18 / 18
第18話 公爵と侯爵令嬢が毎日俺に恋愛相談をしに来るので辛い(王太子視点)
しおりを挟む
◇◇◇ アンジェロ王太子の視点になります ◇◇◇
ロザリアの処刑は終わった。
とても見苦しくて見てられなかったけど、まあ、一区切りついた。彼女が悪かったのは間違いないが、やはり、俺が簡単に浮気してしまったことも問題があるので、そのことはいつまでも俺の胸に刻んでおくつもりだ。今後、誤りを犯さないようにと。
ティナはロザリアが処刑されることには反対していたが、こればかりはどうしようもない。チェーザレのやつは、あんな女どうでもいいと言って、処刑が決まったらすぐに興味を失っていた。
衰弱していたティナはしばらく公爵の別荘で養生していたようだが、もうすっかり回復して、今は自分の家に戻っている。両親とは感動の再会だったようだ。
そして、平凡な毎日が戻り、一件落着になったと思ったのだが……
◇
コンコン
「アンジェロ。入っていいか?」
俺が返事をする前に、チェーザレのやつが入ってきた。
「なんだ、勝手に入ってきやがって」
チェーザレは何も答えずに目の前のソファーに座り、ため息をついた。
「どうした?」
「いや、別に何も」
そう言ってはいたが、いかにも聞いて欲しそうにしている。非常に面倒くさい。こんなことが毎日なので正直、見当はついているのだが、できればあまりその話題には触れたくなかったので、違う話題に振ってみた。
「公爵になったばかりだけど、仕事の方は大丈夫か?」
彼は少し俺の方に目を向ける。
「仕事の方は問題ない。元々父の代理でやっていたからな。ますます、領地の方の景気はいいようだ」
そう言ってため息をついた。彼はこの間から、正式に公爵になっている。養父のラザロ・ネスタは彼の仕事ぶりに満足したのか、彼に爵位を譲って引退している。
それはともかく何かを聞いて欲しくてたまらなそうな感じなので、しょうがなく本題に入った。
「ティナとはうまくやっているかい?」
その途端、彼の顔の表情は一変した。
「もちろんさ。この間は俺の別荘に泊まりがけで行ったんだ。すごく喜んでいた。朝は二人で乗馬して、昼は近くの湖でボートに乗ったり、魚釣りをしたり、夜はちょっとしたパーティなんかをして、一緒に踊ったりと色々楽しんでもらった。あそこはとても空気が綺麗で、湖から魚が取れたり山の幸なんかにも恵まれて、そうそう、良いコックを見つけたので、早速色々と作ってもらったんだけど、それがなかなか絶品で、彼女もすごく喜んで……」
ものすごい勢いで言葉を並べ立てるので、うんざりして俺はこう言った。
「じゃあ、なんで、そんなにため息ばかりついているんだ」
途端に彼は暗い顔になった。
「なあ、アンジェロ。俺って嫉妬深いのかな……」
「はあ」
「ティナさんが王立学校で、他の男とちょっと話をしただけで、ムカムカするんだ。それでつい、必要もないのに話に割り込んでしまったり、彼女を別のところに連れて行こうとしたりしてしまうんだ。どうしても彼女を独り占めしたい。この世界で彼女を独占できるのは自分一人だけになりたいんだ」
「ティナの反応は?」
「ちょっと困っている顔をしていた。なあ、アンジェロ。俺、このままだと嫌われないかな。嫉妬深い男って、懐が狭いというか格好悪いというか…… でもどうしようもないんだ。ティナさんを愛してしまっているから。どうしても気持ちが止まらないんだ。こんなに俺が独占欲が高かったなんて、自分でも信じられないけど」
「うーん、まあ、あまりやりすぎるのは…… でも、そうなったら、ずっと監視しなくてはいけなくなるし、結婚しても仕事にならないんじゃないか?」
「うん、それは大丈夫、今、公爵邸は若い男を排除しているから」
「いや、お前、前には若い女性も排除していたから、使用人が老人ばかりになっちまうだろ」
「まあ、それはなんとかする。そうだ。今度、ティナさんの誕生日なんだけど、お前、昔に何か送っていたか?」
そう言われてみると、あまり記憶がなかった。
「うーん。全部任せていたな。他のやつに」
「ひどいやつだな、お前。それでも婚約者だったのか?」
「まあ、だから、こうなっているんだろう」
「お前に負けるのは癪だと思っていたが、俺の圧勝だな。ふふん。俺はだな、彼女にドレスを送ろうと思っているんだ」
「おお、いいんじゃない」
そんな圧勝ってほどかな。
「それで、王都の三大デザイナーにそれぞれ一着づつオーダーメイドで作ってもらって、気に入ったのを選んでもらおうと思ったんだが……」
「もしかして、ベルトラン、スキナー、ルーベックか? とんでもない値段になりそうだな」
「領地経営がうまく行っているので、なんの問題もない。結局、作ってもらったものが、みんな良い出来だったので、全部あげることにしたんだが、問題なのは、それに合う靴とかアクセサリーとかなんだ」
まだ、やるつもりなのか
「そこで、それぞれ王都の名店に頼んで、全部持ってきてもらうことにした。その中でベストな組み合わせを選んでもらうんだ。女性はそれぞれ好みもあるもんな。俺に勝手に選ばれても困るだろうし」
「そんなにやったら、ティナ、逆に困るんじゃないか?」
「そ、そうか、やりすぎかな。彼女は奥ゆかしいもんな」
「大切なのは心だよ。心」
「そうか、でも、その心が問題なんだよ。俺がティナさんをどんなに愛しているか、それをどうやって表現したらいいか悩んでいるんだ。どんな言葉を伝えても、どんなに彼女をもてなしてあげても、それでも俺の心はおさまらない。それが俺にはとても辛いし、もどかしいんだ」
聞いている俺の方が辛いよ。
「分かった、分かった。まあ、大丈夫、大丈夫さ。彼女には十分伝わっているんじゃないか」
「そうか、そうならいいんだけど……」
彼はまた辛そうな顔で俺の部屋を去っていった。
◇
コンコン
「アンジェロ殿下、私です。ティナです」
今度は彼女がやってきた。だいたい何を相談したいかは分かっているが、正直もう聞きたくない心境ではあった。
彼女は体を入れ替えたことがあってから、皮肉なことに婚約していた頃よりずっと仲が良くなった。なんでも話し合えることで、色々と相談されることもあったのだが、彼女がチェーザレと付き合うようになってから、頻度が増えてきている。
彼女が部屋に入ってきた。金髪の長い髪は今日は後ろにまとめられ、銀の髪飾りが揺れていた。大きな紺碧の瞳は今日着ているドレスの色ともとてもよく似合っていて、非常に魅力的だ。
そう、彼女はチェーザレと付き合うようになってから、ますます魅力的になっていた。そのことが俺の胸を少し苦しくした。
「今日はなんのようだい?」
少しそっけなく言った。
「チェーザレ様に嫌われないかと思って、心配しているんです」
彼女は控えめな調子でそう答えた。
「どうしてだい。彼は相当君に入れあげているようだけど」
「すごくよくしてもらっています。毎日やってきては色々とプレゼントを持ってきたりして、あまり無理しないでくださいって言っても止めてくれなくて」
「まあ、迷惑だろうな」
「迷惑なんじゃないんです。本当は嬉しいんです。嬉しいんですけど、そんなにやってもらうと心苦しくて、いつもそうなんです。私が訪問すると、私の身の回りのことなんでもチェーザレ様がやろうとして、もう公爵様なので、そんなことしないでくださいって言っても、なかなかうまくいかなくて」
「そんなこと言わないで、黙ってやらせればいいんじゃないか。きっと君が大好きだからだよ。どんと構えて受け入れてあげればいいんじゃないか。それを彼も望んでいるだろう」
「私の気持ちがおさまらないんです。やってもらうばかりじゃ嫌なんです。本当は彼のために色々とやってあげたい。私でも彼に貢献できることを見せたい。そうじゃないと、捨てられてしまいそうで怖いんです」
それを聞いて、俺は心が痛んだ。そうか、俺のせいかもしれないな。あの時、あんな酷いことを言ったから、きっと、心に傷がついてしまったんだ。
「何か得意なことはないかい?」
「えっと、そうだ。料理なら。料理なら得意です」
「じゃあ、それを披露したらいいよ。きっと喜ぶよ。世界一美味しいっていうに違いない」
「そうか、そうだね。美味しいって言われたら、すごい嬉しいだろうなあ」
そんなことを言う彼女は、少し頬を染めていて、夢見るような表情をしていた。そして、それがとても愛くるしくて俺はとても切なくなった。そんな顔を俺は一度も見たことがなかったから。
「そうだ。それから、俺の方から、それとなく言ってみるよ。互いを思っていることは間違いないんだから、あとはうまく調整すればいいことさ。ゆっくりやろうよ。大丈夫、あいつはそんな男じゃないから」
俺がそういうと、彼女は少し安心したような顔をして、俺にお礼を言って部屋を出て行った。
◇
俺は部屋で一人考えていた。
ティナはとても魅力的になっていた。それも俺の力ではなく、チェーザレの力によって。
彼女はあんなにも魅力的だった。そして、あんなにもそばにいたのに、それに気が付かなかった自分がとても愚かで悔しい。もう取り返しはつかないのに、今でもすごく後悔している。
もしかしたら、俺がもう少し大人だったら、そして、もう少しティナの方を見ていたら、違った未来があったかもしれない。そう思うと胸が張り裂けそうになってしまう。
俺は立ち上がると窓を開けた。満月が美しく、空はとても明るかった。今日の月はあんなにも近くに見えるのに、それでも俺の手には届かないのだ。ただ美しい月を眺めているだけしか、俺には許されていないのだ。
「これが、俺の罰なんだな。生涯負わなくてはならない」
そう呟くと俺は窓を閉めた。
ロザリアの処刑は終わった。
とても見苦しくて見てられなかったけど、まあ、一区切りついた。彼女が悪かったのは間違いないが、やはり、俺が簡単に浮気してしまったことも問題があるので、そのことはいつまでも俺の胸に刻んでおくつもりだ。今後、誤りを犯さないようにと。
ティナはロザリアが処刑されることには反対していたが、こればかりはどうしようもない。チェーザレのやつは、あんな女どうでもいいと言って、処刑が決まったらすぐに興味を失っていた。
衰弱していたティナはしばらく公爵の別荘で養生していたようだが、もうすっかり回復して、今は自分の家に戻っている。両親とは感動の再会だったようだ。
そして、平凡な毎日が戻り、一件落着になったと思ったのだが……
◇
コンコン
「アンジェロ。入っていいか?」
俺が返事をする前に、チェーザレのやつが入ってきた。
「なんだ、勝手に入ってきやがって」
チェーザレは何も答えずに目の前のソファーに座り、ため息をついた。
「どうした?」
「いや、別に何も」
そう言ってはいたが、いかにも聞いて欲しそうにしている。非常に面倒くさい。こんなことが毎日なので正直、見当はついているのだが、できればあまりその話題には触れたくなかったので、違う話題に振ってみた。
「公爵になったばかりだけど、仕事の方は大丈夫か?」
彼は少し俺の方に目を向ける。
「仕事の方は問題ない。元々父の代理でやっていたからな。ますます、領地の方の景気はいいようだ」
そう言ってため息をついた。彼はこの間から、正式に公爵になっている。養父のラザロ・ネスタは彼の仕事ぶりに満足したのか、彼に爵位を譲って引退している。
それはともかく何かを聞いて欲しくてたまらなそうな感じなので、しょうがなく本題に入った。
「ティナとはうまくやっているかい?」
その途端、彼の顔の表情は一変した。
「もちろんさ。この間は俺の別荘に泊まりがけで行ったんだ。すごく喜んでいた。朝は二人で乗馬して、昼は近くの湖でボートに乗ったり、魚釣りをしたり、夜はちょっとしたパーティなんかをして、一緒に踊ったりと色々楽しんでもらった。あそこはとても空気が綺麗で、湖から魚が取れたり山の幸なんかにも恵まれて、そうそう、良いコックを見つけたので、早速色々と作ってもらったんだけど、それがなかなか絶品で、彼女もすごく喜んで……」
ものすごい勢いで言葉を並べ立てるので、うんざりして俺はこう言った。
「じゃあ、なんで、そんなにため息ばかりついているんだ」
途端に彼は暗い顔になった。
「なあ、アンジェロ。俺って嫉妬深いのかな……」
「はあ」
「ティナさんが王立学校で、他の男とちょっと話をしただけで、ムカムカするんだ。それでつい、必要もないのに話に割り込んでしまったり、彼女を別のところに連れて行こうとしたりしてしまうんだ。どうしても彼女を独り占めしたい。この世界で彼女を独占できるのは自分一人だけになりたいんだ」
「ティナの反応は?」
「ちょっと困っている顔をしていた。なあ、アンジェロ。俺、このままだと嫌われないかな。嫉妬深い男って、懐が狭いというか格好悪いというか…… でもどうしようもないんだ。ティナさんを愛してしまっているから。どうしても気持ちが止まらないんだ。こんなに俺が独占欲が高かったなんて、自分でも信じられないけど」
「うーん、まあ、あまりやりすぎるのは…… でも、そうなったら、ずっと監視しなくてはいけなくなるし、結婚しても仕事にならないんじゃないか?」
「うん、それは大丈夫、今、公爵邸は若い男を排除しているから」
「いや、お前、前には若い女性も排除していたから、使用人が老人ばかりになっちまうだろ」
「まあ、それはなんとかする。そうだ。今度、ティナさんの誕生日なんだけど、お前、昔に何か送っていたか?」
そう言われてみると、あまり記憶がなかった。
「うーん。全部任せていたな。他のやつに」
「ひどいやつだな、お前。それでも婚約者だったのか?」
「まあ、だから、こうなっているんだろう」
「お前に負けるのは癪だと思っていたが、俺の圧勝だな。ふふん。俺はだな、彼女にドレスを送ろうと思っているんだ」
「おお、いいんじゃない」
そんな圧勝ってほどかな。
「それで、王都の三大デザイナーにそれぞれ一着づつオーダーメイドで作ってもらって、気に入ったのを選んでもらおうと思ったんだが……」
「もしかして、ベルトラン、スキナー、ルーベックか? とんでもない値段になりそうだな」
「領地経営がうまく行っているので、なんの問題もない。結局、作ってもらったものが、みんな良い出来だったので、全部あげることにしたんだが、問題なのは、それに合う靴とかアクセサリーとかなんだ」
まだ、やるつもりなのか
「そこで、それぞれ王都の名店に頼んで、全部持ってきてもらうことにした。その中でベストな組み合わせを選んでもらうんだ。女性はそれぞれ好みもあるもんな。俺に勝手に選ばれても困るだろうし」
「そんなにやったら、ティナ、逆に困るんじゃないか?」
「そ、そうか、やりすぎかな。彼女は奥ゆかしいもんな」
「大切なのは心だよ。心」
「そうか、でも、その心が問題なんだよ。俺がティナさんをどんなに愛しているか、それをどうやって表現したらいいか悩んでいるんだ。どんな言葉を伝えても、どんなに彼女をもてなしてあげても、それでも俺の心はおさまらない。それが俺にはとても辛いし、もどかしいんだ」
聞いている俺の方が辛いよ。
「分かった、分かった。まあ、大丈夫、大丈夫さ。彼女には十分伝わっているんじゃないか」
「そうか、そうならいいんだけど……」
彼はまた辛そうな顔で俺の部屋を去っていった。
◇
コンコン
「アンジェロ殿下、私です。ティナです」
今度は彼女がやってきた。だいたい何を相談したいかは分かっているが、正直もう聞きたくない心境ではあった。
彼女は体を入れ替えたことがあってから、皮肉なことに婚約していた頃よりずっと仲が良くなった。なんでも話し合えることで、色々と相談されることもあったのだが、彼女がチェーザレと付き合うようになってから、頻度が増えてきている。
彼女が部屋に入ってきた。金髪の長い髪は今日は後ろにまとめられ、銀の髪飾りが揺れていた。大きな紺碧の瞳は今日着ているドレスの色ともとてもよく似合っていて、非常に魅力的だ。
そう、彼女はチェーザレと付き合うようになってから、ますます魅力的になっていた。そのことが俺の胸を少し苦しくした。
「今日はなんのようだい?」
少しそっけなく言った。
「チェーザレ様に嫌われないかと思って、心配しているんです」
彼女は控えめな調子でそう答えた。
「どうしてだい。彼は相当君に入れあげているようだけど」
「すごくよくしてもらっています。毎日やってきては色々とプレゼントを持ってきたりして、あまり無理しないでくださいって言っても止めてくれなくて」
「まあ、迷惑だろうな」
「迷惑なんじゃないんです。本当は嬉しいんです。嬉しいんですけど、そんなにやってもらうと心苦しくて、いつもそうなんです。私が訪問すると、私の身の回りのことなんでもチェーザレ様がやろうとして、もう公爵様なので、そんなことしないでくださいって言っても、なかなかうまくいかなくて」
「そんなこと言わないで、黙ってやらせればいいんじゃないか。きっと君が大好きだからだよ。どんと構えて受け入れてあげればいいんじゃないか。それを彼も望んでいるだろう」
「私の気持ちがおさまらないんです。やってもらうばかりじゃ嫌なんです。本当は彼のために色々とやってあげたい。私でも彼に貢献できることを見せたい。そうじゃないと、捨てられてしまいそうで怖いんです」
それを聞いて、俺は心が痛んだ。そうか、俺のせいかもしれないな。あの時、あんな酷いことを言ったから、きっと、心に傷がついてしまったんだ。
「何か得意なことはないかい?」
「えっと、そうだ。料理なら。料理なら得意です」
「じゃあ、それを披露したらいいよ。きっと喜ぶよ。世界一美味しいっていうに違いない」
「そうか、そうだね。美味しいって言われたら、すごい嬉しいだろうなあ」
そんなことを言う彼女は、少し頬を染めていて、夢見るような表情をしていた。そして、それがとても愛くるしくて俺はとても切なくなった。そんな顔を俺は一度も見たことがなかったから。
「そうだ。それから、俺の方から、それとなく言ってみるよ。互いを思っていることは間違いないんだから、あとはうまく調整すればいいことさ。ゆっくりやろうよ。大丈夫、あいつはそんな男じゃないから」
俺がそういうと、彼女は少し安心したような顔をして、俺にお礼を言って部屋を出て行った。
◇
俺は部屋で一人考えていた。
ティナはとても魅力的になっていた。それも俺の力ではなく、チェーザレの力によって。
彼女はあんなにも魅力的だった。そして、あんなにもそばにいたのに、それに気が付かなかった自分がとても愚かで悔しい。もう取り返しはつかないのに、今でもすごく後悔している。
もしかしたら、俺がもう少し大人だったら、そして、もう少しティナの方を見ていたら、違った未来があったかもしれない。そう思うと胸が張り裂けそうになってしまう。
俺は立ち上がると窓を開けた。満月が美しく、空はとても明るかった。今日の月はあんなにも近くに見えるのに、それでも俺の手には届かないのだ。ただ美しい月を眺めているだけしか、俺には許されていないのだ。
「これが、俺の罰なんだな。生涯負わなくてはならない」
そう呟くと俺は窓を閉めた。
0
お気に入りに追加
297
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ
くわっと
恋愛
黒く長い髪が特徴のフォルテシア=マーテルロ。
彼女は今日も兄妹・父母に虐げられています。
それは時に暴力で、
時に言葉で、
時にーー
その世界には一般的ではない『黒い髪』を理由に彼女は迫害され続ける。
黒髪を除けば、可愛らしい外見、勤勉な性格、良家の血筋と、本来は逆の立場にいたはずの令嬢。
だけれど、彼女の髪は黒かった。
常闇のように、
悪魔のように、
魔女のように。
これは、ひとりの少女の物語。
革命と反逆と恋心のお話。
ーー
R2 0517完結 今までありがとうございました。
悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。
しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。
次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。
破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。
その公女、至極真面目につき〜デラム公女アリスタの婚約破棄ショー〜
ルーシャオ
恋愛
デラム公女アリスタは、婚約者であるクラルスク公爵家嫡男ヴュルストがいつも女性を取っ替え引っ替えして浮気していることにいい加減嫌気が差しました。
なので、真面目な公女としてできる手を打ち、やってやると決めたのです。
トレディエールの晩餐会で、婚約破棄ショーが幕を開けます。
【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~
北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!**
「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」
侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。
「あなたの侍女になります」
「本気か?」
匿ってもらうだけの女になりたくない。
レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。
一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。
レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。
※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません)
※設定はゆるふわ。
※3万文字で終わります
※全話投稿済です
婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。
藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」
婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで←
うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。
【 完 】転移魔法を強要させられた上に婚約破棄されました。だけど私の元に宮廷魔術師が現れたんです
菊池 快晴
恋愛
公爵令嬢レムリは、魔法が使えないことを理由に婚約破棄を言い渡される。
自分を虐げてきた義妹、エリアスの思惑によりレムリは、国民からは残虐な令嬢だと誤解され軽蔑されていた。
生きている価値を見失ったレムリは、人生を終わらせようと展望台から身を投げようとする。
しかし、そんなレムリの命を救ったのは他国の宮廷魔術師アズライトだった。
そんな彼から街の案内を頼まれ、病に困っている国民を助けるアズライトの姿を見ていくうちに真実の愛を知る――。
この話は、行き場を失った公爵令嬢が強欲な宮廷魔術師と出会い、ざまあして幸せになるお話です。
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
婚約破棄になって屋敷も追い出されたが、それ以上の名家の公爵に好かれて
ワールド
恋愛
私はエリアンナ・ヴェルモント、一介の伯爵家の娘。政略結婚が突如破棄され、家族にも見放されてしまった。恥辱にまみれ、屋敷を追われる私。だが、その夜が私の運命を変える。ある名家の公爵、アレクサンダー・グレイヴィルが私に手を差し伸べたのだ。彼は私をただの避けられるべき存在とは見ず、私の真の価値を見出してくれた。
アレクサンダーの保護の下、私は新たな生活を始める。彼は冷酷な噂が絶えない男だったが、私にだけは温かい。彼の影響力で、私は社交界に再び姿を現す。今度は嘲笑の対象ではなく、尊敬される女性として。私は彼の隣で学び、成長し、やがて自分自身の名声を築き上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
あるあるですよね。