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僕は貴方の傍に
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「斑、斑は綺麗だね。」
僕の頭上から声がする。声の主は僕の飼い主である「冬子」と言う少女だ。
僕が彼女と出会ったのは雨の降る寒い日だった。
僕は、俗に言う「野良犬」だ。
でも昔は人に飼われていた事もあった。
記憶は朧気であるけれど、とても大きな家で飼われていた。
その家には沢山の人が居た。
でも、その家で僕に触れて優しく接してくれるのはその家の隠居した老夫婦だけだった。
その家には、若い娘夫婦も居たけれど僕には見向きもしなかった。何なら、石を投げつけられる始末だ。
それでも、僕は優しくしてくれる老夫婦だけを信じていたからどんなに辛くても耐えられた。
そんなある日、僕は聞いてしまったんだ。
本当は老夫婦の方が僕の事を嫌いであったという事を。
黒猫は教えてくれた。
「あの老夫婦は、他人に動物を虐めさせて自分達は高みの見物でいるのが好きなんだ」と。
そこで漸く分かったんだ。
僕を本当に嫌っていたのは「老夫婦」であったという事、娘夫婦も頼まれていたからだという事。
遅すぎたのかもしれない、だって僕の身体は傷だらけ。
それなら、逃げよう。
「元々、君には首輪なんて着いていないじゃないか。それならこの家を抜け出すことはいとも容易い事だよ。」
そうして僕は黒猫に連れられるまま、「野良」となった。
そして、色んな街を見た。
色んな動物に会った。
とある日、黒猫とはもうとうの昔に離れ離れになっていた頃だった。
その日は雨が降っていて。
雨に濡れないよう、僕は近くにある神社に駆け込んだ。
その神社出会ったのが今の飼い主であり、名前を付けてくれた「冬子」だった。
冬子達家族はとても優しかった。
最初、僕は以前の事が未だ頭にあった為どの人間も警戒していた。
でも、僕はある事に気づいた。
老夫婦と冬子達の目だ。
あの老夫婦の目の中は暗くどろりとした沼の様だった、けど。
冬子達家族は。
とても優しい色をして太陽の様に暖かったんだ。
...信じても良いのかな、僕はこの家に居ても良いのかな...。
そう思い戸惑いながら冬子に鼻を近づける。
冬子は優しく僕の頭を撫でてくれた。
撫でながら冬子は僕の目線に高さを合わせてこう言った。
「貴方を見てずっと思っていたのだけど、貴方の体の斑模様がとても可愛らしくて。私気に入っているの。だから、安直で申し訳ないのだけれど「斑」と言う名前はどうかしら?...貴方の名前を勝手に決めてしまっては悪いでしょう?」
僕は嬉しかった。
だって、前の家では名前すら無かった僕に名前を付けてくれた。
名前って迚大切な物なんだね。
君に名前を呼ばれると、迚嬉しくて同時にずっと君の傍に居れたら、なんて思うんだ。
だから、何度でも呼んで欲しい...斑。
僕はちゃんと君の呼び掛けに応えるよ...。
僕の頭上から声がする。声の主は僕の飼い主である「冬子」と言う少女だ。
僕が彼女と出会ったのは雨の降る寒い日だった。
僕は、俗に言う「野良犬」だ。
でも昔は人に飼われていた事もあった。
記憶は朧気であるけれど、とても大きな家で飼われていた。
その家には沢山の人が居た。
でも、その家で僕に触れて優しく接してくれるのはその家の隠居した老夫婦だけだった。
その家には、若い娘夫婦も居たけれど僕には見向きもしなかった。何なら、石を投げつけられる始末だ。
それでも、僕は優しくしてくれる老夫婦だけを信じていたからどんなに辛くても耐えられた。
そんなある日、僕は聞いてしまったんだ。
本当は老夫婦の方が僕の事を嫌いであったという事を。
黒猫は教えてくれた。
「あの老夫婦は、他人に動物を虐めさせて自分達は高みの見物でいるのが好きなんだ」と。
そこで漸く分かったんだ。
僕を本当に嫌っていたのは「老夫婦」であったという事、娘夫婦も頼まれていたからだという事。
遅すぎたのかもしれない、だって僕の身体は傷だらけ。
それなら、逃げよう。
「元々、君には首輪なんて着いていないじゃないか。それならこの家を抜け出すことはいとも容易い事だよ。」
そうして僕は黒猫に連れられるまま、「野良」となった。
そして、色んな街を見た。
色んな動物に会った。
とある日、黒猫とはもうとうの昔に離れ離れになっていた頃だった。
その日は雨が降っていて。
雨に濡れないよう、僕は近くにある神社に駆け込んだ。
その神社出会ったのが今の飼い主であり、名前を付けてくれた「冬子」だった。
冬子達家族はとても優しかった。
最初、僕は以前の事が未だ頭にあった為どの人間も警戒していた。
でも、僕はある事に気づいた。
老夫婦と冬子達の目だ。
あの老夫婦の目の中は暗くどろりとした沼の様だった、けど。
冬子達家族は。
とても優しい色をして太陽の様に暖かったんだ。
...信じても良いのかな、僕はこの家に居ても良いのかな...。
そう思い戸惑いながら冬子に鼻を近づける。
冬子は優しく僕の頭を撫でてくれた。
撫でながら冬子は僕の目線に高さを合わせてこう言った。
「貴方を見てずっと思っていたのだけど、貴方の体の斑模様がとても可愛らしくて。私気に入っているの。だから、安直で申し訳ないのだけれど「斑」と言う名前はどうかしら?...貴方の名前を勝手に決めてしまっては悪いでしょう?」
僕は嬉しかった。
だって、前の家では名前すら無かった僕に名前を付けてくれた。
名前って迚大切な物なんだね。
君に名前を呼ばれると、迚嬉しくて同時にずっと君の傍に居れたら、なんて思うんだ。
だから、何度でも呼んで欲しい...斑。
僕はちゃんと君の呼び掛けに応えるよ...。
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