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第14章 王の『鍵』
第1話(5)
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大きく踏みこんで間合いを詰め、脇腹に強烈なタックルを決める。相手が吹っ飛んで床に叩きつけられたところをさらに踏みこもうとしたタイミングで、それを察知したラーザが仰向けの体勢から躰を跳ね上げるようにしてシリルを蹴り飛ばした。
もともと重傷を負っていた腹部の銃創を、軍靴の爪先がまともに抉る。咄嗟に呼吸を奪われ、受け身もとれぬまま、シリルは背中から瓦礫の山につっこんだ。
「シリルッ」
全身に強い衝撃が奔り、視界が一瞬白くなる。リュークの悲鳴を耳にとらえつつ、躰を硬直させたシリルは幾度か喘ぐと、カハッと噎せて口から鮮血を飛び散らせた。
低く呻きながら、それでもシリルは躰を反転させる。だが、起き上がろうとしたところで反射的にその場にあった物を掴み、身を捩りながら両手をまえにつき出した。漲る殺気とともに、勢いよく振り下ろされた特殊警棒が眼前に迫る。その猛攻を、シリルはきわどいところで受け止めた。鈍い金属音が、あたりに響く。燭台を握るシリルの両手が、ビリビリと痺れた。
「……っく」
歯をくいしばりながら互いに牽制し、睨み合う。拮抗し合う力は、不利な体勢のシリルが次第に押されていった。ジンジンと疼く腹部の傷を中心に、生温かい感触が次第にひろがって衣服を濡らす。そのじっとりとした湿り気が不快さを増した。
特殊警棒を受け止める燭台が、徐々に目の前に迫ってくる。力の均衡が保てる限界に達したシリルは最後の力を振り絞り、正面から加えられる圧を横に流した。
バランスを崩したラーザの手から警棒が弾け飛ぶ。大きく体勢を崩したラーザは、それでも怯むことなくシリルの首を締めあげようと襲いかかってきた。シリルはその手を素早く掴んで立ち上がりしな捻り上げ、勢いをつけて関節をはずした。
「ぐあっ!」
ラーザの口から叫声が漏れた。激痛に仰け反ったラーザは、しかし次の瞬間、もう一方の手を閃かせた。
手首のホルダーから伸びたワイヤーが、シリルの足をすかさず捕らえる。足もとを掬われたシリルは、ふたたび瓦礫の山へとつっこんだ。強い衝撃に、意識が飛びそうになる。刹那、両目を見開いたシリルは、上体を大きく捻って真横に移動した。その肩先を、振り下ろされたスタンガンが掠めた。
「うあ…っ」
飛び散る火花とともに躰を跳ね上げたシリルは、上体をまるめて蹲った。その背中に、間髪置かず第二撃が襲いかかる。鋭敏な勘で危険を察知したシリルは、全身のバネを総動員してその場から飛び退いた。そして、振り向きざま足払いをかけると、バランスを崩した相手の鳩尾に加減のない蹴りを叩きこんだ。
ラーザの躰は数メートル先へと吹っ飛んだ。その落下地点を霞む目で確認したシリルは、力の入らない足を奮い立たせ、扉が開け放たれている小型機へと飛び乗った。
視界がうまく定まらず、手もふるえて思うように言うことを聞かない。それでも歯をくいしばり、なんとか操作ボタンに指を伸ばしてエンジンをかけた。作動した小型機のパネルを、殆ど勘に近い状態で手早く操作する。後方でラーザが呻きながら起き上がる気配がした。その瞬間、操縦桿を握ったシリルはジェットエンジンをフルパワーで空ぶかしした。
「ヒゲァアァァァ―――――ッッッ!!!」
凄まじい絶叫とともにラーザの躰が吹き飛ぶ。鈍い衝撃音を伴って背後の壁に叩きつけられたその姿は、ほどなく壁面を滑り落ちて瓦礫の中に沈んでいった。
もともと重傷を負っていた腹部の銃創を、軍靴の爪先がまともに抉る。咄嗟に呼吸を奪われ、受け身もとれぬまま、シリルは背中から瓦礫の山につっこんだ。
「シリルッ」
全身に強い衝撃が奔り、視界が一瞬白くなる。リュークの悲鳴を耳にとらえつつ、躰を硬直させたシリルは幾度か喘ぐと、カハッと噎せて口から鮮血を飛び散らせた。
低く呻きながら、それでもシリルは躰を反転させる。だが、起き上がろうとしたところで反射的にその場にあった物を掴み、身を捩りながら両手をまえにつき出した。漲る殺気とともに、勢いよく振り下ろされた特殊警棒が眼前に迫る。その猛攻を、シリルはきわどいところで受け止めた。鈍い金属音が、あたりに響く。燭台を握るシリルの両手が、ビリビリと痺れた。
「……っく」
歯をくいしばりながら互いに牽制し、睨み合う。拮抗し合う力は、不利な体勢のシリルが次第に押されていった。ジンジンと疼く腹部の傷を中心に、生温かい感触が次第にひろがって衣服を濡らす。そのじっとりとした湿り気が不快さを増した。
特殊警棒を受け止める燭台が、徐々に目の前に迫ってくる。力の均衡が保てる限界に達したシリルは最後の力を振り絞り、正面から加えられる圧を横に流した。
バランスを崩したラーザの手から警棒が弾け飛ぶ。大きく体勢を崩したラーザは、それでも怯むことなくシリルの首を締めあげようと襲いかかってきた。シリルはその手を素早く掴んで立ち上がりしな捻り上げ、勢いをつけて関節をはずした。
「ぐあっ!」
ラーザの口から叫声が漏れた。激痛に仰け反ったラーザは、しかし次の瞬間、もう一方の手を閃かせた。
手首のホルダーから伸びたワイヤーが、シリルの足をすかさず捕らえる。足もとを掬われたシリルは、ふたたび瓦礫の山へとつっこんだ。強い衝撃に、意識が飛びそうになる。刹那、両目を見開いたシリルは、上体を大きく捻って真横に移動した。その肩先を、振り下ろされたスタンガンが掠めた。
「うあ…っ」
飛び散る火花とともに躰を跳ね上げたシリルは、上体をまるめて蹲った。その背中に、間髪置かず第二撃が襲いかかる。鋭敏な勘で危険を察知したシリルは、全身のバネを総動員してその場から飛び退いた。そして、振り向きざま足払いをかけると、バランスを崩した相手の鳩尾に加減のない蹴りを叩きこんだ。
ラーザの躰は数メートル先へと吹っ飛んだ。その落下地点を霞む目で確認したシリルは、力の入らない足を奮い立たせ、扉が開け放たれている小型機へと飛び乗った。
視界がうまく定まらず、手もふるえて思うように言うことを聞かない。それでも歯をくいしばり、なんとか操作ボタンに指を伸ばしてエンジンをかけた。作動した小型機のパネルを、殆ど勘に近い状態で手早く操作する。後方でラーザが呻きながら起き上がる気配がした。その瞬間、操縦桿を握ったシリルはジェットエンジンをフルパワーで空ぶかしした。
「ヒゲァアァァァ―――――ッッッ!!!」
凄まじい絶叫とともにラーザの躰が吹き飛ぶ。鈍い衝撃音を伴って背後の壁に叩きつけられたその姿は、ほどなく壁面を滑り落ちて瓦礫の中に沈んでいった。
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