【完結】ゲーム転生、死んだ彼女がそこにいた〜死亡フラグから救えるのは俺しかいない〜

たけのこ

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プロローグ

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 絶望とは、こういうことを言うのだろうか。
 黒のネクタイを締め直した俺は、葬儀場の入り口で立ち尽くしていた。
 このまま会場に入ってもいいのだろうか。
 正直、怖かった。
 なぜなら……。

 勇気を振り絞り、葬儀会場へと足を進める。
 参列側の席に座り、周りを見る。
 冷たく重い視線が俺に向けられている。

 極言すれば、ミナエを殺したのは俺なのだ。
 あのとき、俺がミナエを呼び出さなければ、ミナエは死なずに済んだのだ。

 お経が終わり、俺が焼香台に向かったとき、遺族側に座るミナエの母親が声を上げて泣き始めた。
 あんたのせいで、こうなったのよ。
 そんな言葉を投げかけられているかのように思えた。
 母親の泣き声が響く異様な空間で、俺はなんとか焼香を済ませ、亡くなったミナエに向けて手を合わす。

 あの日、ファミレスのバイトを首になった俺を励ましてくれたミナエは……。
 俺の住むアパートから自宅へ戻る途中、交通事故に遭い死んでしまった。
 まだ、二十三歳だというのに。
 もし俺が、ミナエに会いたいなんて言わなければ、彼女は今も元気な姿を見せていたはずだ。

 死のきっかけを作ってしまった人間が、この場に居続ける訳にはいかない。そう思った俺は、出棺を待たずに葬儀会場を後にした。
 そう、最後の見送りもせずに、俺は一人、自分の住むアパートの部屋へと戻ったのだ。

 俺なんか、何の価値もない人間だ。

 調理師学校を出たのはいいが、どこも俺を正社員で雇ってくれるところなどなかった。結局フリーターとなり、ファミレスで働くことになったはいいが、そこも人員整理で簡単に首になってしまう。
 仕事もない俺が、どうやってミナエを幸せにできるというのか。
 仕事もない俺が、ミナエと家庭を持つなど、夢のまた夢でしかない。
 そんな、八方塞がりでどうしようもない俺を、ミナエは笑ってこう言ってくれた。

「大丈夫よ。あきらめなければ何とかなるわよ」

 そして、その言葉を残して、ミナエはあの世に行ってしまった。

 葬儀場を後にし、アパートの部屋に入ると、俺はずぐにテレビの電源を入れた。
 すでに繋いであるゲーム機の電源も入れる。

 このゲーム、もう何度やったことだろうか。
 シミュレーションRPG『ハッピーロード』だ。
 何度もこのゲームを繰り返すには訳がある。
 ハッピーロードは、勇者が魔王を倒して終わる、まあ普通といえば普通のシミュレーションRPGだった。
 しかし、一つだけ普通ではないところがあった。
 というのは、このゲーム、いつもヒロインのローラ姫がゲームの終盤に亡くなってしまうのだ。
 何回繰り返しても、ローラ姫が死んでしまう。そして、その死を受けて勇者アークが覚醒し、魔王を倒すというパターンなのだ。

 そんな変わった終わり方をするゲームなので、ゲーマーの間では伝説に近い言い伝えができあがってしまった。

 ハッピーロードには、ローラ姫が死なないエンディングのシナリオが隠されているはずだ、と。

 そのため、日本中、いや世界中のゲーマーたちが、ローラ姫の死なないエンディングを求め、何度もこのゲームを繰り返すようになる。

 しかし、ネットを見渡す限り、今現在に至って、ローラ姫が死ぬことなくゲームをクリアした人物は現れていない。
 もちろん俺も、クリアできていない中の一人である。

 葬式の後に、すぐさまゲームをするだなんて、今更ながらに情けない。

 ほんと、俺は何の価値もない人間だ。

 そう思いながら、ゲームを始めようとしたときだった。

 この数日、ほとんど寝ていないからだろうか、俺はゲームの電源をいれたまま、自分の意識が薄れていくのを感じていた。
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