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第十二章
第302話 アルファ誕生
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北条が試作品を作る、と言い出して"アイテムボックス"から取り出したもの。
それは肝心要となるゴーレムの核だった。
次に取り出したのはベルムホルト鋼とアーダル鋼を主とする合金で、北条が試行錯誤しながら各金属の比率を調整して作ったものなので、この合金自体に名前はない。
アーダル鋼は魔力浸透率と硬度に優れているのだが、その分弾性がなくて剣を作ってもポッキリと折れやすい。
それをベルムホルト鋼と幾つかの金属を混ぜ合わせる事で、弾性問題を解決し、更に魔力浸透率や硬度も向上させる事に成功していた。
それから他にも北条お手製の〈魔水晶〉や、雷晶石、水晶石などの各属性の力を秘めた水晶のような石。
ダンジョンの魔物からドロップした素材となる品々。
全て使用するのではないかもしれないが、見た目的には結構な量だ。
「おおー。それ全部使うのか?」
「んー、まぁ全部使うことはないだろぅ」
最後に何か石の板のようなものを三枚ほど取り出しながら、北条が答える。
その三枚の石板には記号や魔方陣などの他に、上位魔法文字と思しき文字も刻まれていた。
「うわぁ……。これ私にもよくわからないけど、上位魔法文字よね? この石板はどっかで仕入れたの?」
「この石板は俺の自作だぁ。こいつがまあ、ゴーレムを作る設計図……というか、原版みたいなもんだなぁ」
「えーと、三つあるということは、三種類のゴーレムが作れるという訳ね」
「あー、それはちょっと違う。種類という意味で言えば、原版よりもゴーレム錬成時に一緒に使用する素材によって、出来上がりが大きく変わって来る。この原版は姿形や基本性能の違いによって使い分けるもんだぁ」
北条はそう言うと、一つの原版となる石の板を手に取る。
それから一面に置かれた素材を吟味しながら選んでいく。
ただそれだけの場面のはずなのだが、最後にででんと置かれた大きな金属の塊を、まるで粘土を捏ねるかのように千切り取っていく北条の姿は異様だった。
「んー、これ位かぁ?」などと言いつつ、一抱えするような大きさの金属を切り離しているのだ。
「え、お、オッサン。その金属ってそんなやーらかいのか?」
「あぁ? 何言ってるんだぁ、龍之介。この合金にはアーダル鋼が多く含まれている。柔らかい訳ないだろぉ」
「いや、だって、なあ?」
仲間を求めるかのようにカタリナを見る龍之介だが、カタリナはカタリナで私に振られても……という感じで視線を逸らす。
そんなやり取りをしてる間にも、北条はちゃきちゃきとゴーレム錬成の手筈を整えていく。
少し離れた地面に原版を置き、原版に描かれた図に合わせるように、ゴーレムの核を原版の上に置く。
「よし、じゃあお前たちはちょっと離れててくれぃ」
「ええ、分かったわ」
「お、おう。もう早速おっぱじめんのか」
二人が離れるのを確認した北条は、原版に魔力を込める。
すると原版を中心に、光の線で出来た魔方陣が展開され始める。
この光の線は若干赤みを帯びた白い光を発していて、紙にペンを走らせるかのように、予め設定された魔方陣を徐々に形作っていく。
「わぁ……。ゴーレムを生み出す瞬間に立ち会うなんて生まれて初めてよ」
「てかオッサンはなんでゴーレムなんて作れんだ?」
ゴーレム錬成の作業に集中している北条は、二人の声に答える事はない。
今も展開が終わった半径五メートル程の魔方陣あちこちに、先ほど選別した素材を配置している。
どこに何を置くかも決まっているようで、指さし確認しながら慎重に北条は素材を置いていく。
「ふう、最後の仕上げ、いくぞぉ」
最後に北条は魔方陣のサークル内から外に出ると、誰に声をかけるでもなく、自分自身に発破をかけるように呟く。
それから最後に目を閉じ強く集中しながら、ゴーレムが生成されていくイメージを固め、魔力を魔方陣へと送り込んでいく。
「…………ンンッッ! ゴーレム錬成!」
北条がそう言葉を発すると、魔方陣の中にバラバラに置かれていた各種素材が、流体のような光へと変化していく。
それら光の流体は、魔方陣の中央部に集まっていくと、バラバラだった光の流体は一つの塊となってひとつの形に成形されていく。
流体そのものは光を放っているので、サングラスでもかけるか"閃光耐性"でもないと、蠢く流体のハッキリした動きは掴めない。
龍之介もカタリナも、眩しさの余り手で目を覆っているほどだ。
しかしそうした眩しい光も、流体が一つの形としてまとまり、完成形となる形へと成形されていくと、徐々に光も弱まっていく。
時間としては一分、二分といった短い時間であったが、光が完全に消え失せるとそこには身長二メートルちょっとの人型の物体が立っていた。
「おおおぉぉ……」
「わ……」
その人型の物体は、これまでの話の流れからしてゴーレムなのだと思われたが、見た目はダンジョンで出て来たゴーレムとは大分違っている。
体全体が角ばっておらず、流線型の滑らかなフォルムをしているのだ。
手足の関節部分も球体関節の人形とか、ヒンジのような構造にはなっておらず、見た感じ普通の人間と変わらないようにも見える。
体全体が金属でできているというのなら、あのような手足では折り曲げたり、動かしたりすることなどは出来ないはずだ。
そうした流線型のボディを基本として、その上からは近未来的なプロテクトスーツを身に纏ったような外見をしたゴーレム。
といっても、装備ではなく体の一部であろうからスーツ部分は取り外すことはできそうにない。
プロテクトスーツの形状をした胸の中央部分では、指を引っかけられそうな溝になった部分もあって、そこには何かを嵌め込めそうだ。
「ああー、ええっと、お前の名は『アルファ』だ。そして俺がお前を作り出した主だぁ。んーと、状況が理解できているなら右手を上げろぃ」
どこか戸惑った……というかどうしたらいいのか判断がついていないといった様子で、北条がゴーレムに指示を出す。
すると流線型のフォルムをしたゴーレム『アルファ』は、主である北条の言う事に従って右手を上げる。
「おおっ!」
これには製作者である北条も思わず声を上げる。
「凄い……。こちらの言ってる事が分かってるの?」
「そのハズ……だがぁ」
一言でゴーレムといっても、この世界では該当するものが複数存在している。
人型をしている無機物の魔物、或いは魔法道具などを総じてゴーレムと呼んでいるが、他にも魔法で一時的に作られるゴーレムというものも存在する。
"植物魔法"には【ウッドゴーレム】という魔法があるし、"土魔法"にも【アースゴーレム】という魔法があって、どちらもその名前通りの素材を元にしたゴーレムを生み出す魔法だ。
しかしこれらの魔法は一時的なもので、効果時間が切れるとゴーレムはチリとなって消えてしまう。
これらの魔法は、元々ダンジョンに現れるゴーレムを元にして作られたものだ。
これを一時的にではなく、恒久的に自分の配下として使えるようにと生み出されたのが、今回北条が生み出したゴーレムになる。
ダンジョンに出てくる、ゴーレム系が落とす核を元にして生み出された人造ゴーレムには、基本的な性能として知能が備えられている。
これによって簡単な命令などをこなす事も可能で、ゴーレムの核のランクによっては自律的な行動も出来るようになる。
北条が今回使用したのはストーンゴーレムの核で、ゴーレムの核としてはランクが高い方ではない。
しかし北条の持つ様々なスキルなども使い、本来以上の性能に引き上げられているため、アルファは自立思考も可能だった。
「ほう?」、「これは……」、「まさかぁ?」、などとぶつくさ言いながら、アルファの性能チェックを行っていく北条。
行っていたのはまずは基本的なチェックであり、戦闘テストはまだ行っていない。
この基本的なチェックの段階で、アルファに自立思考能力がある事が判明したからだ。
「んー、しまった。それなら発声機能をつけておくべきだったか?」
ただ命令されたことに従うだけのゴーレムには不要と、余計な機能を省いていた北条。
だが自分で考えて行動できるのなら、話が出来たほうが何かと融通も利く。
「いや、待てよ。これは早速あの機能をテストするのにもってこいだな」
アルファのチェックをしながら独り言を繰り返していた北条。
一人納得した様子で、"アイテムボックス"から小さな石の板を取り出す。
ゴーレム錬成時に使用した原版を、更に小さくしたような形状をしたものだ。
それを今度は地面に置くではなく、アルファの胸の中央部。
凹状になっている所へ、下から上に向けて石の板を差し込む。
まるで昔の家庭用ゲーム機のカセットを本体に差し込むかのように、石の板をはめ込んだ北条。
「なんかこの感触懐かしいなぁ。ま、それはそれとして……、『オーバーライド』」
北条がキーワードのようなものを唱えると、アルファの体の中を流れる魔力が活発化していく。
すると戦隊ヒーローのマスクをかぶったような頭部の口の部分が大きく変化していって、人間のそれと同じような形状に変化していく。
ちょうど口元だけ露出する、お面をかぶっているような状態だ。
そして変化が一通り完了すると、出来たばかりの口を開くアルファ。
「ハッセイキノウ、トリコミカンリョウ」
どこか人の声とは違う、抑揚のないその声は、北条や龍之介にとっては馴染のある、いわゆるロボット的な声をしていた。
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