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第三章
第55話 パーティー編成会議
しおりを挟む「まずは……そうだな。パーティーリーダーから決めていこうか」
「……それなら俺が――」
信也のその言葉に石田がこもった声で何か言いかけるが、ボソッとした小さな声は直後に続く由里香の大きな声によってかき消された。
「はいはい! リーダーは和泉さんと北条さんでいいと思うっす!」
「そうね、それで問題なさそうね」
「ぼ、僕もそれでいいと思います」
由里香の提案に次々と賛成の声があがっていく。
一方発言を遮られた石田は、由里香に向けて暗く淀んだ視線を送る。
その口元は小さく動いていたが、先ほどの発言より更に小さな声だったので、ほとんど聞き取ることはできなかった。
「という事みたいだが、北条さんはどうでしょう?」
「……そうだなぁ。引き受けよう」
意見をまとめた信也が推薦された北条に確認を取る。
当の北条はといえば、余り乗り気ではなさそうな態度ではあったが、最終的には承諾の意を返した。
そんな北条の様子に密かにいらだちを覚えている石田であったが、他の面子は特に反対意見は……というか、賛成意見の方が多かったので、揉める事もなく両パーティーのリーダーは決定した。
こういう時に立候補してきそうなイメージのある龍之介だったが、どうやらリーダーという立ち位置に魅力よりも面倒くささを感じているようで、すんなりと二人のリーダー就任に賛同していた。
「リーダーが決まったんなら、後は役割によって分けてきゃーいいな。丁度いい事に斥候職とヒーラーが二人ずついるしな」
選択肢として、尖った構成のパーティーにするという案もなくはないが、やはり最初はバランス的に割り振ったパーティーの方が問題は少ないだろう。
龍之介の言う通り、斥候職とヒーラーが二人ずつというのも分けやすくて丁度いい。
人数が十二人で丁度パーティー二つ分の人数なのも、パーティー分けしやすい職構成になったのも、偶然ではあると思う。
だが、最初に召喚される段階である程度しくまれていた可能性もあるのかな?
そんな事を咲良が考えている間に、真っ先に声を上げた者がいた。
「そういう分け方になるのなら、私は和泉の方のパーティーに参加するわ」
そう口にしたのは長井だ。
妙に目力の感じられる視線を向けられながらも、そう告げてきた長井に対して、特に断る理由も見出せなかった信也は承諾の返事を返す。
「そ、それでは、わ、私は北条さんの方のパーティーですね……」
必然的にもう一人の斥候職である楓は北条のパーティーに加わる事になる。
次に簡単に分けられそうなのはヒーラーの二人。
そして先に意見を出したのは咲良の方だった。
「私は北条さんの方のパーティーに参加したいんですけど、いいですか?」
そう声を上げながらメアリーの方へと視線を向ける咲良。
視線を向けられたメアリーは、一瞬困ったような表情を見せたが、すぐに「いいんじゃないかしら」と返してくる。
メアリーとしては、私的な理由で北条に興味を覚えていたので、一緒にパーティーを組みたい所ではあった。
だが、そこまで強い気持ちでもなかったし、パーティーが別だと話が出来ないということもない。
そこで少し悩みはしたものの、あっさりとその座を咲良へと譲り渡した。
一方咲良はというと、個人的に北条に対して頼り甲斐を感じていた。
信也が頼りないという訳ではないのだが、比較してみると北条には謎の安心感がある。
更にこれが大きな理由でもあるのだが、信也のパーティーに加わった長井に対しては、前々から良い感情を抱いていなかった。
由里香や龍之介のように表立ってその感情を見せた事はなかったが、言葉の節々に感じる性格の悪さには辟易としていたのだ。
最近なりを潜めてきている長井ではあるが、最初に抱いた気持ちは変わってはいない。
「では、私は和泉さんのパーティーの方ですね。よろしくお願いします」
こうして両パーティーともに三人ずつメンバーが決定した。
残りの六人をどう振り分けるのか。
ここからは膠着状態が続くかと思われたが、このタイミングを待っていたかのように、元気な声が辺りに木霊した。
「はい! あたしと芽衣は北条さんのチームがいいっす!」
前もって芽衣と話し合っていたのか、それとも由里香が突然勝手に言い出したのか。どちらなのかは芽衣の表情を見る限りでは判別できない。
ただ、芽衣は由里香の言葉に反対はしないようだ。
「ちょっと待てよ。お前がそっちに参加するってなると、編成的に俺が和泉のチームに入るって事になっちまう。ここはジャンケンできめよーぜ」
どうやら太田も和泉と同じチームにはなりたくないようで、慌てた様子でジャンケン勝負を申し込む。
子供たちの忖度しない一連の様子に、当の信也も苦笑いといった表情だ。
ただ、これは単純に信也が頼りないとか信也が気にくわない、といった理由だけでなく、恐らくは別の原因のせいだろうとは予想がついている。
「…………」
信也がその別の"原因"の方をちらりと横見した所、すでに所属が確定していた彼女は龍之介達のやり取りを全く気にしてる気配はない。
この様子では、彼らが必死になっている理由にも思い至っていないだろう。
「……ポンっ!」
「よっし、勝ったー!」
「くそおおおお!!」
一方ジャンケン勝負は由里香の勝利で決着がついたようで、龍之介がグーに握った手を前に出したまま固まっていた。
由里香も龍之介も、陰口をたたくようなタイプではなく、嫌いな相手には嫌いとはっきり口にするタイプだ。
そして、すでにその二人ともが一度は衝突した事のある長井は、両者にとっては出来るだけ避けたい相手であった。
更に付け加えると、龍之介は長井への嫌悪感だけが理由だったが、由里香はダンジョン内で北条に助けられた経験もあり、彼には心強さを感じていた。
その思いがあった故に勝利の女神が由里香にほほ笑んだ、という訳でもないが無事に同じパーティーになることが出来た。
これで北条のパーティーは五人、信也のパーティーはまだ三人だが、
「しゃーねーから、俺はこっちのパーティーに入っとくぜ」
と、前衛と後衛のバランスを考えて龍之介は信也のパーティーへと加わる。
そこに更に、
「……なら、俺も後衛として和泉のパーティーにはいるぞ」
陰気な石田の声も続き、一気にパーティー編成は加速した。
そうなると残るは二人、陽子と慶介だ。
その状態に遅ればせながら気づいた陽子は慌てたように声を発した。
「え? ちょ、ちょっと、私と慶介君、別々のパーティーになっちゃうの?」
同い年の女の子が言うなら理解できるが、二十歳過ぎた女性がそんなセリフを吐くと途端に胡乱気に聞こえ始める。
特にこれまでの二人の様子を見ていればそれは明らかだ。
親戚のお姉さんと子供の他愛無い交流風景、といったものとは別種のいかがわしさが微かに匂ってくる。
といっても、あからさまにそういった行為をしている訳でもないので、周りの人も特にそれを咎めたりはしなかった。
もしここが日本国内で男女性別逆だったなら、周囲の人から訝し気に見られたり、お巡りさんに職質されてもおかしくはないだろう。
「まあ、そういう事になるな。今後の皆のスキルの発展具合によっては組み合わせも変えられるだろうけど、今の所はこんな感じだ」
「それと二人の振り分けですけど、北条さんのパーティーに魔法組が多いので、慶介君は和泉さんと同じパーティーにするとバランスが良くなると思います」
こうしてどんどんと話は進んでいき、全員の振り分けが完了した。
陽子は納得はしていないようだったが、今更話をゼロに戻す訳にもいかず、しぶしぶ承諾した。
結果として、和泉をリーダーとする、龍之介、長井、メアリー、石田、慶介のパーティA。
北条をリーダーとする、由里香、芽衣、楓、咲良、陽子のパーティB。
図らずしもパーティBに女性が偏ってしまったが、しばらくはこの二つのパーティーで活動する事が決定された。
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