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第13章 戦闘
第5話(1)
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屋上に出たラーザは、人質の躰に己を密着させることで敵の攻撃を姑息に回避した。その目の前に、シリルが歩み出る。それを見たラーザの口許に、獰猛な笑みが閃いた。
「カッコイイねえ。正義のヒーローのお出ましってか? 後ろにいっぱい子分たち従えちゃってよ」
言いながら、リズのこめかみにピタリと銃口を押しあてた。蒼い顔で慄えながらも、リズはシリルの目顔での合図を受け止めて、無言でじっとしていた。
「涼しい顔しちゃってまあ。俺がなんで屋上選んだのか、全部お見通しって感じだよね、ヴァーノン隊長」
言うそばから、複数のエンジン音が聞こえてくる。見る間に近づいてきたそれらは、ビア・セキュリティ所有の無人小型機だった。
赤外線誘導型の軽機関銃と敵味方識別装置を搭載したそれらが、目標物であるシリルや近衛兵らに狙いを定める。同時に聞こえた、あたり一帯を覆い尽くす爆音と風圧。シリルの命令により、イーグルワンを牽引したローレンシア空軍の輸送ヘリが登場し、その風圧をもって民間軍の無人小型機を翻弄した。
――やはりそう来るか。
強風に煽られた無人機は、互いに接触し、あるいは大きくバランスを崩したまま銃を乱射する。王室師団の精鋭らが、それらを1機ずつ潰していった。そのさまを見ながら、ラーザは内心でニヤリとした。
イーグルワンを用意させている時点で、このあとのラーザがどう動くかをシリルは見切っていることになる。むしろ、そうでなければおもしろくなかった。
案の定、シリルの表情がわずかに変化した。その変化の意味は、中央制御室から入った連絡であることは間違いなかった。じつにいいタイミングで強風に大きく煽られ、バランスを崩した無人機のひとつが、制御を失って回転しながら無差別に機関銃を乱射した。シリルがその1機の始末にかかったほんの一瞬の隙を見て、ラーザは動いた。
リズの口から悲鳴があがる。
無人機を撃ち落としたシリルは、振り返りざま地を蹴って屋上の向こう側へと消えていくリズに腕を伸ばした。ギリギリで掴んだその手首を、目一杯勢いよく手前に引いて、中空に投げ出されたリズの躰を屋上内へと放りこむ。反動で、シリルの躰は屋上の外へ飛び出した。
「シリルッ!!」
咄嗟に伸ばした手が、建物のヘリを掴む。直後に自身の全体重が一気に両腕にかかって腹部と腕、背中の銃創を直撃し、シリルは顔を蹙めた。その瞬間、爆発音が響いて、建物伝いに激しい震動を感知した。
「カッコイイねえ。正義のヒーローのお出ましってか? 後ろにいっぱい子分たち従えちゃってよ」
言いながら、リズのこめかみにピタリと銃口を押しあてた。蒼い顔で慄えながらも、リズはシリルの目顔での合図を受け止めて、無言でじっとしていた。
「涼しい顔しちゃってまあ。俺がなんで屋上選んだのか、全部お見通しって感じだよね、ヴァーノン隊長」
言うそばから、複数のエンジン音が聞こえてくる。見る間に近づいてきたそれらは、ビア・セキュリティ所有の無人小型機だった。
赤外線誘導型の軽機関銃と敵味方識別装置を搭載したそれらが、目標物であるシリルや近衛兵らに狙いを定める。同時に聞こえた、あたり一帯を覆い尽くす爆音と風圧。シリルの命令により、イーグルワンを牽引したローレンシア空軍の輸送ヘリが登場し、その風圧をもって民間軍の無人小型機を翻弄した。
――やはりそう来るか。
強風に煽られた無人機は、互いに接触し、あるいは大きくバランスを崩したまま銃を乱射する。王室師団の精鋭らが、それらを1機ずつ潰していった。そのさまを見ながら、ラーザは内心でニヤリとした。
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案の定、シリルの表情がわずかに変化した。その変化の意味は、中央制御室から入った連絡であることは間違いなかった。じつにいいタイミングで強風に大きく煽られ、バランスを崩した無人機のひとつが、制御を失って回転しながら無差別に機関銃を乱射した。シリルがその1機の始末にかかったほんの一瞬の隙を見て、ラーザは動いた。
リズの口から悲鳴があがる。
無人機を撃ち落としたシリルは、振り返りざま地を蹴って屋上の向こう側へと消えていくリズに腕を伸ばした。ギリギリで掴んだその手首を、目一杯勢いよく手前に引いて、中空に投げ出されたリズの躰を屋上内へと放りこむ。反動で、シリルの躰は屋上の外へ飛び出した。
「シリルッ!!」
咄嗟に伸ばした手が、建物のヘリを掴む。直後に自身の全体重が一気に両腕にかかって腹部と腕、背中の銃創を直撃し、シリルは顔を蹙めた。その瞬間、爆発音が響いて、建物伝いに激しい震動を感知した。
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