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第百九十話 何か手掛かりを見つけたのかもしれない
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「ああ…!忙しい…!」
「もう…!何でこんなに人の手が足りないのよ…!」
「しょうがないわよ。旦那様が次々と執事や使用人達を辞めさせてしまったんだから。」
「辞めさせられた…?」
リエルは窓拭きをしながら、一緒に掃除をしているメイドの言葉に反応した。
「そうなのよ!ほら、今まで家のことや予算の管理をしていたゾフィーお嬢様が行方不明になったから、この家のお金を旦那様が取り仕切るようになってしまったでしょう?お嬢様が来年の融資に使う為に保管していたお金を旦那様が無駄遣いだって言って全部使ってしまったのよ。」
呆れて何も言えなかった。融資のお金を使ってしまえば、どうなるかなど考えれば分かる事だ。
確かに一時的に生活は潤うかもしれない。けれど、そんな事をすれば来年の生活に強く影響する。融資のお金がなくなれば、収入はなくなるし、今よりもっと苦しい生活が待っている筈だ。
…そんな事にも気付かないのだろうか?いや。きっと、気付いてないし、分かっていないからこそそんな馬鹿な真似ができるのだろう。
何でこんな父親からゾフィーみたいな優秀な娘が生まれたんだろう。
駄目な親を持つと、子供は逆にしっかりしなきゃと思い、自立した子になると聞いたことがあるがゾフィーもそうなのかもしれない。
ゾフィーが家計の管理をしていたという事実はリヒターが突き止めてくれたのでリエルも知っている。
最初、聞いた時はひどい話だと思ったが今にして思えばゾフィーが予算管理をしていなければとっくにロンディ家は破綻していたことだろう。でも、だからといって、娘のゾフィーに仕事を押し付けていい理由にはならない。立派な虐待だ。
「ゾフィーお嬢様を補佐していた執事や使用人は旦那様を止めようとしたんだけど、それに怒って旦那様は全員、クビにしてしまったのよ。」
「ゾフィーお嬢様に味方していたメイドも奥様がクビにしてしまったのよね。」
成程。だから、ここは使用人の数がこんなに少ないのか。借金で生活が苦しいから、あえて使用人の数を減らしているのかと思っていた。
「そのせいで旦那様は無駄遣いばかりするようになって…。」
そう言って、溜息を吐くメイドの言葉にリエルはふと、さも思い出したかのように言った。
「そういえば、最近、やけに商人の出入りが激しいですよね。お茶会や夜会に行く回数も多いですし。」
「そうなのよ!特に奥様とソニアお嬢様はしょっちゅう仕立て屋や宝石商を呼びつけては、ドレスにアクセサリーやら高い買い物ばかりしているの。旦那様も何だか怪しい物を売りつける商人から変な物を買っていたし…。」
「あの商人、あたしや他の使用人達にも商品を売りつけようと声を掛けてたわよ。幸運の壺だとか、魔除けの置物とか胡散臭い物ばかりだったわ。」
「でも、旦那様達はよくそんなお金がありますね。確かこの家は借金があるって聞いたんですけど、どこからそんなお金が…?」
リエルはメイド達に探りを入れた。
「この家のお金なんてほとんど残ってないわよ。旦那様や奥様達が散財できているのはゾフィーお嬢様がロンディ商会で稼いだお金があったから。
お嬢様が経営していたロンディ商会は旦那様が経営権利まで握ってしまったの。だから、ゾフィーお嬢様が今まで稼いだお金は旦那様達が好きに使うようになってしまったのよ。」
やっぱり、リヒターの言った通りだった。何とかしたいがロンディ子爵はゾフィーの実の父親だ。
リエルはあくまでもゾフィーの友人だし、商会の権利を取り戻すのはかなり難しい。
ゾフィーの行方を追うのに必死でそこまで頭が回らなかった。リヒターがいち早く気付いてくれたおかげでルイとゼリウスに既にその事は知らせてある。
だが、今すぐに状況を打破することは難しいかもしれない。
ロンディ商会の従業員は既に見切りをつけて、仕事を辞めて商会を去っていたという話も聞くし、業績も目に見えて悪化している。このままだと、ロンディ商会は近い内に破産してしまう。
まだゾフィーの行方の手がかりも掴めていないのに…。次から次へと問題が発生して焦りばかりが募っていく。
「リーゼ。申し訳ないですがこれを執事長に渡して頂けませんか?」
「あ、はい…。」
リヒャルトに扮したリヒターに声を掛けられ、リエルは頷いた。書類を受け取ろうと手を伸ばした。
すると、リエルが受け取るより早くにリヒターが手を離してしまい、バサバサッと音がして、書類が床に落ちてしまう。
「申し訳ありません。」
頭を下げて謝り、リヒターは床に落ちた書類を集めた。リエルもしゃがんで書類を集めるのを手伝う。
その時、ボソッと何かを耳に囁かれる。
リエルはハッとしてリヒターを見つめた。リヒターは一瞬、真顔になり、小さく頷いた。だが、すぐにニコッと笑い、
「ありがとうございます。私の不注意でお手数をおかけしました。」
では、よろしくお願いします。そう言って、外向きの笑顔で微笑み、リヒターは背を向けた。
リエルも何事もなかったかのように書類を手に持って執事長の元に向かった。
先程、リヒターは指定の場所と時間をリエルの耳元に囁いた。
何か手掛かりを見つけたのかもしれない。リエルは気を引き締めて周囲には気付かれないように振る舞った。
「リヒター。遅れてごめんなさい。」
「いえ。私も今、来たばかりですので。」
今は使われていない物置部屋に行くと、そこには既にリヒターがいた。部屋にいたのはリヒターだけではなかった。リヒターの横にもう一人いた。その男の姿にリエルは驚いて思わず声を上げた。
「ゼリウス…!?何であなたがここに…!?」
暗がりでも分かる癖のある金髪に黄緑色の目をした美丈夫は間違いなく、ゼリウスだった。
「私がお呼びしました。」
「な、何でそんな事を…、ゼリウスはロンディ家には顔を知られているのに…。」
「俺がリヒターに頼んだんだ。ゾフィーの行方を少しでも知りたくて…、」
「ゼリウス…。」
リエルはゼリウスの落ち込んだ表情に胸が痛んだ。以前より、痩せている。それに、目の下に隈もある。きっと、ほとんど寝ていないのだろう。
そうだ。ゼリウスだって、辛い筈だ。突然、婚約者のゾフィーがあんな形でいなくなったのだから…。
リエルですらこんな気持ちになるのだから、彼の悲しみや悔しさはどれ程のものだろう。
「ごめんなさい。ゼリウス。実は、まだ私もリヒターも手掛かりは何も見つけていなくて…、」
「…ああ。分かってる。そんな簡単に見つかる訳ない事は。だから、俺は今回の計画に賭けたんだ。」
「計画…?」
「それは私が今からお話しします。」
ゼリウスの言葉に何の事?と首を傾げるリエルにリヒターが口を開いた。
「漸く、下準備が整いました。上手くいくかは分かりませんが試してみる価値はあるかと。」
「下準備…?試すって何を?」
「ゾフィー嬢の妹に口を割らせる為の仕込みが完了しました。このような回りくどい方法ではなく、本人に口を割らせるのが一番手っ取り早いかと思いまして。」
「リヒター…。あなた、一体、何をするつもり?」
そんな簡単に上手くいくとは思えない。でも、彼は仕込みをしたといっていた。何か考えがあるのだろう。リヒターはニコッと微笑んだ。この胡散臭い笑い方…。間違いない。何か企んでいる。
「お嬢様も聞いたことありませんか?女はベッドの中では口が軽くなる、と。」
「え…、」
怪しげに微笑むリヒターには、ただ笑っているだけなのにぞくりとした色気があった。
リエルは口元が引き攣った。ま、まさか…、その嫌な予感は的中した。
「もう…!何でこんなに人の手が足りないのよ…!」
「しょうがないわよ。旦那様が次々と執事や使用人達を辞めさせてしまったんだから。」
「辞めさせられた…?」
リエルは窓拭きをしながら、一緒に掃除をしているメイドの言葉に反応した。
「そうなのよ!ほら、今まで家のことや予算の管理をしていたゾフィーお嬢様が行方不明になったから、この家のお金を旦那様が取り仕切るようになってしまったでしょう?お嬢様が来年の融資に使う為に保管していたお金を旦那様が無駄遣いだって言って全部使ってしまったのよ。」
呆れて何も言えなかった。融資のお金を使ってしまえば、どうなるかなど考えれば分かる事だ。
確かに一時的に生活は潤うかもしれない。けれど、そんな事をすれば来年の生活に強く影響する。融資のお金がなくなれば、収入はなくなるし、今よりもっと苦しい生活が待っている筈だ。
…そんな事にも気付かないのだろうか?いや。きっと、気付いてないし、分かっていないからこそそんな馬鹿な真似ができるのだろう。
何でこんな父親からゾフィーみたいな優秀な娘が生まれたんだろう。
駄目な親を持つと、子供は逆にしっかりしなきゃと思い、自立した子になると聞いたことがあるがゾフィーもそうなのかもしれない。
ゾフィーが家計の管理をしていたという事実はリヒターが突き止めてくれたのでリエルも知っている。
最初、聞いた時はひどい話だと思ったが今にして思えばゾフィーが予算管理をしていなければとっくにロンディ家は破綻していたことだろう。でも、だからといって、娘のゾフィーに仕事を押し付けていい理由にはならない。立派な虐待だ。
「ゾフィーお嬢様を補佐していた執事や使用人は旦那様を止めようとしたんだけど、それに怒って旦那様は全員、クビにしてしまったのよ。」
「ゾフィーお嬢様に味方していたメイドも奥様がクビにしてしまったのよね。」
成程。だから、ここは使用人の数がこんなに少ないのか。借金で生活が苦しいから、あえて使用人の数を減らしているのかと思っていた。
「そのせいで旦那様は無駄遣いばかりするようになって…。」
そう言って、溜息を吐くメイドの言葉にリエルはふと、さも思い出したかのように言った。
「そういえば、最近、やけに商人の出入りが激しいですよね。お茶会や夜会に行く回数も多いですし。」
「そうなのよ!特に奥様とソニアお嬢様はしょっちゅう仕立て屋や宝石商を呼びつけては、ドレスにアクセサリーやら高い買い物ばかりしているの。旦那様も何だか怪しい物を売りつける商人から変な物を買っていたし…。」
「あの商人、あたしや他の使用人達にも商品を売りつけようと声を掛けてたわよ。幸運の壺だとか、魔除けの置物とか胡散臭い物ばかりだったわ。」
「でも、旦那様達はよくそんなお金がありますね。確かこの家は借金があるって聞いたんですけど、どこからそんなお金が…?」
リエルはメイド達に探りを入れた。
「この家のお金なんてほとんど残ってないわよ。旦那様や奥様達が散財できているのはゾフィーお嬢様がロンディ商会で稼いだお金があったから。
お嬢様が経営していたロンディ商会は旦那様が経営権利まで握ってしまったの。だから、ゾフィーお嬢様が今まで稼いだお金は旦那様達が好きに使うようになってしまったのよ。」
やっぱり、リヒターの言った通りだった。何とかしたいがロンディ子爵はゾフィーの実の父親だ。
リエルはあくまでもゾフィーの友人だし、商会の権利を取り戻すのはかなり難しい。
ゾフィーの行方を追うのに必死でそこまで頭が回らなかった。リヒターがいち早く気付いてくれたおかげでルイとゼリウスに既にその事は知らせてある。
だが、今すぐに状況を打破することは難しいかもしれない。
ロンディ商会の従業員は既に見切りをつけて、仕事を辞めて商会を去っていたという話も聞くし、業績も目に見えて悪化している。このままだと、ロンディ商会は近い内に破産してしまう。
まだゾフィーの行方の手がかりも掴めていないのに…。次から次へと問題が発生して焦りばかりが募っていく。
「リーゼ。申し訳ないですがこれを執事長に渡して頂けませんか?」
「あ、はい…。」
リヒャルトに扮したリヒターに声を掛けられ、リエルは頷いた。書類を受け取ろうと手を伸ばした。
すると、リエルが受け取るより早くにリヒターが手を離してしまい、バサバサッと音がして、書類が床に落ちてしまう。
「申し訳ありません。」
頭を下げて謝り、リヒターは床に落ちた書類を集めた。リエルもしゃがんで書類を集めるのを手伝う。
その時、ボソッと何かを耳に囁かれる。
リエルはハッとしてリヒターを見つめた。リヒターは一瞬、真顔になり、小さく頷いた。だが、すぐにニコッと笑い、
「ありがとうございます。私の不注意でお手数をおかけしました。」
では、よろしくお願いします。そう言って、外向きの笑顔で微笑み、リヒターは背を向けた。
リエルも何事もなかったかのように書類を手に持って執事長の元に向かった。
先程、リヒターは指定の場所と時間をリエルの耳元に囁いた。
何か手掛かりを見つけたのかもしれない。リエルは気を引き締めて周囲には気付かれないように振る舞った。
「リヒター。遅れてごめんなさい。」
「いえ。私も今、来たばかりですので。」
今は使われていない物置部屋に行くと、そこには既にリヒターがいた。部屋にいたのはリヒターだけではなかった。リヒターの横にもう一人いた。その男の姿にリエルは驚いて思わず声を上げた。
「ゼリウス…!?何であなたがここに…!?」
暗がりでも分かる癖のある金髪に黄緑色の目をした美丈夫は間違いなく、ゼリウスだった。
「私がお呼びしました。」
「な、何でそんな事を…、ゼリウスはロンディ家には顔を知られているのに…。」
「俺がリヒターに頼んだんだ。ゾフィーの行方を少しでも知りたくて…、」
「ゼリウス…。」
リエルはゼリウスの落ち込んだ表情に胸が痛んだ。以前より、痩せている。それに、目の下に隈もある。きっと、ほとんど寝ていないのだろう。
そうだ。ゼリウスだって、辛い筈だ。突然、婚約者のゾフィーがあんな形でいなくなったのだから…。
リエルですらこんな気持ちになるのだから、彼の悲しみや悔しさはどれ程のものだろう。
「ごめんなさい。ゼリウス。実は、まだ私もリヒターも手掛かりは何も見つけていなくて…、」
「…ああ。分かってる。そんな簡単に見つかる訳ない事は。だから、俺は今回の計画に賭けたんだ。」
「計画…?」
「それは私が今からお話しします。」
ゼリウスの言葉に何の事?と首を傾げるリエルにリヒターが口を開いた。
「漸く、下準備が整いました。上手くいくかは分かりませんが試してみる価値はあるかと。」
「下準備…?試すって何を?」
「ゾフィー嬢の妹に口を割らせる為の仕込みが完了しました。このような回りくどい方法ではなく、本人に口を割らせるのが一番手っ取り早いかと思いまして。」
「リヒター…。あなた、一体、何をするつもり?」
そんな簡単に上手くいくとは思えない。でも、彼は仕込みをしたといっていた。何か考えがあるのだろう。リヒターはニコッと微笑んだ。この胡散臭い笑い方…。間違いない。何か企んでいる。
「お嬢様も聞いたことありませんか?女はベッドの中では口が軽くなる、と。」
「え…、」
怪しげに微笑むリヒターには、ただ笑っているだけなのにぞくりとした色気があった。
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