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第12章 洗脳
第3話(4)
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「他人の築いた地位をそのまま横取りするように引き継いで、それでおまえは満足か? 手っ取り早く、すでに体制が整えられているものをそっくりもらい受けるというのなら、せめて手に入れるぐらいのことは自力でしたらどうだ」
「生憎、そんな無駄な労力に時間を割くほど暇ではない。自分の力で成し遂げたことに満足して、自己陶酔するほど幼稚でもな。利用できるものは利用し尽くす。そうして手に入れたものも実力のうちだ」
答えたあとで、ケネスは入り口でマティアスに捕らえられたままのハロネンに声をかけた。
「無様な醜態を曝しているが、するべきことは、きちんと済ませたんだろうな?」
「む、むろんでございます。ただ、医療スタッフのほうが……」
「かまわん。賭に出れば、不要となる可能性のほうが高い。ハロネン、あの一瞬での判断にしては上出来だった」
「恐れ入ります」
「事が叶ったあかつきには、おまえの家族は悪いようにはしない。相応に報いるとしよう」
「ありがたき幸せでございます」
不穏な会話の流れに気づいたシリルが、咄嗟にリュークを腕の中に庇い、周囲に注意を向ける。直後、部屋の外でこちらに向かって近づいてくる複数の足音と喚声、銃声音が響いた。
「シリル様っ!」
最初に飛びこんできたのは、第1師団長のオクデラであった。
警備も兼ね、中央制御室エリアの外での待機をシリルに命じられていた。王室師団の中でも、もっとも傍近くで王を警固する精鋭中の精鋭たちをまとめ上げ、指揮する男である。不測の事態の対応にも慣れ、適確に処理する能力にも長けているはずだった。だが、その実戦部隊の長が激しく取り乱していた。
「申し訳ありませんっ! 化け物が――いえっ、ヒューマノイドが……っ」
「なにっ?」
「あ、いえっ、とにかく逃げてくださいっ! ここは我々がっ」
「落ち着け! なにがあった?」
一喝されて、いくぶん平静さを取り戻したオクデラ中将は、声を上擦らせつつも居ずまいを正してシリルと相対した。
「失礼いたしました。戦闘型ヒューマノイドによる急襲です。我々がくい止めますので、シリル様はいまのうちにお逃げください! 援護は小官が」
「手遅れのようだな」
シリルの呟きに、オクデラはギョッとして出入り口を振り返った。同時に、ふたりの団員が、なにかに弾き飛ばされたように廊下から室内に向かって吹っ飛んだ。両者はともに、手近の操作卓や椅子に叩きつけられた。数瞬遅れて、のっぺりとした無表情の戦闘員が戸口に佇む。その背後にも、おなじ服装の戦闘員の姿が複数見えた。あれがオクデラの言う、戦闘型ヒューマノイドだろう。
見た瞬間に、戦闘に特化した彼らの身体能力が、生身の人間とは比べものにならないことをシリルは看取した。
「生憎、そんな無駄な労力に時間を割くほど暇ではない。自分の力で成し遂げたことに満足して、自己陶酔するほど幼稚でもな。利用できるものは利用し尽くす。そうして手に入れたものも実力のうちだ」
答えたあとで、ケネスは入り口でマティアスに捕らえられたままのハロネンに声をかけた。
「無様な醜態を曝しているが、するべきことは、きちんと済ませたんだろうな?」
「む、むろんでございます。ただ、医療スタッフのほうが……」
「かまわん。賭に出れば、不要となる可能性のほうが高い。ハロネン、あの一瞬での判断にしては上出来だった」
「恐れ入ります」
「事が叶ったあかつきには、おまえの家族は悪いようにはしない。相応に報いるとしよう」
「ありがたき幸せでございます」
不穏な会話の流れに気づいたシリルが、咄嗟にリュークを腕の中に庇い、周囲に注意を向ける。直後、部屋の外でこちらに向かって近づいてくる複数の足音と喚声、銃声音が響いた。
「シリル様っ!」
最初に飛びこんできたのは、第1師団長のオクデラであった。
警備も兼ね、中央制御室エリアの外での待機をシリルに命じられていた。王室師団の中でも、もっとも傍近くで王を警固する精鋭中の精鋭たちをまとめ上げ、指揮する男である。不測の事態の対応にも慣れ、適確に処理する能力にも長けているはずだった。だが、その実戦部隊の長が激しく取り乱していた。
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「なにっ?」
「あ、いえっ、とにかく逃げてくださいっ! ここは我々がっ」
「落ち着け! なにがあった?」
一喝されて、いくぶん平静さを取り戻したオクデラ中将は、声を上擦らせつつも居ずまいを正してシリルと相対した。
「失礼いたしました。戦闘型ヒューマノイドによる急襲です。我々がくい止めますので、シリル様はいまのうちにお逃げください! 援護は小官が」
「手遅れのようだな」
シリルの呟きに、オクデラはギョッとして出入り口を振り返った。同時に、ふたりの団員が、なにかに弾き飛ばされたように廊下から室内に向かって吹っ飛んだ。両者はともに、手近の操作卓や椅子に叩きつけられた。数瞬遅れて、のっぺりとした無表情の戦闘員が戸口に佇む。その背後にも、おなじ服装の戦闘員の姿が複数見えた。あれがオクデラの言う、戦闘型ヒューマノイドだろう。
見た瞬間に、戦闘に特化した彼らの身体能力が、生身の人間とは比べものにならないことをシリルは看取した。
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