9 / 90
母は伏して願います
しおりを挟む
今はもう亡くなられて久しいですが、某国会議員さんのお話
まだ彼が高校生だったころ、そこにお手伝いさんとして勤めていた方から伺った話です。
「嫌でございます、母上様、私は東大など行きたくはございません!」
居間の前を通りかかった時、中から聞こえてきたのは普段声を荒げることなどなかった嫡男さんの叫び。
「私は〇〇大学に行きとうございます、○○先生に師事して学びを深めとうございます。」
「△△や、、、貴方の気持ちは分かります、しかし、我が家は代々東大と決まっているのです。」
「嫌でございます、東大など嫌いです!」
「あなたは嫡男なのですよ、〇xの名を持つ以上こればかりは譲れないのです。」
「嫌でございます!!」
普段決して親に逆らわず、使用人にも驕らず、穏やかな坊ちゃんの強い言葉に唖然としていると、
すっと奥様はソファーから降りてその場で三つ指をついて頭を深々と下げました。
「母は伏して願います、どうかどうか、納得してください。」
流石に驚いたのでしょう、それまで頑なに拒否の姿勢を崩さなかった坊ちゃんが奥様に駆け寄りました。
「母上様、このようなことなさってはいけません、お顔をお上げください。」
「いいえ、母は伏して願う事しかできないのです、無力な母を哀れに思うなら、どうか、、、どうか、、、(涙)」
「母上様、母上様、、、(涙)」
「んで結局ね、東大現役合格しちゃうんだから凄いよね。」
お茶を飲みながら当時を語ってくださった方は笑って言いました。
「お母様の作戦勝ちですねえ、そもそも代議士の奥様が無力なわけないし、誰よりも人を見極める目が要求される立場なんですもの。」
「そう、まさにそれよね、坊ちゃん親孝行で素直だし、なによりお母さん大好きっ子だったからあの土下座には度肝抜かれたんだろうね。」
「しかし、親子でそういう話し方って、、、庶民とは違い過ぎてなんとも。」
「うん、何軒か上流階級の女中したけれど、あの家が一番丁寧だったね、まあ庶民じゃ『伏して願います』なんて子供にゃ言わないよねえ、『ええい!うるさい!!そんなに嫌なら家出て、奨学金でも貰って学校行け!』だよね。」
「うんうん、それにそもそも『東大になど行きとうございません』以前に東大なんて簡単に入れないし。」
「あっさり入っちゃう地頭の良さ、だからお父さんの地盤受け継いで国会議員にもあっさりなれたし、閣僚にも入れちゃったわけだよね。」
「人種が違い過ぎて、なんともねえ。」
はぁっとお茶飲みながら、庶民はため息を一つこぼしました。
まだ彼が高校生だったころ、そこにお手伝いさんとして勤めていた方から伺った話です。
「嫌でございます、母上様、私は東大など行きたくはございません!」
居間の前を通りかかった時、中から聞こえてきたのは普段声を荒げることなどなかった嫡男さんの叫び。
「私は〇〇大学に行きとうございます、○○先生に師事して学びを深めとうございます。」
「△△や、、、貴方の気持ちは分かります、しかし、我が家は代々東大と決まっているのです。」
「嫌でございます、東大など嫌いです!」
「あなたは嫡男なのですよ、〇xの名を持つ以上こればかりは譲れないのです。」
「嫌でございます!!」
普段決して親に逆らわず、使用人にも驕らず、穏やかな坊ちゃんの強い言葉に唖然としていると、
すっと奥様はソファーから降りてその場で三つ指をついて頭を深々と下げました。
「母は伏して願います、どうかどうか、納得してください。」
流石に驚いたのでしょう、それまで頑なに拒否の姿勢を崩さなかった坊ちゃんが奥様に駆け寄りました。
「母上様、このようなことなさってはいけません、お顔をお上げください。」
「いいえ、母は伏して願う事しかできないのです、無力な母を哀れに思うなら、どうか、、、どうか、、、(涙)」
「母上様、母上様、、、(涙)」
「んで結局ね、東大現役合格しちゃうんだから凄いよね。」
お茶を飲みながら当時を語ってくださった方は笑って言いました。
「お母様の作戦勝ちですねえ、そもそも代議士の奥様が無力なわけないし、誰よりも人を見極める目が要求される立場なんですもの。」
「そう、まさにそれよね、坊ちゃん親孝行で素直だし、なによりお母さん大好きっ子だったからあの土下座には度肝抜かれたんだろうね。」
「しかし、親子でそういう話し方って、、、庶民とは違い過ぎてなんとも。」
「うん、何軒か上流階級の女中したけれど、あの家が一番丁寧だったね、まあ庶民じゃ『伏して願います』なんて子供にゃ言わないよねえ、『ええい!うるさい!!そんなに嫌なら家出て、奨学金でも貰って学校行け!』だよね。」
「うんうん、それにそもそも『東大になど行きとうございません』以前に東大なんて簡単に入れないし。」
「あっさり入っちゃう地頭の良さ、だからお父さんの地盤受け継いで国会議員にもあっさりなれたし、閣僚にも入れちゃったわけだよね。」
「人種が違い過ぎて、なんともねえ。」
はぁっとお茶飲みながら、庶民はため息を一つこぼしました。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
徹夜でレポート間に合わせて寝落ちしたら……
紫藤百零
大衆娯楽
トイレに間に合いませんでしたorz
徹夜で書き上げたレポートを提出し、そのまま眠りについた澪理。目覚めた時には尿意が限界ギリギリに。少しでも動けば漏らしてしまう大ピンチ!
望む場所はすぐ側なのになかなか辿り着けないジレンマ。
刻一刻と高まる尿意と戦う澪理の結末はいかに。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる