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第百五十七話 約束の日まで後、数日‥。
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「あ、姉上…!あんなに震えて…、そんなに嫌だったのですね!」
「いや。旦那様。あれ、どう見ても嫌がってませんって。むしろ、喜んでますから。」
執務室の窓からリエルを見下ろすルイの姿にロジェがすかさず突っ込んだ。
「というか、旦那様。いつまでそこに張り付いているんすか?リヒターさんから早く出来上がった書類を持ってくるように言われてるんすけど。」
未だに窓に張り付いているルイにロジェが催促するが…、
「うるさい!僕は今、それどころじゃないんだ!姉上の貞操の危機なんだぞ!」
ギロッと睨みつけるルイ。その迫力は凄まじいが慣れているロジェは動じた様子もなく、
「貞操の危機って…。帰り際にちょっとキスしようとしただけじゃないすか。」
「姉上はまだ未婚の女性だぞ!それなのに、キスなど…!許せるものか!」
ゴオオ、と背後から黒い炎でも纏っていそうな怒りに満ちた主人の姿にロジェは呆れた。
「しかも、あんなに馴れ馴れしく姉上にべたべたと…!」
「そりゃ、付き合ってますからね。あの二人。」
「僕は認めていない!」
「ま、まあ、まあ。アルバート様だって、ちゃんと節度を守っているじゃないですか。
ほら、さっきのキスも口じゃなくて、頬にしたし…、」
「フン。僕が牽制したからだろう。そうでなければ、あの男絶対姉上にもっと不埒な真似をしていたぞ。」
「…。」
これは駄目だ。ああいえばこういう。こう言えばああ言う。主人の頑なな態度にロジェは溜息を吐いた。
これは説得かなり厳しいですよ。アルバート様。そうロジェは心の中で思った。
「ああ。そうだ。書類なら、そこに置いてあるからリヒターに持って行ってくれ。」
「は!?っていうか、もうできていたんすか!?」
相変わらず仕事が早い。リエルにかまけて仕事を放棄しているかと思いきや、やることはちゃんとやっているルイだった。
ガタゴト、と規則的に揺れる馬車でアルバートは頬杖をつき、窓の外を見ていた。
―ルイの奴…。凄い目で俺の事、睨んでいたな。
帰り際にキス位なら…、と思ってリエルにキスをしようとしたアルバートだったが不意に殺気と視線を感じ、見上げると、こちらを射殺さんばかりに睨みつけるルイと目が合った。
さすがにその状況でキスする訳にもいかない。けど、せめてこれ位なら…。そう思い、譲歩した結果があの頬へのキスだった。
本当は、唇にしたかった…。更に欲を言うなら、大人のキスがしたかった。
アルバートはクッと悔し気に顔を顰めた。
仮面祭りの夜にリエルとキスした時は、歯が当たるという下手くそなキスをしてしまった。
だから、次は絶対に失敗しないようにと舌でサクランボの茎を結ぶ練習までしたのに…。
リエルとの大人のキスはまだまだ先になりそうだった。
だが今回は仕方がない。アルバートは悔しいがそう思い直した。
今はとにかく、あのルイの怒りをこれ以上買う訳にはいかない。
ルイの許しがないとリエルとの交際も結婚も認めて貰えないのだ。
ただでさえ、姉馬鹿なルイはリエルの相手にかなり厳しい目を持っている。
しかも、自分は昔からルイと折り合いが悪いし、二年前のことで完全に敵とみなされている。
かなり、可能性は限りなく低いが、やるしかない。もう自分には後がないのだから。
アルバートは覚悟を決めた。
リエルには秘密にしているのだが、実はルイとの話し合いの場は既に約束を取り付けている。
その話し合いの場にリエルは連れて行かないことにしている。
それは何故か?確かにリエルを連れて行けば、ルイを説得するのに大いに効果がある。
リエルには激甘なルイはリエルのお願いには昔から弱い。滅茶苦茶弱い。
リエルが説得すればこちらに勝算はあるだろう。けど…、多分それでは駄目だ。
何となく、アルバートはそんな気がした。
あのルイから認めてもらうにはリエルの手も借りずに自分の力で認めて貰わなくてはいけない。
リエルに説得させたり、一緒に連れて行こうものなら、あいつは絶対にいちゃもんをつけてくる。
「姉上の手を煩わせるなんて、情けない男だ」とか「姉上に頼りきるなんてそれでも男ですか?」とか「姉上がいないと満足に挨拶もできないんですか?」とか…。そして、ネチネチ小姑のように責めまくり、終いにはそんな男に姉上は任せられないというに決まっている。ルイとは昔から仲が悪いがそれでも昔からの幼馴染だ。あのルイの性格はよく知っている。だからこそ、アルバートは慎重に事を運ばないといけなかった。
約束の日まで後、数日…。アルバートは溜息を吐きながら、緊張した面持ちで夕日を眺めた。
「母上。失礼します。今、お時間よろしいですか?」
「あら、アルバート。お帰りなさい。」
帰ってきた息子が突然、部屋に来たことにグレースは驚きながらもにこやかに声を掛けた。
「お加減は如何ですか?」
「今朝は少し具合が悪かったけど…、もう大丈夫よ。少し休んだら、良くなったみたい。」
ベッドの上で半身だけを起こした状態でクッションに凭れているグレースはアルバートに今日の事を訊ねた。
「リエルとのデートは楽しかった?」
「え、ええ。まあ…。」
アルバートは母の言葉に驚きつつも、少し照れくさそうに頭を掻いて頷いた。今までのアルバートなら、恥ずかしくて必死に否定していただろうに…。少しずつ変わろうとしている息子の姿にグレースは微笑んだ。が、グレースはふとアルバートが気まずそうな表情を浮かべているのに気が付いた。
「どうしたの?アルバート。」
「母上。あの…、」
アルバートがどこか言い出しにくそうにしたが、やがて、いえ、と首を振り、
「何でもありません。」
ニコッと微笑んでアルバートは母の横を通り過ぎた。その後姿をグレースは不思議そうに見送った。
ふアルバートはあのパンケーキの店の一件を思い出した。
あの女共…。好き放題言って…。チッとアルバートは忌々しそうに舌打ちした。
今、思い返しただけでも怒りがこみ上げてくる。俺が誰と一緒にいようが俺の勝手だろうが。釣り合う?釣り合わない?何でそんな事まであんな赤の他人に決めつけられなくちゃならない。俺が好きで選んだんだ。それをとやかく言われる筋合いはない。
くそっ!ああいう女が一番嫌いだ。見た目で優劣をつけて、少しでも欠点があればそれを虚仮にする。
おまけにリエルはあの女共の言葉に傷ついていた。一瞬だけ泣きそうになっていた。
もう、それを見たら我慢できなかった。
女共を睨みつけてやったら、あからさまに怯えていた。勿論、それだけで許すつもりは毛頭ない。
だから、ちょっとした小細工をしてやった。結果的にあの女共がクリーム塗れになって恥を掻いた様を見て、ざまあみろ、と思った。リエルを傷つけた報いだ。
アルバートはその事に何の罪悪感も抱かなかった。そもそも、仕掛けたのはあちらだ。あれだけの暴言を吐いたのだから、喧嘩を売ってきたのも同然だろう。自分はそれを買っただけ。
リエルは自分が傷つけられても限界まで我慢するタイプだ。争いごとを嫌う優しいリエルは喧嘩を売られても買うことは滅多にない。リエルが動くのは自分以外の人間が傷つけられた時だけ。
だから、リエルの代わりに手を下しただけのことだった。
とは、建前で実際は自分がムカついたからだ。勿論、リエルに教えるつもりはない。
どんな悪女でも庇ったり、守ろうとする優しい女なのだから。真実を知れば、リエルは胸を痛めるだろう。
アルバートが躊躇したのは一瞬だけだった。母には昔から女には優しくするように、と言われてきた。
女は男よりも弱く、繊細でとても傷つきやすい。だから、大切に守ってあげるべき存在なのだと。
昔は、まあ、そうなのかと思ったものだったが今は少し違う。確かに女はか弱く、守るべき存在だろう。だが、時に女は強かで狡猾で残忍な生き物だ。アルバートはそれをよく知っている。
勿論、騎士として女は庇護するべきだという最低限の義務感はある。だが、それだけだ。自分の敵となる者、大切な者を傷つける存在は女だろうが一切の容赦はしない。アルバートはそう思っている。
女だから?それがどうした。悪意で人を傷つけようとする女などアルバートにしてみたら、最早守る価値のない害悪な生き物でしかない。
女には優しくしろ、との母の言葉は守るがアルバートにとって、リエルを傷つける存在は敵でしかない。
その敵が例え女だったとしても、女だからって手加減するつもりはない。
アルバートはそう心の中で呟きながら、自室に戻るのだった。
「いや。旦那様。あれ、どう見ても嫌がってませんって。むしろ、喜んでますから。」
執務室の窓からリエルを見下ろすルイの姿にロジェがすかさず突っ込んだ。
「というか、旦那様。いつまでそこに張り付いているんすか?リヒターさんから早く出来上がった書類を持ってくるように言われてるんすけど。」
未だに窓に張り付いているルイにロジェが催促するが…、
「うるさい!僕は今、それどころじゃないんだ!姉上の貞操の危機なんだぞ!」
ギロッと睨みつけるルイ。その迫力は凄まじいが慣れているロジェは動じた様子もなく、
「貞操の危機って…。帰り際にちょっとキスしようとしただけじゃないすか。」
「姉上はまだ未婚の女性だぞ!それなのに、キスなど…!許せるものか!」
ゴオオ、と背後から黒い炎でも纏っていそうな怒りに満ちた主人の姿にロジェは呆れた。
「しかも、あんなに馴れ馴れしく姉上にべたべたと…!」
「そりゃ、付き合ってますからね。あの二人。」
「僕は認めていない!」
「ま、まあ、まあ。アルバート様だって、ちゃんと節度を守っているじゃないですか。
ほら、さっきのキスも口じゃなくて、頬にしたし…、」
「フン。僕が牽制したからだろう。そうでなければ、あの男絶対姉上にもっと不埒な真似をしていたぞ。」
「…。」
これは駄目だ。ああいえばこういう。こう言えばああ言う。主人の頑なな態度にロジェは溜息を吐いた。
これは説得かなり厳しいですよ。アルバート様。そうロジェは心の中で思った。
「ああ。そうだ。書類なら、そこに置いてあるからリヒターに持って行ってくれ。」
「は!?っていうか、もうできていたんすか!?」
相変わらず仕事が早い。リエルにかまけて仕事を放棄しているかと思いきや、やることはちゃんとやっているルイだった。
ガタゴト、と規則的に揺れる馬車でアルバートは頬杖をつき、窓の外を見ていた。
―ルイの奴…。凄い目で俺の事、睨んでいたな。
帰り際にキス位なら…、と思ってリエルにキスをしようとしたアルバートだったが不意に殺気と視線を感じ、見上げると、こちらを射殺さんばかりに睨みつけるルイと目が合った。
さすがにその状況でキスする訳にもいかない。けど、せめてこれ位なら…。そう思い、譲歩した結果があの頬へのキスだった。
本当は、唇にしたかった…。更に欲を言うなら、大人のキスがしたかった。
アルバートはクッと悔し気に顔を顰めた。
仮面祭りの夜にリエルとキスした時は、歯が当たるという下手くそなキスをしてしまった。
だから、次は絶対に失敗しないようにと舌でサクランボの茎を結ぶ練習までしたのに…。
リエルとの大人のキスはまだまだ先になりそうだった。
だが今回は仕方がない。アルバートは悔しいがそう思い直した。
今はとにかく、あのルイの怒りをこれ以上買う訳にはいかない。
ルイの許しがないとリエルとの交際も結婚も認めて貰えないのだ。
ただでさえ、姉馬鹿なルイはリエルの相手にかなり厳しい目を持っている。
しかも、自分は昔からルイと折り合いが悪いし、二年前のことで完全に敵とみなされている。
かなり、可能性は限りなく低いが、やるしかない。もう自分には後がないのだから。
アルバートは覚悟を決めた。
リエルには秘密にしているのだが、実はルイとの話し合いの場は既に約束を取り付けている。
その話し合いの場にリエルは連れて行かないことにしている。
それは何故か?確かにリエルを連れて行けば、ルイを説得するのに大いに効果がある。
リエルには激甘なルイはリエルのお願いには昔から弱い。滅茶苦茶弱い。
リエルが説得すればこちらに勝算はあるだろう。けど…、多分それでは駄目だ。
何となく、アルバートはそんな気がした。
あのルイから認めてもらうにはリエルの手も借りずに自分の力で認めて貰わなくてはいけない。
リエルに説得させたり、一緒に連れて行こうものなら、あいつは絶対にいちゃもんをつけてくる。
「姉上の手を煩わせるなんて、情けない男だ」とか「姉上に頼りきるなんてそれでも男ですか?」とか「姉上がいないと満足に挨拶もできないんですか?」とか…。そして、ネチネチ小姑のように責めまくり、終いにはそんな男に姉上は任せられないというに決まっている。ルイとは昔から仲が悪いがそれでも昔からの幼馴染だ。あのルイの性格はよく知っている。だからこそ、アルバートは慎重に事を運ばないといけなかった。
約束の日まで後、数日…。アルバートは溜息を吐きながら、緊張した面持ちで夕日を眺めた。
「母上。失礼します。今、お時間よろしいですか?」
「あら、アルバート。お帰りなさい。」
帰ってきた息子が突然、部屋に来たことにグレースは驚きながらもにこやかに声を掛けた。
「お加減は如何ですか?」
「今朝は少し具合が悪かったけど…、もう大丈夫よ。少し休んだら、良くなったみたい。」
ベッドの上で半身だけを起こした状態でクッションに凭れているグレースはアルバートに今日の事を訊ねた。
「リエルとのデートは楽しかった?」
「え、ええ。まあ…。」
アルバートは母の言葉に驚きつつも、少し照れくさそうに頭を掻いて頷いた。今までのアルバートなら、恥ずかしくて必死に否定していただろうに…。少しずつ変わろうとしている息子の姿にグレースは微笑んだ。が、グレースはふとアルバートが気まずそうな表情を浮かべているのに気が付いた。
「どうしたの?アルバート。」
「母上。あの…、」
アルバートがどこか言い出しにくそうにしたが、やがて、いえ、と首を振り、
「何でもありません。」
ニコッと微笑んでアルバートは母の横を通り過ぎた。その後姿をグレースは不思議そうに見送った。
ふアルバートはあのパンケーキの店の一件を思い出した。
あの女共…。好き放題言って…。チッとアルバートは忌々しそうに舌打ちした。
今、思い返しただけでも怒りがこみ上げてくる。俺が誰と一緒にいようが俺の勝手だろうが。釣り合う?釣り合わない?何でそんな事まであんな赤の他人に決めつけられなくちゃならない。俺が好きで選んだんだ。それをとやかく言われる筋合いはない。
くそっ!ああいう女が一番嫌いだ。見た目で優劣をつけて、少しでも欠点があればそれを虚仮にする。
おまけにリエルはあの女共の言葉に傷ついていた。一瞬だけ泣きそうになっていた。
もう、それを見たら我慢できなかった。
女共を睨みつけてやったら、あからさまに怯えていた。勿論、それだけで許すつもりは毛頭ない。
だから、ちょっとした小細工をしてやった。結果的にあの女共がクリーム塗れになって恥を掻いた様を見て、ざまあみろ、と思った。リエルを傷つけた報いだ。
アルバートはその事に何の罪悪感も抱かなかった。そもそも、仕掛けたのはあちらだ。あれだけの暴言を吐いたのだから、喧嘩を売ってきたのも同然だろう。自分はそれを買っただけ。
リエルは自分が傷つけられても限界まで我慢するタイプだ。争いごとを嫌う優しいリエルは喧嘩を売られても買うことは滅多にない。リエルが動くのは自分以外の人間が傷つけられた時だけ。
だから、リエルの代わりに手を下しただけのことだった。
とは、建前で実際は自分がムカついたからだ。勿論、リエルに教えるつもりはない。
どんな悪女でも庇ったり、守ろうとする優しい女なのだから。真実を知れば、リエルは胸を痛めるだろう。
アルバートが躊躇したのは一瞬だけだった。母には昔から女には優しくするように、と言われてきた。
女は男よりも弱く、繊細でとても傷つきやすい。だから、大切に守ってあげるべき存在なのだと。
昔は、まあ、そうなのかと思ったものだったが今は少し違う。確かに女はか弱く、守るべき存在だろう。だが、時に女は強かで狡猾で残忍な生き物だ。アルバートはそれをよく知っている。
勿論、騎士として女は庇護するべきだという最低限の義務感はある。だが、それだけだ。自分の敵となる者、大切な者を傷つける存在は女だろうが一切の容赦はしない。アルバートはそう思っている。
女だから?それがどうした。悪意で人を傷つけようとする女などアルバートにしてみたら、最早守る価値のない害悪な生き物でしかない。
女には優しくしろ、との母の言葉は守るがアルバートにとって、リエルを傷つける存在は敵でしかない。
その敵が例え女だったとしても、女だからって手加減するつもりはない。
アルバートはそう心の中で呟きながら、自室に戻るのだった。
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