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第8章 急襲
第3話(5)
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「リュークッ」
振り返ったシリルの目の前で、自分にしがみつくリュークを引き剥がしたラーザが、その躰を勢いよく蹴り飛ばした。華奢な躰が数メートル飛んで地面に叩きつけられる。その頭を、ラーザは黄金の髪ごと乱暴に掴んで引き起こし、先程己がシリルにされたように背後から首に腕をまわして羽交い締めにした。
「……っあ」
かすかに喘いだリュークが、呼吸器機能を切り替えようとする。その両眼が、大きく見開かれた。リュークの眼前で、シリルに肉薄したノエラが襲いかかった。瞬間的に躱したシリルは、その鳩尾に拳を叩きこんだ。男でも確実に仕留められる打撃。にもかかわらず、ノエラは踏みこたえると、チェーンをふるって銃を握るシリルの右手に巻きつけ、尋常でない膂力を発揮して軽々とひと振りした。
遠心の力が加わって躰を持っていかれたシリルは、背中からテントにつっこんだ。
「シリッ、ル……ッ」
「おーっと、暴れるんじゃねえよ。おとなしくイイコにしてな。おまえが呼べば、また気を逸らされて、やられる羽目になるぜ。大好きな奴が、目の前であんな女に嬲り殺しにされてもいいのかよ?」
ラーザの言葉に、その腕から逃れようと必死に抵抗していたリュークの躰がビクッと慄えた。わかりやすい反応を見て、ラーザはククッと喉を鳴らした。
「へえ。おまえみたいな人形でも、懐いた相手に死なれるのは怖いか。可愛い反応だなあ。おまえのまえであいつを嬲り殺しにすんのと、あいつのまえでおまえを嬲り殺しにすんの、どっちがおもしれえのかなあ。……おっといけねえ。おまえは生かしておかなきゃいけねえんだったっけ」
耳もとで不気味に嗤ったラーザは、リュークの顎を掴んで自分のほうに向かせると頬ずりをした。その頬をピタリと押しつけたまま、リュークの顔を力尽くでまえに向かせた。
「ほーら、ちゃんと見ててやれよ。女相手にあいつが無様にやられるさまをよ」
崩れたテントの骨組みの中に躰を埋もれさせたシリルは、低く呻いて身を起こそうとした。しかし、ふたたびチェーンによって強引に引っ張られ、数メートル手前の地面に這い蹲った。
ノエラはしなやかな動きで手首を操って、相手の腕に巻きつけていたチェーンをはずす。その先端を、躊躇なくシリルの背中めがけて打ち下ろした。
「うあっ」
「シリルッ」
小さく悲鳴を放ったリュークを羽交い締めにしたまま、ラーザはけたたましい笑声を放った。
「おお~、スゲエスゲエ! カッコイイ! 色男は鞭打たれる姿もサマになるねえ。どうだよ、愛した女にヤられる気分はよ。もっと色っぽく打たれまくって愉しませてちょうだいよ、隊長!」
ラーザが言う間にふたたび振り上げられ、打ち下ろされたチェーンを、シリルは瞬間的に伸ばした腕に絡めさせて受け止めた。絡まったチェーンをはずそうとノエラが引く力に合わせて立ち上がる。足もとに、腹部の傷口から流れた血がパタパタと零れ落ちた。
振り返ったシリルの目の前で、自分にしがみつくリュークを引き剥がしたラーザが、その躰を勢いよく蹴り飛ばした。華奢な躰が数メートル飛んで地面に叩きつけられる。その頭を、ラーザは黄金の髪ごと乱暴に掴んで引き起こし、先程己がシリルにされたように背後から首に腕をまわして羽交い締めにした。
「……っあ」
かすかに喘いだリュークが、呼吸器機能を切り替えようとする。その両眼が、大きく見開かれた。リュークの眼前で、シリルに肉薄したノエラが襲いかかった。瞬間的に躱したシリルは、その鳩尾に拳を叩きこんだ。男でも確実に仕留められる打撃。にもかかわらず、ノエラは踏みこたえると、チェーンをふるって銃を握るシリルの右手に巻きつけ、尋常でない膂力を発揮して軽々とひと振りした。
遠心の力が加わって躰を持っていかれたシリルは、背中からテントにつっこんだ。
「シリッ、ル……ッ」
「おーっと、暴れるんじゃねえよ。おとなしくイイコにしてな。おまえが呼べば、また気を逸らされて、やられる羽目になるぜ。大好きな奴が、目の前であんな女に嬲り殺しにされてもいいのかよ?」
ラーザの言葉に、その腕から逃れようと必死に抵抗していたリュークの躰がビクッと慄えた。わかりやすい反応を見て、ラーザはククッと喉を鳴らした。
「へえ。おまえみたいな人形でも、懐いた相手に死なれるのは怖いか。可愛い反応だなあ。おまえのまえであいつを嬲り殺しにすんのと、あいつのまえでおまえを嬲り殺しにすんの、どっちがおもしれえのかなあ。……おっといけねえ。おまえは生かしておかなきゃいけねえんだったっけ」
耳もとで不気味に嗤ったラーザは、リュークの顎を掴んで自分のほうに向かせると頬ずりをした。その頬をピタリと押しつけたまま、リュークの顔を力尽くでまえに向かせた。
「ほーら、ちゃんと見ててやれよ。女相手にあいつが無様にやられるさまをよ」
崩れたテントの骨組みの中に躰を埋もれさせたシリルは、低く呻いて身を起こそうとした。しかし、ふたたびチェーンによって強引に引っ張られ、数メートル手前の地面に這い蹲った。
ノエラはしなやかな動きで手首を操って、相手の腕に巻きつけていたチェーンをはずす。その先端を、躊躇なくシリルの背中めがけて打ち下ろした。
「うあっ」
「シリルッ」
小さく悲鳴を放ったリュークを羽交い締めにしたまま、ラーザはけたたましい笑声を放った。
「おお~、スゲエスゲエ! カッコイイ! 色男は鞭打たれる姿もサマになるねえ。どうだよ、愛した女にヤられる気分はよ。もっと色っぽく打たれまくって愉しませてちょうだいよ、隊長!」
ラーザが言う間にふたたび振り上げられ、打ち下ろされたチェーンを、シリルは瞬間的に伸ばした腕に絡めさせて受け止めた。絡まったチェーンをはずそうとノエラが引く力に合わせて立ち上がる。足もとに、腹部の傷口から流れた血がパタパタと零れ落ちた。
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