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第二章
第33話 迷宮碑とソウルダイス
しおりを挟む「ええと、転移部屋というのはですね――」
ジョーディの話は少し長めだったが、まとめると以下のようなものらしい。
まず、必ず存在する訳ではないが、ダンジョンによっては迷宮碑というものがダンジョン入口近くに配置されており、その迷宮碑に登録する事によって、迷宮内にある他の迷宮碑の場所へと一瞬で移動する事が出来るようになる、との事だ。
更に迷宮入口にある転移部屋には、今北条達の目の前に広がっている空間のように、複数の迷宮碑が設置されている事もあり、設置されてる数が多ければ多いほどそのダンジョンの規模が大きくなるらしい。
このダンジョンには十二柱もの迷宮碑が設置されている訳だが、ギルドが把握している限り、この数は最大級のものだろうという事だ。
もしかしたらギルド上層部や、国によって隠蔽された大規模ダンジョンも存在するかもしれない。
だが、一般的に知られてる範囲では、冒険者の国とも呼ばれる『ユーラブリカ王国』に存在している《ブレイヴキャッスル》が、八柱の迷宮碑で最多とされていた。
ダンジョンについての説明をしていたジョーディは、そこで一旦話を終えると「けど……」と口にしながら部屋の中央部に聳え立つ鳥居を見つめる。
「転移部屋にあのようなオブジェクトがあるなんて話は聞いたことがありません。迷宮碑の数といい、ここは何か特別なダンジョンなのかもしれませんね……」
そのジョーディの言葉には、異邦人達も頷かざるを得ない。
なんせ、日本由来のものがこうして、デデーンと設置されているのだ。ここが特別な何かだというのは、否が応でも理解できる。
そもそも最初に転移されたのがこのダンジョンだったのだ。
これら一連の構造物が日本への帰還と関連しているかもしれない。とりわけ鳥居はその形状からして、非常に疑わしい。
実際、最初の位置からでは見えなかったのだが、鳥居の付近にまで移動してみると、鳥居の麓にもモノリス状の台座のようなものが屹立していたのだ。
その台座の上には、何かをはめ込むものと思われる窪みが三つあり、その形状と数からどんなものをはめ込むのかは予想できた。
一つは剣型。長さはそれほどでもなく、六十~七十センチ程か。
一つは円形。二十センチ程の円形に窪んでいる。
一つは勾玉。十センチ程の、人間の胎児のようにも見える形状をしている。
「……三種の神器を集めろってことかぁ」
北条のその言葉に、ジョーディは「何の事ですか?」と当然のように疑問符を浮かべているが、日本組の由里香や芽衣まで同様にハテナマークを浮かべている。
その場で日本にかかわる事を話す訳にもいかず、北条はジョーディの誰何の声をスルーして周囲に配置されている、迷宮碑の方を確認する事にした。
彼らが近寄っても床に描かれた魔法陣は何ら反応を示す事はない。
恐らくは中央の迷宮碑を操作する事で、転移が発動するのだろう。
その肝心の迷宮碑は、一メートル程の高さのつるりとした光沢をしており、迷宮碑という割には碑文などは掘られていない。
その上部には何かを嵌めこむような窪みと、隅の方に配置されている長方形の白いでっぱった部分があり、この部分だけ別の材質でできているようだ。
そのでっぱった部分を撫でまわしていた龍之介は、
「……なーんか、この感触覚えがあんだけどなあ」
と、しきりにスリスリと迷宮碑を撫でまわしていた。
その様子を「何か撫で方がやらしい……」とジト目で見ている咲良。その隣では珍しく何か考え事をしてる由里香が「うーん、うーん」と唸っている。
「あ、そうだ! これってあのサイコロとかタブレットに似てない? 材質だけじゃなくて、なんかピッタリはまりそうだし!」
確かに言われてみると、この窪みにはあのサイコロがピッタリとはまりそうだった。ただ、タブレット自体を嵌められそうな窪みはないし、タブレットのようにサイコロを嵌められそうな窪みが複数ある訳でもない。
隅っこの方には軽くでっぱった長方形の部分があり、そこもタブレットにあった別の材質で出来ていた部位と似ている。
「ほぉ、なるほど確かになぁ」
北条も恐らくあのサイコロと何か関係あるのだろうと、関心していた。
そこに話を聞いていたジョーディが割り込んで来る。
「みなさん、〈ソウルダイス〉をお持ちなのですか?」
彼らがゴブリン部屋の死闘の果てに手に入れた謎のサイコロと石板。その内の一つはどうやら〈ソウルダイス〉という名前らしい。
一瞬どう対応するか迷った様子を見せたが、結局北条は正直に答える事にしたようだ。
「あぁ、ダンジョンを脱出する際に、途中で見つけた宝箱から手に入れたぁ」
「なるほど、そうでしたかぁ。〈ソウルダイス〉は冒険者をするには必須アイテムですからね。そんな高いものでもないですが、すでに確保出来ているというのは良い事です」
納得顔で頷いているジョーディ。とそこに、思わずと言った様子で龍之介が再び割り込んできた。
「そんな高くないって、あれ一つで幾ら位なんだ?」
「んー、そうですねぇ。ダンジョンでは比較的よく発見されるものでして、大体ひとつで五銀貨位ですかねえ」
〈ソウルダイス〉の価格を聞いた龍之介は、この世界の貨幣で言われてもいまいちピンとこないのか「五銀貨……昨日の報酬が六銀貨で……」などとぶつぶつ言っている。
「あのー、その〈ソウルダイス〉と一緒に石の板も見つかったんですけど、そちらはどういった物か分かりますか? この迷宮碑みたいに〈ソウルダイス〉を嵌めこめる窪みのある板なんですけど……」
材質の類似性や〈ソウルダイス〉を嵌めこめる窪みといい、何らかの関連性があると思われたが、結局使い道がわからなかった謎の板。
用途が気になっていた咲良は、ついでにジョーディに尋ねてみる事にしたようだ。
「石の板……。それは多分〈ソウルボード〉だと思います。複数の〈ソウルダイス〉をはめ込む事で――」
「ちょっと待ったぁ。その説明の前に〈ソウルダイス〉の説明を頼む。迷宮碑にもピッタリ嵌りそうな窪みがあるから、そっちにも何か使えるはずだぁ」
話が次々変わっていきそうだったので、少し慌てた北条が話を戻す。
「ああ、そうですねぇ。ではまずは〈ソウルダイス〉の説明からしますか」
ジョーディも順番的に先にこちらを説明した方が良いと判断し、〈ソウルダイス〉の説明を始める。
「まず〈ソウルダイス〉単体の機能としては、これを使用する事でパーティを組むことが出来ます」
「ん? っつー事は、〈ソウルダイス〉を使わないでグループを組んでも、パーティーを組んだとは言えないってことか?」
てっきり今までパーティーを組んだつもりでいた龍之介は、肩透かしを食らったかのような気分に陥る。
その様子を見たジョーディは少し慌てた様子で、
「いえいえ……えーと、確かに一般的にはそれでも間違いないのですが、『冒険者』が『パーティを組む』と言ったら〈ソウルダイス〉を使用する事を指します。何故かというと、それこそが〈ソウルダイス〉の効果そのものを表すからです」
そこまで口にすると、喉が渇いたのか先ほど水筒に補充していた手水の水をぐびっと飲み干す。
すると、予想外に美味しかったのか更に二口、三口と追加で飲み干す。
「ぷはぁ、あの石桶の湧き水美味しいですねえ。『サルカディアの泉』の水もかなりのものだと思ってましたが、こちらの方が……っと、話の途中でしたね。ええと、それで〈ソウルダイス〉の効果ですが、使用者同士に魂の繋がりをもたらす、とされています」
「魂のつながりぃ?」
全くピンと来ていない様子の由里香だが、それは他の面々も同じようだった。
「ええ、その繋がりによって一部の魔法やスキルを使用した際に、パーティーメンバー全員に同じ効果をもたらす事が出来る訳です」
「え? じゃあ、パーティー組んでないと複数人に同時ヒールとかできないの?」
ヒーラーとしては非常に気になる質問をぶつける咲良。
今の所単体回復魔法しか使えていないので問題ないが、今後はそういった魔法も覚えていくだろう。
「えーと、そうですね……。"神聖魔法"で説明しますと、複数人を治療する魔法は二種類存在します。片方が先ほどのパーティーメンバーを回復する魔法で、こちらはパーティーを組んでいない場合に使用すると、自分だけしか回復しません。魔力の消費も単独ヒールより多いので、出来るだけ限界人数まで組んだパーティーで使用するのがお得ですね。そしてもう一つは、発動地点を設定してそこを中心にした周囲の人たちを纏めて治療する"範囲魔法"です。ちなみに、パーティーに効果のある魔法は"パーティー魔法"というのに分類されます」
「同じ魔法でも色々種類があるのね」
「まあ、あくまで私達が勝手にそう分類してるだけですけどね。ちなみに、"神聖魔法"だと"範囲魔法"よりパーティー魔法の方がより覚えやすいみたいです」
どうやら"範囲魔法"というのは基本的には一段上の難度のの魔法のようだ。
また、一時的に筋力などを上げたりできる"補助魔法"などは、パーティー魔法は存在するが範囲魔法が存在しない、というケースもあるとのこと。
「……とまあ、パーティー魔法やパーティースキルの為、というのがパーティーを組む理由の一つとなります。それからあと一つは、経験値の共有です」
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