11 / 14
6 夢で会いましょう
(2)
しおりを挟む
目を開けると、先程同様、間近からこちらを覗きこむ顔があった。だがそれは、たったいままで一緒だったガキのものではなく、母親のものだった。
「あ……、え? ――あれ……?」
「直之っ!」
目が合った途端、不安げに揺れていた母親の瞳が大きく見開き、直後に顔全体がくしゃりと歪んだ。
――なんだ……?
「直之っ! 直之っ。心配したのよっ。あんたって子はもうっ。よかったっ! ほんとによかった……っ」
肩口に顔をうずめるようにして母親が泣き崩れる。茫然とする目に、白い天井が映った。
白い天井。埋めこまれたカーテンレール。
目に映る光景は、先程とまったく変わらない。
――病院?
戸惑いながら視線を巡らせると、少し離れた位置からやはりこちらを覗きこんでいた父親と目が合った。
声をかけるまえに、その目が逸らされる。
「先生、呼んでこよう」
赤い目を誤魔化すように顔を背け、親父はそのまま背を向けた。そして、そそくさと出ていった。
自分が置かれている状況がうまく呑みこめず、茫然とする。
『おじちゃん、奇跡は必ず起こるよ』
あいつは、どこへ行った……?
だれかに訊きたくても、だれに尋ねればいいのかわからい。それどころか、この現状を、どう受け止めればいいのかすらもわからなかった。
「あ……、え? ――あれ……?」
「直之っ!」
目が合った途端、不安げに揺れていた母親の瞳が大きく見開き、直後に顔全体がくしゃりと歪んだ。
――なんだ……?
「直之っ! 直之っ。心配したのよっ。あんたって子はもうっ。よかったっ! ほんとによかった……っ」
肩口に顔をうずめるようにして母親が泣き崩れる。茫然とする目に、白い天井が映った。
白い天井。埋めこまれたカーテンレール。
目に映る光景は、先程とまったく変わらない。
――病院?
戸惑いながら視線を巡らせると、少し離れた位置からやはりこちらを覗きこんでいた父親と目が合った。
声をかけるまえに、その目が逸らされる。
「先生、呼んでこよう」
赤い目を誤魔化すように顔を背け、親父はそのまま背を向けた。そして、そそくさと出ていった。
自分が置かれている状況がうまく呑みこめず、茫然とする。
『おじちゃん、奇跡は必ず起こるよ』
あいつは、どこへ行った……?
だれかに訊きたくても、だれに尋ねればいいのかわからい。それどころか、この現状を、どう受け止めればいいのかすらもわからなかった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
私と継母の極めて平凡な日常
当麻月菜
ライト文芸
ある日突然、父が再婚した。そして再婚後、たった三ヶ月で失踪した。
残されたのは私、橋坂由依(高校二年生)と、継母の琴子さん(32歳のキャリアウーマン)の二人。
「ああ、この人も出て行くんだろうな。私にどれだけ自分が不幸かをぶちまけて」
そう思って覚悟もしたけれど、彼女は出て行かなかった。
そうして始まった継母と私の二人だけの日々は、とても淡々としていながら酷く穏やかで、極めて平凡なものでした。
※他のサイトにも重複投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】その約束は果たされる事はなく
かずきりり
恋愛
貴方を愛していました。
森の中で倒れていた青年を献身的に看病をした。
私は貴方を愛してしまいました。
貴方は迎えに来ると言っていたのに…叶わないだろうと思いながらも期待してしまって…
貴方を諦めることは出来そうもありません。
…さようなら…
-------
※ハッピーエンドではありません
※3話完結となります
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています
【7】父の肖像【完結】
ホズミロザスケ
ライト文芸
大学進学のため、この春に一人暮らしを始めた娘が正月に帰って来ない。その上、いつの間にか彼氏まで出来たと知る。
人見知りの娘になにがあったのか、居ても立っても居られなくなった父・仁志(ひとし)は、妻に内緒で娘の元へ行く。
短編(全七話)。
「いずれ、キミに繋がる物語」シリーズ七作目(登場する人物が共通しています)。単品でも問題なく読んでいただけます。
※当作品は「カクヨム」「小説家になろう」にも同時掲載しております。(過去に「エブリスタ」にも掲載)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる