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第13章 戦闘
第5話(2)
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駆けつけた近衛兵の手で、シリルはすぐさま引き上げられる。兵士のひとりに無事を確認されたが、シリルはそれには答えず、即座に反対側まで走って建物を見下ろした。数階ぶん下の窓ガラスからは白煙が噴き上がっている。屋上の給水タンクの足場部分には専用のワイヤーが巻きつけられており、その先端は、破られている窓ガラスへとつづいていた。
制御室のオクデラによって屋上の出入り口が封鎖されていることを察したラーザは、建物の窓を破って外からの侵入を果たしていた。破られている窓は、中央制御室とおなじ階層。
シリルはただちに合図し、輸送ヘリの高度を下げさせると愛機に飛び乗った。
「リズッ、来い!」
爆音に負けぬよう大声で呼ばわり、強風に煽られながら駆け寄ってきたその腕を掴んで助手席に乗せる。ほぼ同時にエンジンを作動させると、牽引を解除するよう命じた。
ガクンという強い衝撃とともに、強風に煽られたイーグルワンが大きくバランスを崩す。助手席のリズのみならず、周辺にいた王室師団の将兵らの口からも盛大な悲鳴があがった。しかし、シリルはあっさり態勢を立てなおすと愛機を発進させ、瞬く間に屋上をあとにした。
高度な操縦技術により、イーグルワンは危なげなくビルの隙間を縫って飛行する。ほどなく目的の場所に近づくと、先程同様、無駄のないなめらかな動きで中央制御室わきの空間へとおさまった。
「シリル……」
「機内にいろ」
不安げな様子のリズに、言葉少なにそれだけを言い置いてシリルはドアの外に滑り出た。
変わり果てた制御室内には、一帯に白煙が立ちこめ、硝煙と電子機器があちこちでショートして焦げ付く臭いが充満していた。
静まりかえった室内に時折火花が飛び、なにかが弾ける音がする。
「オクデラ」
静かに声をかけると、瓦礫と化した操作卓とパーティションの奥で、人影が動いて軽く咳きこんだ。
「無事か?」
近づいて声をかけたシリルに、王室第1師団長カイ・オクデラ中将は、煤で汚れた顔を上げて頷いた。
「申し訳ありません、お見苦しいところを。怪我人の救護活動と避難路の確保で精一杯でした」
「いや、よくやってくれた」
ねぎらいの言葉をかけ、シリルはあたりを見渡す。その目が、瓦礫の向こうに無人小型機の残骸をとらえた。屋上と階下での攻防により手薄となった隙を狙って、ラーザが差し向けた1機だった。精一杯だったと言いつつ、オクデラが始末したのだろう。
「シリル様、申し訳ありません」
ふたたび謝罪の言葉を口にしたオクデラは、中腰になって腕を伸ばし、まだかろうじて作動しているメイン・システムの操作パネルに指を走らせた。シリルの腕で、直後に通信機がデータを受信する。
「科学開発技術省の技術者らが、『鍵』の洗脳の解除に成功したようです」
シリルはハッとして、部屋の一角を見やった。白煙が漂い、視界がいまだ利きづらい中、これだけの惨状をきたしている制御室内で、ただ1箇所だけ、不自然なまでに被害を免れている箇所があった。その周辺を取り囲んでいたはずのクリスタル合板でできたシャッターは消えていた。
制御室のオクデラによって屋上の出入り口が封鎖されていることを察したラーザは、建物の窓を破って外からの侵入を果たしていた。破られている窓は、中央制御室とおなじ階層。
シリルはただちに合図し、輸送ヘリの高度を下げさせると愛機に飛び乗った。
「リズッ、来い!」
爆音に負けぬよう大声で呼ばわり、強風に煽られながら駆け寄ってきたその腕を掴んで助手席に乗せる。ほぼ同時にエンジンを作動させると、牽引を解除するよう命じた。
ガクンという強い衝撃とともに、強風に煽られたイーグルワンが大きくバランスを崩す。助手席のリズのみならず、周辺にいた王室師団の将兵らの口からも盛大な悲鳴があがった。しかし、シリルはあっさり態勢を立てなおすと愛機を発進させ、瞬く間に屋上をあとにした。
高度な操縦技術により、イーグルワンは危なげなくビルの隙間を縫って飛行する。ほどなく目的の場所に近づくと、先程同様、無駄のないなめらかな動きで中央制御室わきの空間へとおさまった。
「シリル……」
「機内にいろ」
不安げな様子のリズに、言葉少なにそれだけを言い置いてシリルはドアの外に滑り出た。
変わり果てた制御室内には、一帯に白煙が立ちこめ、硝煙と電子機器があちこちでショートして焦げ付く臭いが充満していた。
静まりかえった室内に時折火花が飛び、なにかが弾ける音がする。
「オクデラ」
静かに声をかけると、瓦礫と化した操作卓とパーティションの奥で、人影が動いて軽く咳きこんだ。
「無事か?」
近づいて声をかけたシリルに、王室第1師団長カイ・オクデラ中将は、煤で汚れた顔を上げて頷いた。
「申し訳ありません、お見苦しいところを。怪我人の救護活動と避難路の確保で精一杯でした」
「いや、よくやってくれた」
ねぎらいの言葉をかけ、シリルはあたりを見渡す。その目が、瓦礫の向こうに無人小型機の残骸をとらえた。屋上と階下での攻防により手薄となった隙を狙って、ラーザが差し向けた1機だった。精一杯だったと言いつつ、オクデラが始末したのだろう。
「シリル様、申し訳ありません」
ふたたび謝罪の言葉を口にしたオクデラは、中腰になって腕を伸ばし、まだかろうじて作動しているメイン・システムの操作パネルに指を走らせた。シリルの腕で、直後に通信機がデータを受信する。
「科学開発技術省の技術者らが、『鍵』の洗脳の解除に成功したようです」
シリルはハッとして、部屋の一角を見やった。白煙が漂い、視界がいまだ利きづらい中、これだけの惨状をきたしている制御室内で、ただ1箇所だけ、不自然なまでに被害を免れている箇所があった。その周辺を取り囲んでいたはずのクリスタル合板でできたシャッターは消えていた。
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