どこかで見たような異世界物語

PIAS

文字の大きさ
上 下
271 / 398
第十章

第240話 アーシア

しおりを挟む

 魔法の落雷に撃たれた、アーシアという名前らしいスライムは、ピクピクと動いているので死んではいないらしい。
 【落雷】といえば中級"雷魔法"であり、低ランクの冒険者が迂闊にくらったら死が見えるような魔法だ。
 それをまともに受けてピンピンとしてる様子からして、このスライムはかなりタフなようだ。


「俺が召喚して契約したのはこのアーシアだけで、他の五匹はアーシアの持つスキル、"眷属服従"によってアーシアに従っているスライムになる」


 北条の紹介を受けて、改めてみんなの視線がスライムたちへと集まる。
 アーシア以外のスライムたちは、瑞々しさを感じるボディーを時折震わせるだけで、やたらと大人しい。

「あ、あの。これって何スライムなんですか?」

 少なくとも今まで見たスライムと違う種類なのは違いなく、気になった慶介が尋ねる。

「この色からして……薄い水色のはウォータースライム? そしてこっちの紫のはポイズンスライムで……薄い赤色のはファイアースライム?」

 北条が質問に答える前に、思わずといった調子で予想をたてるカタリナ。
 彼女は"魔物知識"というスキルを持っていたが、そのスキルを持ってしても目の前のスライムの種類の特定が全くできなかった。

「いやぁ、ハズレだぁ。そうだなぁ、最初から説明しよう」

 そう言って北条は順序だてて目の前のスライム達の経緯を語った。
 それによると、まず最初に召喚したのはアーシアことアーススライムであり、まずはそのアーススライムと契約を結んだらしい。

 その頃はまだ『ラーニング』の事は伏せていたので、ひっそりと村の近辺で放し飼いをしていた。
 そして村に帰って来た時などに、北条がアーシアに魔法の試し打ち・・・・をしまくっていると、次々と耐性スキルを覚えて進化していったようだ。

「スライムにはぁ"環境適応"というスキルがある。実はこいつぁレアスキルに分類されていてなぁ。スライム系統が様々な環境に適応して進化してるのも、このスキルの影響がでかい」

「え。こいつら全部レアスキル持ちかよ!」

「そうだぁ。そのスキルのせいか、元々耐性スキルを覚えやすいんだろうなあ。そこに指導効果の称号を持つ俺が、魔法をしこたまぶち込んだせいで、メキメキと耐性スキルを覚えていってなぁ」

 何気なくさらっと口にしている北条の言葉に、陽子などが僅かに頬をヒクつかせる。
 幾ら耐性スキルを覚えやすいからといって、一体このアーシアというスライムは、どれだけ北条に魔法を叩きこまれたのだろうか。
 "恐怖耐性"を得るために訓練した経験がある為、多少なりともそのキツさが陽子にも理解できた。

「んで、それで分かったんだがぁ、どうやらスライム系は耐性スキルを増やしていくことで特殊進化を遂げるらしい」

「え、それは初耳ね。そもそもスライム系の魔物は、『魔物使い』でもテイム成功例を聞いたことがないわ」

「ほおう、そうなのかぁ。まあ、俺の場合は"召喚魔法"からの契約だからなぁ」

 カタリナは知識欲がそそられるのか、北条の話に興味津々だ。

「まず、アーススライムだったアーシアはナイトスライムに進化したぁ。それからバロンスライム、カウントスライム、マーキススライム、デュークスライムと進化を続け、最終的に今はキングスライムまで上り詰めたという訳だぁ」

「お、おおおおっ」

 思ってた以上にバリバリに進化を重ねていた事に一同は驚きを禁じ得ない。
 特にカタリナは魔物についての知識が人一番多い分、更なる衝撃を味わっていた。

「ちょ、ちょっと。後半のは私も聞いたことないけど、カウントスライムって確かBランクの魔物よね? そこから更に進化って……」

 カタリナの顔は驚きを通り越して少し青ざめてすらいるようだった。
 龍之介や咲良達も、カタリナの言葉を聞いて改めてアーシアへと目線を送る。
 アーシアはさきほどの【落雷】の影響はすでにまったくなく、再び北条にじゃれつこうとして、今度は【フレイムランス】の魔法を撃たれていた。

「ああ。確かにこいつは、恐らくランクでいえば相当高い魔物なんだろうけど、今んとこレベルはまだ二十六しかない。多分普通に魔物として表れるキングスライムに比べたら、相当弱いはずだぁ」

 芽衣の召喚-契約してしるマンジュウも、サンダーウルフに進化した直後は"雷魔法"を使用することが出来なかった。
 ダンジョンに出現するサンダーウルフは皆"雷魔法"を使用してくるのだが、フィールドで見かけるサンダーウルフだとそうとは限らない。
 恐らく見た目からして子供だと思われる個体などは、魔法を使えないのだ。

「要するにこいつはまだ成体じゃないって事だろう。レベルが上がって本来のレベルに近づくにつれ、キングスライムが本来持つスキルも徐々に覚えていくのだと思う」

 アーシアへの推測を語りつつ、「む、少し火力を上げすぎたか」と言って"回復魔法"をアーシアに掛ける北条。
 それである程度アーシアは回復できたようで、興奮の方も少し落ち着いたのか、北条にベッタリくっつきにはいかず、その場でぷるぷるとしている。
 それ見た一同の脳裏に、治癒魔法と攻撃魔法を交互に撃たれているアーシアの姿が思い浮かぶ。

「それでだなぁ。キングスライムになったアーシアが、これまたスライム特有の"分裂"というスキルで分裂したのがぁ、そこにいる赤いのと紫の……マーキススライムとデュークスライムになる」

 紹介を受けた事が分かっているのか、五匹のスライムは一斉にぷるるんっ! とひときわ大きく体を震わせる。

「こいつらと俺は契約で直接繋がってる訳ではないがぁ、アーシアの"眷属服従"を通じて、ツリー構造状に魔力のパスが通っている。アーシアを【サモン】することでこいつらも一斉に呼び寄せられたのは、そういう事だぁ」

「へぇ……。それって実は凄いんじゃない? その調子でどんどん分裂していけば、眷属もどんどん増えていく訳だし」

「それがぁそう上手い事はいかない」

「どういう事?」

「うむ。まず"眷属服従"はアーシアが偶々覚えただけのスキルで、こちらの五匹のスライムは覚えていない」

 人間と同じように、テイムや契約した魔物でも、個別に適性が高いスキルを覚えることがある。
 アーシアが覚えた"眷属服従"もそうしたものらしい。

「それにアーシアの"眷属服従"も、現在の所服従させられるのは五匹が限度だぁ。なので余り数を増やすこともできん」

 他にもスライムの"分裂"スキルには色々制限もあって、無条件にぴょこぴょこと数を増やせるものでもないらしい。
 分裂するにはそれなりに生命力や魔力、それから時間もかけないと、分裂するには至らないとのことだ。

「まあ数を増やす事はできんがぁ、戦力としては十分問題ないハズだぁ」

「えっと、明日からの探索にソイツらを連れていくって事ッスか?」

「いやぁ、連れていくのはアーシアだけの予定だぁ。他はこの拠点の守りを任せる」

 探索に連れていってもらえるというのが分かったのか、アーシアは体中で喜びを露わにしており、著しく形を変化させている。

「まあその内、他の魔物との召喚契約も増やしていくつもりだがぁ、今はアーシアと通常の"召喚魔法"だけでいいだろう」

 他にも契約する魔物を増やすという言葉と、しばらくは契約するのは自分だけという話を聞いて、悲喜交々といった感情を形状変化という形で表現するアーシア。
 見た目はこんなだが、意外と感情が豊かなのかもしれない。
 アーシアの従僕である五匹のスライムからは、特に強い感情らしきものが見受けられないので、契約した事による影響か、それとも個体差なのか。


「う~ん、スライムね~」


 アーシアを見て芽衣が深く考えを巡らせる。
 その脇では「くぅぅん」とマンジュウが悲し気に吠えていた。
 媚びるように芽衣に体を擦り付けたり、足をペロペロと舐めたりしている。

「きゃ~、ちょっとマンジュウやめて~。あなたと契約を解除するつもりはないから~」

 そうは言っている芽衣であるが、新たに契約を結ぶ相手としてスライムはどうだろうかと検討していた。
 何体まで契約が可能なのかは分からないが、感覚としては少なくともまだ契約を追加で結べる余裕を感じている。

 現在芽衣が同時召喚できるのは、マンジュウを含めて計六体まで。
 つまり、最高で六体まで契約できる可能性がある。
 だが限界まで契約を結べたとして、自由に召喚出来る枠がないと汎用性が失われてしまう。
 それでも六体中二体くらいなら、固定枠にしてしまってもいいかもしれない、と芽衣は考えていた。

「とまあ、そういう訳で紹介したいヤツというのはこいつらの事だぁ。今後、拠点の守りと下水道の処理なんかも任せるつもりなので、見かけても攻撃せんように頼む」

「おう!」

「アーシアちゃん、よろしくねー」

「ううん、マーキススライムにデュークスライム……。一体どんな能力が……」

「ま、ある意味スライムってのもお約束かもねえ」

「耐性スキルを複数持っているんだったな。いざという時はよろしく頼む」


 北条が召喚、契約した魔物『アーシア』の紹介が終わり、互いの顔見せが終わると、その後少しだけアーシアの能力を試すことになった。
 "斬撃耐性"や"魔法耐性"。それから各種属性耐性を持つアーシアは、メンバーの攻撃を次々食らってもピンピンとしていた。

 優秀な盾役を仲間に加え、『サムライトラベラーズ』と『プラネットアース』の二組だけで構成される事になる、初めてのレイドパーティー。
 久々の大人数での冒険を前に、皆のテンションも高まっていくのであった。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...