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第13章 戦闘
第3話(1)
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イーグルワンが追撃部隊に加わって15分。王都の官庁街に散った人型兵器残り4体のうち、3体までが仕留められた。建ち並ぶ高層ビルの隙間を危うげなく愛機を駆り、ローレンシア軍と連係して瞬く間に追いこんだ2体を仕留めたシリルの手腕は、通信司令部を通じて空陸両軍に伝わり、エリート精鋭部隊を唸らせた。
残り1体。王室管理局にほど近い1区に向かったシリルは、装甲兵、機甲部隊、空挺部隊を的確に指示して包囲網の奥へとヒューマノイドを追いこみ、最後の1体に向け、イーグルワン備えつけの軽機関銃の照準を定めた。
これでラスト。
指先に力をこめようとしたシリルは不意に、全身の毛が逆立つような感覚をおぼえて反射的に操縦桿を返した。機体ギリギリのラインを掠ったミサイルが、眼前の建物の屋上に設置されていた貯水タンクを破砕する。
機首をめぐらせた先に、民間の戦闘用小型機の姿が映った。
「お~っと、さすが! やっぱ不意打ちは通用しねえか」
「ラーザッ、貴様…っ」
歯噛みしたものの、まさか街中でミサイルを撃ち合うわけにもいかない。手段を選ばない相手だけに、被害を最小限にくい止める方向でなんとかカタをつけなければならなかった。さすがのシリルも、すぐには手を出しかねて反撃を逡巡する。
と、眼前の小型機が、唐突に機首を返した。眼下に目を向けると、最後の1体はすでに、王室師団が処理にあたっている。任せて問題なしと即断したシリルは、迷わず民間機のあとを追った。機体が向かったのは、王室管理局庁舎の方角だった。
機体の角度、スピード、建物との距離。
ひどく、嫌な予感がした。
――まさか……。
操縦桿を握る手に汗が滲んだ。
「もうさあ、面倒くせえから、あんたの大事なモン道連れってことでケリつけちまおうぜ」
狂気を孕んだ渇いた声が機内に響いた。
「中央制御室って何階だったっけか? 15? 17?」
「待てっ、ラーザッ!」
「あの可愛いお人形ちゃん、まぁだあの部屋の一角に閉じこめられてんだよな? あんたが王様認定されねえかぎり、あそこから出らんねえんだろ? 可哀想になあ。あんなに最後まで必死んなって抵抗しまくってたのによ。ま、いまさらか」
低い声が、不気味に嗤う。
「さぁて、このまま機体ごと建物につっこむか、あるいはミサイルぶっ放すか。あんたにはどっちのが効果的かなぁ。なあ、ヴァーノン隊長?」
「ラーザッ、よせっ!」
叫んだシリルは、すでに制止が利かない場所まで機体が接近していることを看て取った瞬間、チィッと舌打ちをして操縦桿を握りなおした。
「シリル様っ、なにをっ!?」
別の回線からブラッドリーの上擦った声が割りこんでくる。だが、シリルはかまわず愛機を旋回させ、小型機の真横にまわりこむと、その機体めがけてミサイルを発射した。ほぼ同時に、イーグルワンはエアカーから戦闘機へとトランスフォームした。
残り1体。王室管理局にほど近い1区に向かったシリルは、装甲兵、機甲部隊、空挺部隊を的確に指示して包囲網の奥へとヒューマノイドを追いこみ、最後の1体に向け、イーグルワン備えつけの軽機関銃の照準を定めた。
これでラスト。
指先に力をこめようとしたシリルは不意に、全身の毛が逆立つような感覚をおぼえて反射的に操縦桿を返した。機体ギリギリのラインを掠ったミサイルが、眼前の建物の屋上に設置されていた貯水タンクを破砕する。
機首をめぐらせた先に、民間の戦闘用小型機の姿が映った。
「お~っと、さすが! やっぱ不意打ちは通用しねえか」
「ラーザッ、貴様…っ」
歯噛みしたものの、まさか街中でミサイルを撃ち合うわけにもいかない。手段を選ばない相手だけに、被害を最小限にくい止める方向でなんとかカタをつけなければならなかった。さすがのシリルも、すぐには手を出しかねて反撃を逡巡する。
と、眼前の小型機が、唐突に機首を返した。眼下に目を向けると、最後の1体はすでに、王室師団が処理にあたっている。任せて問題なしと即断したシリルは、迷わず民間機のあとを追った。機体が向かったのは、王室管理局庁舎の方角だった。
機体の角度、スピード、建物との距離。
ひどく、嫌な予感がした。
――まさか……。
操縦桿を握る手に汗が滲んだ。
「もうさあ、面倒くせえから、あんたの大事なモン道連れってことでケリつけちまおうぜ」
狂気を孕んだ渇いた声が機内に響いた。
「中央制御室って何階だったっけか? 15? 17?」
「待てっ、ラーザッ!」
「あの可愛いお人形ちゃん、まぁだあの部屋の一角に閉じこめられてんだよな? あんたが王様認定されねえかぎり、あそこから出らんねえんだろ? 可哀想になあ。あんなに最後まで必死んなって抵抗しまくってたのによ。ま、いまさらか」
低い声が、不気味に嗤う。
「さぁて、このまま機体ごと建物につっこむか、あるいはミサイルぶっ放すか。あんたにはどっちのが効果的かなぁ。なあ、ヴァーノン隊長?」
「ラーザッ、よせっ!」
叫んだシリルは、すでに制止が利かない場所まで機体が接近していることを看て取った瞬間、チィッと舌打ちをして操縦桿を握りなおした。
「シリル様っ、なにをっ!?」
別の回線からブラッドリーの上擦った声が割りこんでくる。だが、シリルはかまわず愛機を旋回させ、小型機の真横にまわりこむと、その機体めがけてミサイルを発射した。ほぼ同時に、イーグルワンはエアカーから戦闘機へとトランスフォームした。
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