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第百十六話 もしかして、嫉妬してくれていたの?
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「ごめん。アルバート。ちょっと意地悪だったね。素直になれなかったのは私も同じなのに。」
「いや。お前は悪くないだろ。…お前が素直になれなかったのもどうせ、あの母親のせいなんだろ。
あの性悪女、リエルをネチネチ虐めてたもんな。お前が自分に自信がないのもそのせいだもんな。
そんなお前が言えるはずないよな。…こういうのは、普通男がリードするべきなんだし。」
性悪女。あの国内でも五本の指に入る美女として有名な母をそこまで言える男性は身内以外でアルバート位だろう。…あ、違った。リヒターも似たような事言っていたな。さすが兄弟。やっぱり、この二人って似ている。そんな事をぼんやりと思いながらもリエルは答えた。
「でも…、それでも、私だって勇気を出していれば何か変わっていたかもしれないのに…。
私もあなたに振られるのが怖いからって怖気ついちゃったから。私にだって原因はあるよ。」
「お前って奴は…、本当、どうしようもなくお人好しだな。そんなんじゃ、他の男に付け込まれるぞ。
…まあ、そんな奴いたらすぐに排除してやるけど。」
「は、排除って…、え?じょ、冗談だよね?アルバート?」
排除なんて物騒な言葉にリエルは引き攣った笑いを浮かべた。
思わず聞き返すリエルにアルバートはフッと笑った。
「…冗談だよ。」
その言葉にリエルはホッとした。そ、そうだよね。さすがにそれはしないよね。…そうだよね?
でも、あの時、一瞬アルバートの目が本気だった気がしたんだけど…、いやいや!さっき、アルバートは冗談だって言っていたじゃない!アルバートの言葉を信じることにしてリエルはぎこちなく笑った。
不意にアルバートはリエルを見つめると、
「リエル。お前の事…、抱き締めてもいいか?」
「う、うん!勿論!あっ…、」
アルバートはリエルの了承を聞くとすぐにリエルの腕を引き、そのまま正面から抱き締めた。
「アルバート…?」
何だか縋りつくかのような抱擁にリエルは不思議そうにした。
「…今でも夢を見ているんじゃないかって思うんだ。お前が俺を好きになってくれるありもしない夢を見ているんだって。
だから…、こうして抱き締めさせてくれ。お前の体温を…、匂いを感じたい。
これは現実なんだって…。」
「アルバート…。どうしたの?そんな不安がらなくていいのに。私はここにいるよ。夢なんかじゃない。
私にとっても夢みたいな出来事だけどちゃんと…、」
アルバートはギュッとリエルを抱き締める手に力を込める。
「アルバート…。どうして、そんな風に思うの?
何か理由があるの?昔の事だったら、もう十分苦しんだんだからそんなに自分を…、」
「ずっと、怖かった。お前がいつか俺以外の男の物になるんだって考えると、気が狂いそうだった。
…今でも、そうだ。」
「アルバート…?そういえば、さっきも同じこと言っていたよね?私には自分よりもふさわしい男がいるって。アルバートは私の事買い被り過ぎだよ。
私、全然男の人にはモテないもの。
地位や身分目当てで近づいたりする男の人はいても…、」
「そんな事ない。お前…、俺以外にも幾らでもいい男が周りにたくさんいるじゃないか。」
「…?いたっけ?そんな人?」
「いるだろう!リヒターとか!」
バッと勢いよく顔を上げてリエルの肩に手を置いたアルバートの言葉にリエルはビクッとした。
「え…、リヒターは私の家族みたいなものだし、そういう関係じゃないよ。」
「けど、あいつと妙に距離近かったじゃないか!執事の癖にこ、恋人同士みたいに振る舞っていたじゃないか!」
「えーと…、そうだっけ?
別にそんな事ないと思うけど…、それに、恋人同士みたいって…、そんな甘い雰囲気私達の間にはなかったと思うけど?」
「嘘つけ!リヒターと秘密話でもするみたいに耳元で話しかけられたり、あいつに果物や食べ物をあーんされたり、口元を拭われたり、髪やら手やら無防備に触られたりしてたじゃないか!くそ羨ましい…、じゃなくて!お前も淑女ならもっと警戒心持ちやがれ!」
「…もしかして…、嫉妬していたの?アルバート。」
グッと声を詰まらせるアルバートにリエルは今までの彼の行動を理解した。
そういえば、彼はいつも夜会でリエルを見かけると不機嫌な表情をしていた。
嫌味や皮肉を言われたりもした。
でも、よく思い返せばいつもアルバートに話しかけられる前はルイかリヒターがいた気がする。
そして、アルバートの言う通り、確かにリヒターから今言われたことをされていた。
「わ、悪いか!惚れた女が自分以外の男と仲良くしていたら嫉妬するだろうが!」
「フフッ…、アルバートったら…。あなた、誤解しているよ。」
「は?誤解?」
「あのね…、リヒターが私に耳元で言っていたのはアルバートがここに来ているから注意してくださいって忠告と何かあったら私が問答無用で追い払いますがどうしますかって言ってただけなんだよ。
後、あのあーんも私がお菓子ばっかり口にしているから栄養あるものも口にしてくださいって半ば無理矢理口に入れさせられていただけだし、その時に口の端についていたソースや食べかすを取ってくれただけだし…。
髪を触られたりしたのも塵がついていたりとかしてただけだし…、」
「そ、そうなのか?」
「うん。そうだよ。大体、リヒターは私より八歳も年上なんだよ?
私なんて、子供っぽくてそんな目で見てないよ。
私もリヒターの事は小さい頃からずっと一緒にいたから家族みたいなものだし。」
「じゃ、じゃあ、セイアスはどうなんだよ!?
お前、あいつと妙に親しかったじゃないか!
今まで縁談を全部断って、男の影がないリエルに安心していたのにセイアスには積極的に近づいているし、で、デートだってしてただろ?」
まさか、あのいつも自信に満ちている彼が不安に思っていたとは想像もしていなかった。
不安だったのは私だけじゃないんだ。
「ひょっとして、私にセイアス様に近づくなって言ったのって…、」
「…俺が近づいてほしくなかっただけだ。」
「…。」
リエルは唖然とした。全く気付かなかった。
アルバートがそんな思いを抱いていたなんて…。
「だから…、その…、悪かった。あの時はついかっとなって…、お前には酷いことを言った…。
セイアスをどう思っているのかお前の反応じゃ分からなくて、お前が何を考えているのか分からなくて、ついあんな事を言ってしまったんだ。」
リエルは思い出した。
アルバートがリエルに対して、気持ち悪いと暴言を吐いた出来事を…。
そっか。そういう事だったんだ。
―この人は…、昔から変わっていない…。
そうだ。アルバートは感情を上手く言葉で言えない人なんだ。素直になれなくて、ついつい正反対の言葉を言ってしまう…。
リエルは微笑んだ。
「アルバート。それも、誤解だよ。
だって、私セイアス様は好きでも何でもないから。」
「は?けど、お前…、」
「あのね、本当は私セイアス様が最近お母様のお気に入りの愛人だと聞いたから、どんな人か興味があったの。それに…、セイアス様がお母様を見る目は他の男の人達と違った。何だか見定めている様な目で…、その時、思ったの。もしかして、セイアス様は何か思惑があって母に近付いたんじゃないかって。
もし、そうなら、それを確かめなくちゃいけないいけないってそう思ったの。」
「リエル。お前…、気付いていたのか?」
アルバートの言葉にリエルは確信した。
彼も知っていたんだ。
「だって…、セイアス様の目はお父様がお母様を見ている目と似ていたの。
他の男の人達みたいに熱のある目で見ていない。
それに…、薔薇騎士が母に近付いたってことは何だか怪しいと思ったの。…アルバート。私ね、この前セイアス様から聞かされたの。
彼は陛下の命令で母の素行調査を命じられていたんでしょ?」
「なっ…、あいつ…、話したのか!?」
「うん。詳しいことは教えて貰えなかったけど…、ある程度の事情は知ったわ。」
「そう、か…。」
「だから、セイアス様のことは解決したからもういいの。でも、アルバートがそんなに苦しんでいたのに私…、気づいてあげられなかった。ごめんね?」
リエルはアルバートの手を取った。
「リエル…。じゃあ、お前本当にセイアスの事何とも思ってないのか?
けど、お前結構あいつに深い話までしてたじゃないか。母親の事とかセリーナとのこととか…、俺の事も…。」
「確かに最初は目的があってセイアス様に近付いたよ。セイアス様が私を受け入れてくれたのも何か計算している事なのかもしれないって警戒しながらもそれに気付かない振りをした。
でも…、セイアス様と過ごしていく中で不思議な安心感があったし、事情をよく知らなかったからこそ、あの話もしたの。その事に特に他意はなかった。」
「そ、それってあいつに惹かれているって事じゃ…、」
「惹かれていたのは認めるよ。
でも…、そういう色恋って意味じゃなくて…、私はね。セイアス様が何処かお父様に似ているなって思ったの。だから、惹かれた。それだけだよ。」
「は?エドゥアルト様とセイアスが?どこが?外見もだけど、雰囲気も性格も正反対じゃないか。」
「んー。何だろう。私も上手く言えないんだけど…、セイアス様の本の趣味とかチェスが強い所とか、男だからとか女だからとか性別にこだわらない器の広い所とか…、そういう所がお父様に似ているなって思ったんだ。後、あのお母様を前にしても全然靡いた様子がないのもお父様と一緒だなって思ったの。
でも、それ以上の感情は抱かなかったの。
私は…、私の心は…、ずっとあなたしかいなかったもの。今更、違う人なんて…、考えられない…。」
リエルの言葉にアルバートは動揺したように口元を腕で覆う。
「な、お前…、そ、そんな恥ずかしいこと平然と言うな!」
「アルバート…。もしかして、照れているの?」
「うるさい!こ、こっち見るな!」
「フフッ…、アルバート。可愛い…。」
「か、可愛い!?馬鹿言うな!
…男の俺が可愛い訳あるか!
…俺より、むしろ…、お前の方が…、」
「え…、」
リエルは固まった。私が…、可愛い?
「いや。お前は悪くないだろ。…お前が素直になれなかったのもどうせ、あの母親のせいなんだろ。
あの性悪女、リエルをネチネチ虐めてたもんな。お前が自分に自信がないのもそのせいだもんな。
そんなお前が言えるはずないよな。…こういうのは、普通男がリードするべきなんだし。」
性悪女。あの国内でも五本の指に入る美女として有名な母をそこまで言える男性は身内以外でアルバート位だろう。…あ、違った。リヒターも似たような事言っていたな。さすが兄弟。やっぱり、この二人って似ている。そんな事をぼんやりと思いながらもリエルは答えた。
「でも…、それでも、私だって勇気を出していれば何か変わっていたかもしれないのに…。
私もあなたに振られるのが怖いからって怖気ついちゃったから。私にだって原因はあるよ。」
「お前って奴は…、本当、どうしようもなくお人好しだな。そんなんじゃ、他の男に付け込まれるぞ。
…まあ、そんな奴いたらすぐに排除してやるけど。」
「は、排除って…、え?じょ、冗談だよね?アルバート?」
排除なんて物騒な言葉にリエルは引き攣った笑いを浮かべた。
思わず聞き返すリエルにアルバートはフッと笑った。
「…冗談だよ。」
その言葉にリエルはホッとした。そ、そうだよね。さすがにそれはしないよね。…そうだよね?
でも、あの時、一瞬アルバートの目が本気だった気がしたんだけど…、いやいや!さっき、アルバートは冗談だって言っていたじゃない!アルバートの言葉を信じることにしてリエルはぎこちなく笑った。
不意にアルバートはリエルを見つめると、
「リエル。お前の事…、抱き締めてもいいか?」
「う、うん!勿論!あっ…、」
アルバートはリエルの了承を聞くとすぐにリエルの腕を引き、そのまま正面から抱き締めた。
「アルバート…?」
何だか縋りつくかのような抱擁にリエルは不思議そうにした。
「…今でも夢を見ているんじゃないかって思うんだ。お前が俺を好きになってくれるありもしない夢を見ているんだって。
だから…、こうして抱き締めさせてくれ。お前の体温を…、匂いを感じたい。
これは現実なんだって…。」
「アルバート…。どうしたの?そんな不安がらなくていいのに。私はここにいるよ。夢なんかじゃない。
私にとっても夢みたいな出来事だけどちゃんと…、」
アルバートはギュッとリエルを抱き締める手に力を込める。
「アルバート…。どうして、そんな風に思うの?
何か理由があるの?昔の事だったら、もう十分苦しんだんだからそんなに自分を…、」
「ずっと、怖かった。お前がいつか俺以外の男の物になるんだって考えると、気が狂いそうだった。
…今でも、そうだ。」
「アルバート…?そういえば、さっきも同じこと言っていたよね?私には自分よりもふさわしい男がいるって。アルバートは私の事買い被り過ぎだよ。
私、全然男の人にはモテないもの。
地位や身分目当てで近づいたりする男の人はいても…、」
「そんな事ない。お前…、俺以外にも幾らでもいい男が周りにたくさんいるじゃないか。」
「…?いたっけ?そんな人?」
「いるだろう!リヒターとか!」
バッと勢いよく顔を上げてリエルの肩に手を置いたアルバートの言葉にリエルはビクッとした。
「え…、リヒターは私の家族みたいなものだし、そういう関係じゃないよ。」
「けど、あいつと妙に距離近かったじゃないか!執事の癖にこ、恋人同士みたいに振る舞っていたじゃないか!」
「えーと…、そうだっけ?
別にそんな事ないと思うけど…、それに、恋人同士みたいって…、そんな甘い雰囲気私達の間にはなかったと思うけど?」
「嘘つけ!リヒターと秘密話でもするみたいに耳元で話しかけられたり、あいつに果物や食べ物をあーんされたり、口元を拭われたり、髪やら手やら無防備に触られたりしてたじゃないか!くそ羨ましい…、じゃなくて!お前も淑女ならもっと警戒心持ちやがれ!」
「…もしかして…、嫉妬していたの?アルバート。」
グッと声を詰まらせるアルバートにリエルは今までの彼の行動を理解した。
そういえば、彼はいつも夜会でリエルを見かけると不機嫌な表情をしていた。
嫌味や皮肉を言われたりもした。
でも、よく思い返せばいつもアルバートに話しかけられる前はルイかリヒターがいた気がする。
そして、アルバートの言う通り、確かにリヒターから今言われたことをされていた。
「わ、悪いか!惚れた女が自分以外の男と仲良くしていたら嫉妬するだろうが!」
「フフッ…、アルバートったら…。あなた、誤解しているよ。」
「は?誤解?」
「あのね…、リヒターが私に耳元で言っていたのはアルバートがここに来ているから注意してくださいって忠告と何かあったら私が問答無用で追い払いますがどうしますかって言ってただけなんだよ。
後、あのあーんも私がお菓子ばっかり口にしているから栄養あるものも口にしてくださいって半ば無理矢理口に入れさせられていただけだし、その時に口の端についていたソースや食べかすを取ってくれただけだし…。
髪を触られたりしたのも塵がついていたりとかしてただけだし…、」
「そ、そうなのか?」
「うん。そうだよ。大体、リヒターは私より八歳も年上なんだよ?
私なんて、子供っぽくてそんな目で見てないよ。
私もリヒターの事は小さい頃からずっと一緒にいたから家族みたいなものだし。」
「じゃ、じゃあ、セイアスはどうなんだよ!?
お前、あいつと妙に親しかったじゃないか!
今まで縁談を全部断って、男の影がないリエルに安心していたのにセイアスには積極的に近づいているし、で、デートだってしてただろ?」
まさか、あのいつも自信に満ちている彼が不安に思っていたとは想像もしていなかった。
不安だったのは私だけじゃないんだ。
「ひょっとして、私にセイアス様に近づくなって言ったのって…、」
「…俺が近づいてほしくなかっただけだ。」
「…。」
リエルは唖然とした。全く気付かなかった。
アルバートがそんな思いを抱いていたなんて…。
「だから…、その…、悪かった。あの時はついかっとなって…、お前には酷いことを言った…。
セイアスをどう思っているのかお前の反応じゃ分からなくて、お前が何を考えているのか分からなくて、ついあんな事を言ってしまったんだ。」
リエルは思い出した。
アルバートがリエルに対して、気持ち悪いと暴言を吐いた出来事を…。
そっか。そういう事だったんだ。
―この人は…、昔から変わっていない…。
そうだ。アルバートは感情を上手く言葉で言えない人なんだ。素直になれなくて、ついつい正反対の言葉を言ってしまう…。
リエルは微笑んだ。
「アルバート。それも、誤解だよ。
だって、私セイアス様は好きでも何でもないから。」
「は?けど、お前…、」
「あのね、本当は私セイアス様が最近お母様のお気に入りの愛人だと聞いたから、どんな人か興味があったの。それに…、セイアス様がお母様を見る目は他の男の人達と違った。何だか見定めている様な目で…、その時、思ったの。もしかして、セイアス様は何か思惑があって母に近付いたんじゃないかって。
もし、そうなら、それを確かめなくちゃいけないいけないってそう思ったの。」
「リエル。お前…、気付いていたのか?」
アルバートの言葉にリエルは確信した。
彼も知っていたんだ。
「だって…、セイアス様の目はお父様がお母様を見ている目と似ていたの。
他の男の人達みたいに熱のある目で見ていない。
それに…、薔薇騎士が母に近付いたってことは何だか怪しいと思ったの。…アルバート。私ね、この前セイアス様から聞かされたの。
彼は陛下の命令で母の素行調査を命じられていたんでしょ?」
「なっ…、あいつ…、話したのか!?」
「うん。詳しいことは教えて貰えなかったけど…、ある程度の事情は知ったわ。」
「そう、か…。」
「だから、セイアス様のことは解決したからもういいの。でも、アルバートがそんなに苦しんでいたのに私…、気づいてあげられなかった。ごめんね?」
リエルはアルバートの手を取った。
「リエル…。じゃあ、お前本当にセイアスの事何とも思ってないのか?
けど、お前結構あいつに深い話までしてたじゃないか。母親の事とかセリーナとのこととか…、俺の事も…。」
「確かに最初は目的があってセイアス様に近付いたよ。セイアス様が私を受け入れてくれたのも何か計算している事なのかもしれないって警戒しながらもそれに気付かない振りをした。
でも…、セイアス様と過ごしていく中で不思議な安心感があったし、事情をよく知らなかったからこそ、あの話もしたの。その事に特に他意はなかった。」
「そ、それってあいつに惹かれているって事じゃ…、」
「惹かれていたのは認めるよ。
でも…、そういう色恋って意味じゃなくて…、私はね。セイアス様が何処かお父様に似ているなって思ったの。だから、惹かれた。それだけだよ。」
「は?エドゥアルト様とセイアスが?どこが?外見もだけど、雰囲気も性格も正反対じゃないか。」
「んー。何だろう。私も上手く言えないんだけど…、セイアス様の本の趣味とかチェスが強い所とか、男だからとか女だからとか性別にこだわらない器の広い所とか…、そういう所がお父様に似ているなって思ったんだ。後、あのお母様を前にしても全然靡いた様子がないのもお父様と一緒だなって思ったの。
でも、それ以上の感情は抱かなかったの。
私は…、私の心は…、ずっとあなたしかいなかったもの。今更、違う人なんて…、考えられない…。」
リエルの言葉にアルバートは動揺したように口元を腕で覆う。
「な、お前…、そ、そんな恥ずかしいこと平然と言うな!」
「アルバート…。もしかして、照れているの?」
「うるさい!こ、こっち見るな!」
「フフッ…、アルバート。可愛い…。」
「か、可愛い!?馬鹿言うな!
…男の俺が可愛い訳あるか!
…俺より、むしろ…、お前の方が…、」
「え…、」
リエルは固まった。私が…、可愛い?
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