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第13章 戦闘
第3話(6)
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あちこちで呻き声があがる室内で、さらに甲高い悲鳴があがる。狙われたのはリズだった。
焦点が合わず、眩む視界の隅で、ひとつの影が小柄な別の影を抱え上げる。傍らのマティアスらしき人影がそれを阻止しようとするも、瞬く間に撃たれて床に沈み、動かなくなった。
閃光に眼を灼かれて悶絶する将兵らのあいだを縫って、リズを抱えたラーザがあっという間に制御室内から姿を消した。徐々に視界が戻る中、シリルは素早く部屋を横切ると、マティアスの許に足を運んだ。
倒れた巨体に手をかけ、呼びかける。マティアスはわずかに呻いて身じろぎをした。
「無事か?」
「兄ィ、すんません。お嬢さんが……」
「いい、気にするな。あとは俺がカタをつける。救護班を呼ぶから、もう少し堪えてくれ」
撃たれた腹部の怪我の度合いを確認しながら、シリルは声をかけた。
「オレなら大丈夫でさ。早く行ってやってください」
頷くシリルのインカムに、ブラッドリーから通信が入った。
「いましがた、ハン長官から入電が。グライナー博士より科学開発技術省あてに王室管理局内で扱っていた医療データが送信されたとのことです。これよりただちに、人工知能の専門部署で解析にかけ、『鍵』に施されている洗脳を解除するとのことでした」
「わかった。俺は人質の救出に向かう。怪我人が出てる。制御室に救護班を頼む」
「すでに向かっております。レギオス・ラーザのほうにも別働隊を向かわせました」
了承して通話を切ろうとしたシリルの許へ、閃光にやられた目を眇めながらオクデラ中将が近づいてきた。
「庁舎内の防犯システムの操作は小官が」
「大丈夫か?」
「問題ありません。視界もだいぶ良好に」
「わかった。頼む」
頷いたシリルに、オクデラは敬礼で応えた。身を翻したシリルのインカムに、通信司令部からの報告が入った。
「別働隊より報告。敵、南棟18階、北西方向へ逃走中とのことです」
脳内で館内見取図を展開させ、最短距離を弾き出したシリルは、廊下を疾走しながらオペレーターに命じた。
「輸送ヘリ1機出動。イーグルを牽引して西棟上空で待機!」
「了解」
通信が切れると同時にシリルはその速度を上げ、階上へと足を向けた。
焦点が合わず、眩む視界の隅で、ひとつの影が小柄な別の影を抱え上げる。傍らのマティアスらしき人影がそれを阻止しようとするも、瞬く間に撃たれて床に沈み、動かなくなった。
閃光に眼を灼かれて悶絶する将兵らのあいだを縫って、リズを抱えたラーザがあっという間に制御室内から姿を消した。徐々に視界が戻る中、シリルは素早く部屋を横切ると、マティアスの許に足を運んだ。
倒れた巨体に手をかけ、呼びかける。マティアスはわずかに呻いて身じろぎをした。
「無事か?」
「兄ィ、すんません。お嬢さんが……」
「いい、気にするな。あとは俺がカタをつける。救護班を呼ぶから、もう少し堪えてくれ」
撃たれた腹部の怪我の度合いを確認しながら、シリルは声をかけた。
「オレなら大丈夫でさ。早く行ってやってください」
頷くシリルのインカムに、ブラッドリーから通信が入った。
「いましがた、ハン長官から入電が。グライナー博士より科学開発技術省あてに王室管理局内で扱っていた医療データが送信されたとのことです。これよりただちに、人工知能の専門部署で解析にかけ、『鍵』に施されている洗脳を解除するとのことでした」
「わかった。俺は人質の救出に向かう。怪我人が出てる。制御室に救護班を頼む」
「すでに向かっております。レギオス・ラーザのほうにも別働隊を向かわせました」
了承して通話を切ろうとしたシリルの許へ、閃光にやられた目を眇めながらオクデラ中将が近づいてきた。
「庁舎内の防犯システムの操作は小官が」
「大丈夫か?」
「問題ありません。視界もだいぶ良好に」
「わかった。頼む」
頷いたシリルに、オクデラは敬礼で応えた。身を翻したシリルのインカムに、通信司令部からの報告が入った。
「別働隊より報告。敵、南棟18階、北西方向へ逃走中とのことです」
脳内で館内見取図を展開させ、最短距離を弾き出したシリルは、廊下を疾走しながらオペレーターに命じた。
「輸送ヘリ1機出動。イーグルを牽引して西棟上空で待機!」
「了解」
通信が切れると同時にシリルはその速度を上げ、階上へと足を向けた。
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