150 / 161
第14章 王の『鍵』
第1話(4)
しおりを挟む
「ザマァねえな、隊長。人質とられてあっさり降伏か? 情けなさすぎて涙が出てくるぜ」
ククッと喉を鳴らすラーザを見ても、シリルの冷めた表情は動かなかった。
「俺はな、隊長、あんたのそういう優しさに、心底虫唾が走るんだよ」
ホント情けねえなあ。嘆かわしそうにラーザはぼやいてみせた。
「あんたほどの強さがありゃあ、なんだって思いのままにできる。なのにその強さを、虫けら同然の弱い奴らのために簡単に擲って犠牲にしちまう。正義漢ぶった偽善も、そこまでくりゃ立派なもんだ。けどよ、隊長、そういう優しさなんざ、クソの役にも立たねえんだよ。スカした態度で甘いこと言ってたって、所詮そんなのは生ぬるい世界の中だけでの綺麗ごとにすぎねえ。俺らにゃそんなもん、邪魔にしかなんねえってのに、同類の分際でテメエだけ聖人ぶって本気出さねえのがムカついてムカついてしょうがねえのよ。だからさ」
言葉を区切ったラーザは、シリルの後方に声を投げた。
「後ろに隠れてるお人形ちゃんも、ちょっと協力してちょうだいよ」
言った途端に、ラーザはシリルめがけて発砲した。
「――っ」
わざとはずした的が、シリルの太ももを掠めて鮮血を飛び散らせた。
「言うこと聞かねえと、今度はホントに当てちゃうよ~ん」
「リュークッ」
シリルは低い声で制したが、ラーザの言葉が脅しではないことを身をもって経験しているヒューマノイドは、蒼褪めた表情で物陰から進み出た。そのままこっちへ来るよう命じられ、おとなしくその言葉に従う。近づいてきた人質の腕を掴んだラーザは、乱暴に自分のほうへ引き寄せると、ガッチリと首に腕をまわして押さえこんだ。
「じゃあ、隊長、そろそろお互い、本気出してやり合うとしようか。3分経過するごとに人質はひとりずつ殺してくってことで、ルールと時間厳守で了解してちょうだいねっと!」
リュークをリズたちのほうへ突き飛ばしたラーザは、扉が開け放たれていた小型機に飛び乗った。そこから振り向きざま、構えたバズーカを発射する。砲弾のかわりに網が発射され、瞬く間に空中でひろがったそれは、3人の人質に覆いかぶさった。そのさまを見届けるまもなく、ラーザは投網銃を投げ捨てる。素早く持ち替えた機関銃を構えると、今度はシリルめがけてトリガーを引いた。
床を蹴ったシリルが、散乱する瓦礫の向こう側へと飛びこむ。追いかけたラーザは、容赦なくシリルを狙い撃ちにした。
「ほぉらほらっ、逃げてばっかだと、あっという間に3分のリミット過ぎちゃうぜっ」
ラーザは愉しげに揶揄した。
物が散乱する霊廟内を、ふたりの男たちは縦横に移動する。丸腰のシリルは、調度品や石像、石棺など、片っ端から武器や楯になりそうな物を見繕ってはラーザに反撃し、あるいは攻撃を躱した。
「あと2ふ~ん!」
焦燥を煽るようにラーザがカウントする。
「さぁて、まずひとりめは、どいつに犠牲になってもらうかな。精神的ダメージがいちばんデカそうなお人形は最後に残しとくとして、ジジイが先か、女が先か」
謳うようなラーザのセリフを聞き流し、シリルは足もとに落ちていたシャンデリアの鎖を掴むと、力任せに振るった。重厚な照明器具が遠心力を伴って強烈な破壊力を生み出し、ラーザに襲いかかる。かろうじてよけた先で瓦礫に躓いた男は、バランスを崩して蹈鞴を踏んだ。その一瞬の隙を、シリルは逃さなかった。
ククッと喉を鳴らすラーザを見ても、シリルの冷めた表情は動かなかった。
「俺はな、隊長、あんたのそういう優しさに、心底虫唾が走るんだよ」
ホント情けねえなあ。嘆かわしそうにラーザはぼやいてみせた。
「あんたほどの強さがありゃあ、なんだって思いのままにできる。なのにその強さを、虫けら同然の弱い奴らのために簡単に擲って犠牲にしちまう。正義漢ぶった偽善も、そこまでくりゃ立派なもんだ。けどよ、隊長、そういう優しさなんざ、クソの役にも立たねえんだよ。スカした態度で甘いこと言ってたって、所詮そんなのは生ぬるい世界の中だけでの綺麗ごとにすぎねえ。俺らにゃそんなもん、邪魔にしかなんねえってのに、同類の分際でテメエだけ聖人ぶって本気出さねえのがムカついてムカついてしょうがねえのよ。だからさ」
言葉を区切ったラーザは、シリルの後方に声を投げた。
「後ろに隠れてるお人形ちゃんも、ちょっと協力してちょうだいよ」
言った途端に、ラーザはシリルめがけて発砲した。
「――っ」
わざとはずした的が、シリルの太ももを掠めて鮮血を飛び散らせた。
「言うこと聞かねえと、今度はホントに当てちゃうよ~ん」
「リュークッ」
シリルは低い声で制したが、ラーザの言葉が脅しではないことを身をもって経験しているヒューマノイドは、蒼褪めた表情で物陰から進み出た。そのままこっちへ来るよう命じられ、おとなしくその言葉に従う。近づいてきた人質の腕を掴んだラーザは、乱暴に自分のほうへ引き寄せると、ガッチリと首に腕をまわして押さえこんだ。
「じゃあ、隊長、そろそろお互い、本気出してやり合うとしようか。3分経過するごとに人質はひとりずつ殺してくってことで、ルールと時間厳守で了解してちょうだいねっと!」
リュークをリズたちのほうへ突き飛ばしたラーザは、扉が開け放たれていた小型機に飛び乗った。そこから振り向きざま、構えたバズーカを発射する。砲弾のかわりに網が発射され、瞬く間に空中でひろがったそれは、3人の人質に覆いかぶさった。そのさまを見届けるまもなく、ラーザは投網銃を投げ捨てる。素早く持ち替えた機関銃を構えると、今度はシリルめがけてトリガーを引いた。
床を蹴ったシリルが、散乱する瓦礫の向こう側へと飛びこむ。追いかけたラーザは、容赦なくシリルを狙い撃ちにした。
「ほぉらほらっ、逃げてばっかだと、あっという間に3分のリミット過ぎちゃうぜっ」
ラーザは愉しげに揶揄した。
物が散乱する霊廟内を、ふたりの男たちは縦横に移動する。丸腰のシリルは、調度品や石像、石棺など、片っ端から武器や楯になりそうな物を見繕ってはラーザに反撃し、あるいは攻撃を躱した。
「あと2ふ~ん!」
焦燥を煽るようにラーザがカウントする。
「さぁて、まずひとりめは、どいつに犠牲になってもらうかな。精神的ダメージがいちばんデカそうなお人形は最後に残しとくとして、ジジイが先か、女が先か」
謳うようなラーザのセリフを聞き流し、シリルは足もとに落ちていたシャンデリアの鎖を掴むと、力任せに振るった。重厚な照明器具が遠心力を伴って強烈な破壊力を生み出し、ラーザに襲いかかる。かろうじてよけた先で瓦礫に躓いた男は、バランスを崩して蹈鞴を踏んだ。その一瞬の隙を、シリルは逃さなかった。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
斧で逝く
ICMZ
SF
仕事なんて大嫌いだ―――
ああ 癒しが必要だ
そんな時 満員電車の中で目にしたビデオ広告 VRMMORPG
ランドロンドオンライン やってみるかなーー
使うのは個人的に思い入れがある斧を武器としたキャラ
しかし 斧はネタ武器であり 明らかに弱くてバグってて
その上 LV上の奴からPKくらったり 強敵と戦ったり
一難さってもまた一難
それでも俺にはゲーム、漫画、映画の知識がある、知恵がある
人生経験者という名の おっさん なめんなーー
どんどん 明後日の方向にいく サクセス ストーリー
味付け | 甘め
ゲーム世界 | ファンタジー
ゲーム内 環境 | フレンドリー アプデ有(頻繁)
バーサス | PVE,PVP
ゲーマスと運営 | フレンドリー
比率 ゲーム:リアル | 8:2
プレイスタイル | 命は大事だんべ
キーワード | パンツ カニ 酎ハイ
でぃすくれいまー
ヒロイン出てから本番です
なろう/カクヨム/ノベルUpでも掲載しています
この小説はスペースを多用しています
てにをが句読点を入れれば読みやすくなるんですが、
会話がメインとなってくる物で
その会話の中で てにをが をちゃんと使いこなしている人、
人生で2人しか出会っていません
またイントネーション、文章にすると難しすぎます
あえてカタカナや→などをつかったりしたのですが
読むに堪えない物になってしまったので
解決するための苦肉の策がスペースです
読みやすくするため、強調する為、一拍入れている
それらの解釈は読み手側にお任せします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる