上 下
141 / 161
第13章 戦闘

第3話(5)

しおりを挟む
 愛機から降り立つと、建物の正面部分はもちろんのこと、中央制御室に接する壁面も見事に取り払われていた。爆破に巻きこまれて倒れ伏す民間兵らの姿も散見される。その向こう側に、両腕で顔を庇うように立ち、こちらを見据えるラーザの姿をとらえた。

「兄ィ!」

 シリルの登場に、部屋の奥でリズをガードしていたマティアスが嬉しそうな声をあげた。

「中央制御室の占拠がなんだって?」

 悠然と対峙して言葉を発するシリルを、ラーザは怒りに燃える眼差しで射貫いた。

「き…っさま……っ!」
【なんだ情けない。あんな大言壮語を吐いておきながら、結局はこの程度か】

 クリスタル合板の透過率を上げた強化シャッターの向こう側で、高処たかみの見物を決めこんでいたケネスが嘆かわしそうに揶揄した。ただでさえささくれ立っている神経をさらに逆なでされ、ラーザは激情にまかせて振り向きざま、ケネスの顔面めがけて銃を発砲した。

「うるせえっ!!」

 強化シャッターに当たった銃弾が、勢いよく弾き返される。流れ弾となったそれは、ビア・セキュリティの隊員のひとりの頭部を貫いた。己の所行で味方の生命を奪っておきながら、ラーザは運悪く犠牲となった隊員の無様な死にように、冷酷な一瞥を投げつけていまいましげに舌打ちした。

自分テメエじゃなんもやらねえくせしやがって、安全な場所で偉そうなことほざいてんじゃねえよっ!」

 吐き捨てながらも、爛々と光る眼差しはシリルに据えられていた。その目に、不意に獰猛な光が宿った。刹那、シリルはその場にいた全員に鋭く命じた。


「伏せろっ!」


 突如、部屋全体に、とてつもない明るさの閃光が弾けた。
 反射的に目を固く閉じてみずからの腕でガードしたシリルでさえ瞼裏に強い刺激を受け、しばし身動きを封じられた。室内にいた他の者たちも同様で、わずかに反応が遅れた者は網膜を灼かれ、完全に視界を奪われることとなった。イーグルワンの背後に身をひそめて突入のタイミングを計っていたオクデラたちでさえ、出力を最大にした閃光弾の魔の手から逃れることはできなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

筋肉少女まりあ★マッスル 全力全開!

謎の人
SF
元気いっぱい恋する乙女の小学5年生 安部まりあ。 ある日突然彼女の前に現れたのは、願いを叶える魔獣『かがみん』だった。 まりあは、幼馴染である秋月灯夜との恋の成就を願い、魔力を授かり魔法少女となる決意を固める。 しかし、その願いは聞き届けられなかった。 彼への恋心は偽りのものだと看破され、失意の底に沈んだまりあは、ふとある日のことを思い出す。 夏休み初日、プールで溺れたまりあを助けてくれた、灯夜の優しさと逞しい筋肉。 そして気付いた。 抱いた気持ちは恋慕ではなく、筋肉への純粋な憧れであることに。 己の願いに気付いたまりあは覚醒し、魔法少女へと変身を遂げる。 いつの日か雄々しく美しい肉体を手に入れるため、日夜筋トレに励む少女の魔法に満ち溢れた日常が、今幕を開ける―――。 *小説家になろうでも投稿しています。 https://ncode.syosetu.com/n0925ff/

【完結】異世界召喚されたらロボットの電池でした

ちありや
SF
夢でリクルートされた俺は巨大ロボットのパイロットになる事になった。 ところがいざ召喚されてみれば、パイロットでは無くて燃料電池扱いらしい。 こんな胡散臭い世界に居られるか! 俺は帰る!! え? 帰れない? え? この美少女が俺のパイロット? う~ん、どうしようかな…? スチャラカロボとマジメ少女の大冒険(?) バンカラアネゴや頭のおかしいハカセ、メンタルの弱いAIなんかも入り混じって、何ともカオスなロボットSF! コメディタッチで送ります。 終盤の戦闘でやや残酷な描写があります。

人事部キャリアデザイン課 係長補佐EMA

ブックリーマン
SF
労働力不足解消に向けてヒューマノイド実用化に向けた実証実験が行われる。ネクスト社新入社員育成係に試験的投入された。しかし、その実験は前途多難。ヒューマノイドと新入社員、それを取り巻く人達が繰り広げる物語。

運び屋 青木瞬介の日常

水月美都(Mizuki_mitu)
キャラ文芸
耳慣れた着信音が鳴って、俺の意識は急速に覚醒した。007のテーマが鳴り響き、二日酔いの頭がぐるぐる回る。 「はい。こちら迅速、安心、確実が……」 『お題目は良い、仕事だ』 法に触れない仕事が信条のトランスポーターstory

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
  脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

非武装連帯!ストロベリー・アーマメンツ!!

林檎黙示録
SF
――いつか誰かが罵って言った。連合の防衛白書を丸かじりする非武装保守派の甘い考えを『ストロベリー・アーマメント』と―― 星の名とも地域の名とも判然としないスカラボウルと呼ばれる土地では、クラック虫という破裂する虫が辺りをおおって煙を吐き出す虫霧現象により、視界もままならなかった。しかしこのクラック虫と呼ばれる虫がエネルギーとして有効であることがわかると、それを利用した<バグモーティヴ>と名付けられる発動機が開発され、人々の生活全般を支える原動力となっていく。そして主にそれは乗用人型二足歩行メカ<クラックウォーカー>として多く生産されて、この土地のテラフォーミング事業のための開拓推進のシンボルとなっていった。  主人公ウメコはクラックウォーカーを繰って、この土地のエネルギー補給のための虫捕りを労務とする<捕虫労>という身分だ。捕虫労組合に所属する捕虫班<レモンドロップスiii>の班員として、ノルマに明け暮れる毎日だった。

A or B

kkkkk
SF
学校の教室でやった遊びを思い出して書きました。 SF+ヒューマンドラマ+ミステリーの構成にしています。 全5話の短編なので、よければご覧ください。

処理中です...