127 / 161
第12章 洗脳
第3話(4)
しおりを挟む
「他人の築いた地位をそのまま横取りするように引き継いで、それでおまえは満足か? 手っ取り早く、すでに体制が整えられているものをそっくりもらい受けるというのなら、せめて手に入れるぐらいのことは自力でしたらどうだ」
「生憎、そんな無駄な労力に時間を割くほど暇ではない。自分の力で成し遂げたことに満足して、自己陶酔するほど幼稚でもな。利用できるものは利用し尽くす。そうして手に入れたものも実力のうちだ」
答えたあとで、ケネスは入り口でマティアスに捕らえられたままのハロネンに声をかけた。
「無様な醜態を曝しているが、するべきことは、きちんと済ませたんだろうな?」
「む、むろんでございます。ただ、医療スタッフのほうが……」
「かまわん。賭に出れば、不要となる可能性のほうが高い。ハロネン、あの一瞬での判断にしては上出来だった」
「恐れ入ります」
「事が叶ったあかつきには、おまえの家族は悪いようにはしない。相応に報いるとしよう」
「ありがたき幸せでございます」
不穏な会話の流れに気づいたシリルが、咄嗟にリュークを腕の中に庇い、周囲に注意を向ける。直後、部屋の外でこちらに向かって近づいてくる複数の足音と喚声、銃声音が響いた。
「シリル様っ!」
最初に飛びこんできたのは、第1師団長のオクデラであった。
警備も兼ね、中央制御室エリアの外での待機をシリルに命じられていた。王室師団の中でも、もっとも傍近くで王を警固する精鋭中の精鋭たちをまとめ上げ、指揮する男である。不測の事態の対応にも慣れ、適確に処理する能力にも長けているはずだった。だが、その実戦部隊の長が激しく取り乱していた。
「申し訳ありませんっ! 化け物が――いえっ、ヒューマノイドが……っ」
「なにっ?」
「あ、いえっ、とにかく逃げてくださいっ! ここは我々がっ」
「落ち着け! なにがあった?」
一喝されて、いくぶん平静さを取り戻したオクデラ中将は、声を上擦らせつつも居ずまいを正してシリルと相対した。
「失礼いたしました。戦闘型ヒューマノイドによる急襲です。我々がくい止めますので、シリル様はいまのうちにお逃げください! 援護は小官が」
「手遅れのようだな」
シリルの呟きに、オクデラはギョッとして出入り口を振り返った。同時に、ふたりの団員が、なにかに弾き飛ばされたように廊下から室内に向かって吹っ飛んだ。両者はともに、手近の操作卓や椅子に叩きつけられた。数瞬遅れて、のっぺりとした無表情の戦闘員が戸口に佇む。その背後にも、おなじ服装の戦闘員の姿が複数見えた。あれがオクデラの言う、戦闘型ヒューマノイドだろう。
見た瞬間に、戦闘に特化した彼らの身体能力が、生身の人間とは比べものにならないことをシリルは看取した。
「生憎、そんな無駄な労力に時間を割くほど暇ではない。自分の力で成し遂げたことに満足して、自己陶酔するほど幼稚でもな。利用できるものは利用し尽くす。そうして手に入れたものも実力のうちだ」
答えたあとで、ケネスは入り口でマティアスに捕らえられたままのハロネンに声をかけた。
「無様な醜態を曝しているが、するべきことは、きちんと済ませたんだろうな?」
「む、むろんでございます。ただ、医療スタッフのほうが……」
「かまわん。賭に出れば、不要となる可能性のほうが高い。ハロネン、あの一瞬での判断にしては上出来だった」
「恐れ入ります」
「事が叶ったあかつきには、おまえの家族は悪いようにはしない。相応に報いるとしよう」
「ありがたき幸せでございます」
不穏な会話の流れに気づいたシリルが、咄嗟にリュークを腕の中に庇い、周囲に注意を向ける。直後、部屋の外でこちらに向かって近づいてくる複数の足音と喚声、銃声音が響いた。
「シリル様っ!」
最初に飛びこんできたのは、第1師団長のオクデラであった。
警備も兼ね、中央制御室エリアの外での待機をシリルに命じられていた。王室師団の中でも、もっとも傍近くで王を警固する精鋭中の精鋭たちをまとめ上げ、指揮する男である。不測の事態の対応にも慣れ、適確に処理する能力にも長けているはずだった。だが、その実戦部隊の長が激しく取り乱していた。
「申し訳ありませんっ! 化け物が――いえっ、ヒューマノイドが……っ」
「なにっ?」
「あ、いえっ、とにかく逃げてくださいっ! ここは我々がっ」
「落ち着け! なにがあった?」
一喝されて、いくぶん平静さを取り戻したオクデラ中将は、声を上擦らせつつも居ずまいを正してシリルと相対した。
「失礼いたしました。戦闘型ヒューマノイドによる急襲です。我々がくい止めますので、シリル様はいまのうちにお逃げください! 援護は小官が」
「手遅れのようだな」
シリルの呟きに、オクデラはギョッとして出入り口を振り返った。同時に、ふたりの団員が、なにかに弾き飛ばされたように廊下から室内に向かって吹っ飛んだ。両者はともに、手近の操作卓や椅子に叩きつけられた。数瞬遅れて、のっぺりとした無表情の戦闘員が戸口に佇む。その背後にも、おなじ服装の戦闘員の姿が複数見えた。あれがオクデラの言う、戦闘型ヒューマノイドだろう。
見た瞬間に、戦闘に特化した彼らの身体能力が、生身の人間とは比べものにならないことをシリルは看取した。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す。
独裁国家が民主国家を数で上回っている現代だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を、民を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
【最終章 西上作戦】 武田家を滅ぼす策略に抗うべく、信長と家康打倒を決断す
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる