すずしろの浅漬け

食べちゃダメなの

うちの息子は保育園の調理師です。
幼いながらアレルギー持ちのお子さんは案外多く、小麦アレルギーのひどい子は同じ部屋で別の子がパンを食べただけで痒くなったり、咳こんだりするそうで、見ていると辛くなると言っています。

アレルギーに合わせての調理は、栄養士さんの指導の元に作られ、三人で確認したのち園児に提供されます。
講習会などでの発表資料を見せてもらったのですが、間違いがあってはいけないので、アレルギーの子の食器はピンクなんですよ。

ピンクの皿に乗ったニンジンを見て、
「なんかまずそー」
とはひっそり思いましたが、このくらいインパクトのある色にしておかないといけないのは分かるので黙っていました。

ある時、息子が嬉しそうにしているので聞いてみると、
「成長と共にアレルゲンが減って食べられるものが増えた子供がいるんだ。」
「今年は兄弟のお兄ちゃんが普通食に近くなったから、来年は弟君も大丈夫になるかな?なるといいよね。」

ついつい親は子供をいつまでも小さい時の感覚で見てしまいますが、嬉しそうに話す姿を見て、その成長に驚くとともに、幼子の成長を喜ぶ息子を誇らしく思いました。


ハラール(ハラル・日本人にはこちらの方がなじみやすいですね。イスラム教（ムスリム）の戒律によって食べることが許された食べ物のことです)の制約のあるお子さんがいる保育園に転勤になった時は、アレルギーのお子さんの食事とは別に作る作業が増えて驚いたと言っていました。
でもこちらは、使ってはいけないものを使わなければいいだけですから、ハラルフードを扱う店で仕入れたもののみ使い、調理器具も専用と決めたものだけ使用します。
ついでに食器洗浄も別でやっていたそうです。

確か豚とアルコールは絶対にダメなんですよね。
味醂なんてアルコールですから使えません。

宗教上、豚は不浄なものとして扱われているから、体内に一切入れてはいけないそうで。
豚から抽出したエキスが含まれる調味料や出汁の入ったスープなんていうのもダメ。
豚を調理した道具を使って調理された食材もダメ。
豚を運んだトラックや豚を入れた冷蔵庫で保管された食材もダメなんで保管は専用冷蔵庫です。
更には、豚が配合されている餌を食べた家畜や、豚由来のタンパク質や酵素を使われている医薬品や化粧品なんてもってのほか。

厳しいなあ。

だから専門店からの仕入れで、専用の調理器具を使っていれば問題なしなので、アレルギー食より楽だったそうです。

あ、思い出した・・・。
以前の客先でイスラム教徒の旦那さんがいる方がいました。
奥様は日本人。
さばさばとした性格の美人さん。
「色々制約があって大変でしょう?」
と聞いたら、
「本当に嫌になっちゃうのよね、食べたって死なないんだからいいじゃないと思うんだけど、いちいちうるさくてね。子供だって食べ盛りだし、学校じゃ出されたもの食べてるんだし、この近所にハラルフード売ってる店なんかないから、実は適当にしてるのよね。」
この頃は今ほどネット環境も整っておらず、ハラルフードを扱う店も少なかった時代です。
「ウィンナーなんて、そこのスーパーで買ってきたのを旦那には『チキンのウィンナーだ』って言ってるの。料理の下味付けの日本酒や、味醂もこっそり使って隠してる。もしも義母に見つかったら、私殺されちゃうけどね。」

(・.・;)
うん、殺されかねない。
ハラルでないものを食べることは罪であり、神に背くということですものね。
あれから２０年くらい過ぎましたが、事件は起きていないので大丈夫なんでしょう。


ついでに思い出したのですが、スーパーで肉を見ていたらイスラム系の男性二人に、牛のレバーはどれですか?と聞かれたことがあります。

漢字、ひらがな、カタカナと、日本は世界でも珍しい三種類の文字を使う国です。

「これですよ、ここに牛と書いてあります。」
と指で示して教えて、ついでに持っていた紙に『牛・うし、ウシ』と書き、その横に簡単な牛の絵を添えて、
「日本語でこう書きます、牛は角があるから漢字はここが角を表しています。そして、豚は『豚・ぶた・ブタ』と書きます。豚は丸っこいので漢字もなんとなく丸ッとしていると思いません?」
と言って、豚の絵も描いて渡したら、喜んでくれました。
へたくそな絵でしたが、理解してもらえてよかったです。