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第5章 夢を売る街
第3話(4)
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リュークの様子を見ながら、途中小休止も入れるなどして歩きまわること数時間。通りすがりの出店で綿菓子を購入したあとに、シリルはキャップをかぶる頭にポンと手を置いた。
「ちょっと無理をさせたな。あと1箇所、付き合えるか?」
訊かれて頷くリュークを、シリルはうながした。すぐそこだと言葉を添えてシリルが向かったのは、テーマパークのほぼ中央に位置する巨大観覧車のまえだった。時刻は0時前。
「毎晩、0時ちょうどに花火が打ち上がるんだそうだ」
「花火?」
「見てればわかる」
コロニーの天井を指さして、シリルは観覧車の列に並んだ。
地上の夜景はもちろん、花火の観賞も前提となっているのだろう。観覧車のゴンドラは、全方位がシースルーの造りになっていた。1周およそ20分。足もとが透けて見えるまま地上から遠ざかって、高所へ運ばれていくことが落ち着かないのか、リュークは手渡された綿菓子の袋を抱えこんだまま、スケルトンの床を凝視していた。
「花火は上だぞ」
からかい口調でシリルが声をかけると、足もとに釘付けになっていた目線がようやく上がる。時間を確認したシリルは、もう一度天井を指さして、まもなくだと伝えた。そのタイミングで、都市全体を輝かせていた照明が最小まで落とされた。
シリルたちの乗ったゴンドラが、ちょうど頂上付近に差しかかるころ――
他の都市にはない特殊な開閉システムにより、コロニーの天井部はいつのまにか大きく口を開けていた。
上空にひろがるのは満天の星空。その濃紺の闇に向け、ひと筋の光が打ち上がった。それは、天頂部まで登りつめたところで力を溜めるように凝縮すると、一瞬の間をおいてパッと弾け散った。
夜空に、巨大な光の華が咲き誇る。
それを皮切りに、色鮮やかな大輪の花が次々に打ち上げられていった。
直前まで足もとばかりに気をとられていたリュークの目が、夜空の花々に釘付けになった。手にした綿菓子の袋は、やはり抱えたままだった。
「ちょっと無理をさせたな。あと1箇所、付き合えるか?」
訊かれて頷くリュークを、シリルはうながした。すぐそこだと言葉を添えてシリルが向かったのは、テーマパークのほぼ中央に位置する巨大観覧車のまえだった。時刻は0時前。
「毎晩、0時ちょうどに花火が打ち上がるんだそうだ」
「花火?」
「見てればわかる」
コロニーの天井を指さして、シリルは観覧車の列に並んだ。
地上の夜景はもちろん、花火の観賞も前提となっているのだろう。観覧車のゴンドラは、全方位がシースルーの造りになっていた。1周およそ20分。足もとが透けて見えるまま地上から遠ざかって、高所へ運ばれていくことが落ち着かないのか、リュークは手渡された綿菓子の袋を抱えこんだまま、スケルトンの床を凝視していた。
「花火は上だぞ」
からかい口調でシリルが声をかけると、足もとに釘付けになっていた目線がようやく上がる。時間を確認したシリルは、もう一度天井を指さして、まもなくだと伝えた。そのタイミングで、都市全体を輝かせていた照明が最小まで落とされた。
シリルたちの乗ったゴンドラが、ちょうど頂上付近に差しかかるころ――
他の都市にはない特殊な開閉システムにより、コロニーの天井部はいつのまにか大きく口を開けていた。
上空にひろがるのは満天の星空。その濃紺の闇に向け、ひと筋の光が打ち上がった。それは、天頂部まで登りつめたところで力を溜めるように凝縮すると、一瞬の間をおいてパッと弾け散った。
夜空に、巨大な光の華が咲き誇る。
それを皮切りに、色鮮やかな大輪の花が次々に打ち上げられていった。
直前まで足もとばかりに気をとられていたリュークの目が、夜空の花々に釘付けになった。手にした綿菓子の袋は、やはり抱えたままだった。
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