所があることに気がつきそれを利用するのが正解である。だが筋肉の力押しでもバーミリオン流においては正解。むしろゴリ押しできるほどの身体能力は大歓迎ではあるのだが…流石にこれはやりすぎだろうと思わないものはいないだろう。アノールドでさえここの岩盤を掘るのに多少手こずるのだがレインはガリガリと削っている。しかも遠目に見た感じではオリハルコンやヒヒイロカネなんかの金属も混じっているように見えた。

(はっ!笑うしかないな。)

実際のところ鍛治師、彫金師、石工職人等々の初期スキルのおかげでザクザク掘っているわけだが本来そこまで職業を取得しているものはいないのがガイアース世界の住人の常識である。が、レインはプレイヤーなのでその常識が通用しない。
ほんの数十メートル先まで階段を作り悠々と降りて来ると気まずそうに飛び降りるレイン。

「いやぁすみません。つい採取してしまって…(まさか師匠の前で罠にかかるとは)」
「いや、いいんだ。この辺の素材は珍しいからな。(そんな余裕は普通ないんだがな)」
「そ、そうですよね……これは甘い誘惑でした。」
「あぁ…そうだな。うん、まぁ、それはそれとしてこれが免許皆伝者に渡している魔道具『シェイカー』だ。」

アノールドは30センチほどの二段に別れたボトル容器を取り出す。
下10センチのところが分離するような構造になっていて容器の表面にはびっしりと魔法陣と刻印魔法が施されている。よくみるとその容器の材質はほんのり緑色に光ってミスリス製のようだ。蓋の部分には小さなアメジストの魔封石がつけられていてかなり高価な魔道具であることがわかる。
リリースから一年半経つが総ミスリル製の魔道具を持っているプレイヤーはほとんどいないはずだ。
思っていた以上にすごい代物のようで目を丸くさせるレインだがアノールドは気にせず説明を始める。

「使用法は大豆と一緒に野菜や果物を入れて2分ほど振ると余分な糖分が容器の下半分の分離部分にたまり、タンパク質とその他栄養素を上の容器に分離することができる。下の容器は不要な糖分だが、これはこれでシロップという液体糖分になるから菓子屋にでも売るといい。なかなか良い値で勝てくれるぞ。上の容器には良質な筋肉を作るための栄養ドリンクが残される。しかも味はかなり飲みやすいときた!!これがあれば効率よく魔力と筋肉を鍛えることができるぞ!!」
「あ、ありがとうございます。」

レインは頭の中で「プロテイン製造機はこれだったのか」と納得した。ここ最近飲んでいたミッドのと比べると非常に美味しいプロテインジュースはこれで作っていたんだと確信し、ミッドはこれを真似て自信で食べ物を砕いでドロドロにした結果クソまずい出来上がりになったのだろうと予想する。

ちなみにこのシェイカーは鑑定不可能で神器扱いのようだ。(バーミリオン流にとって)

シェイカーで作った飲み物は身体能力上昇効果のあるドリンクなので持ってて悪いものではない。そしてバーミリオン流はちょっとしたルーチンをしたあとで摂取する飲食アイテムの効果が上昇する儀式魔法が存在する。
儀式魔法で引き上げられたドリンクは凄まじい効果を発揮し、魔法を使わずとも大抵は制圧可能な肉体を作ることができるのだ。将来この儀式魔法とシェイカーで作られるプロテインジュースによって身体強化したミッドがヴァルガード兵相手に無双するのだがそれはまた別の話だ。

「次は登りだ魔法を使わず登り切るのだぞ!私は先に上で待っている。」

着ていた服を脱ぎ捨てて両足を肩幅に開き両腕をだらんと力を抜きそしてその状態で全身に力をいれる。

「ハ!『身体強化フロントラットスプレッド』」

淡い光がアノールドの体を覆うと筋肉が一回り膨れ上がる。
ミシリと地面が悲鳴をあげるとすでにそこにアノールドはいなかった。

「うわ~相変わらずエグい身体強化だな。」

詠唱、儀式、触媒三つを連鎖させた身体強化魔法。
少々強引な詠唱であるがもともとこの世界の詠唱は下級の魔法師がイメージしやすくするためと無駄な魔力を消費せず威力を上昇させるためのプログラムのようなものだ。口に出すのか文字や記号にするのかと言う違いで陣を使った魔法と大差ない。だいたい身体強化のイメージなど今まで筋トレしてきたバーミリオン流の人間は筋肉の一つ一つまで意識できるのだから言葉に出してイメージするまでもない。
儀式はボディービルのポーズでそれが一つの芸術でありこの筋肉を作り上げる筋トレこそ儀式のための長大な下準備でありポーズを決めたことで完成する大規模儀式の部類に入る。
触媒は筋肉。血液には魔力が含まれている。筋肉を鍛えて肥大化させることで筋肉内の血液量を増やし触媒として十分な魔力量をもたらしている。触媒として魔法を使うと少し乳酸がたまるがバーミリオン流は度重なる筋トレにより乳酸の代謝が異常に早いので何度でも触媒として使用可能だ。


これがアノールド・トライ・バーミリオンが作り出した三種の魔法発動理論を融合させ昇華させた先にある最強の魔法流派と言わしめるバーミリオン流魔法である。


「あ!見入ってる場合じゃなかった。」
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