上 下
3 / 20

UFO(unidentified falling object)

しおりを挟む
「ベントラ~ベントラ~スペェスゥゥ…」

オカルト研究サークル部員がUFOを呼ぶ奇妙な節が夜空に響く。八月下旬の深夜。仙一郎は大学の中央棟の屋上で行われているオカ研主催のUFOを呼ぶ会に参加していた。山の高低を活かして建てられた学び舎の中央棟は一番高い場所にある五階建て、その屋上は校内で最も見晴らしの良い場所だ。ほぼ山の中なので周りは真っ暗で星が綺麗に瞬いている。

「よう!この度はご参加ありがとな早見!」

軽沢が仙一郎に声をかける。

「来たからといって別にオカ研に入部する訳じゃないからな。」

「わかってるって!でも来てくれてうれしいよ!今夜は存分にUFO呼んでってくれよな!」

仙一郎の肩をポンポンと叩き笑顔を見せる軽沢は隙あらばオカ研に入部させようと画策してくる男友達だ。

「しかし軽沢?UFOは良いとして何でバーベキューもやってるんだ?」

仙一郎が指さす先には望遠鏡や三脚に固定されたカメラなどUFO用の機材に混じってバーベキューグリルやテーブルに乗った飲み物やおつまみがずらりと並び、肉が焼ける香ばしい匂いが漂っている。

「まあいいじゃないか!ただ呼ぶだけなんてストイックすぎんだろ!それに肉の匂いに誘われてUFOが寄ってくるかもしれないぜ!」

「な訳あるか!」

そうツッコミを入れる仙一郎であったが、彼が参加したのは肉が食べられるからであったのでそれ以上、深く追求はしなかった。

UFOが現れる気配もなく小一時間も経過するとUFOそっちのけでBBQの方が宴もたけなわとなっていた。オカ研部員は軽沢と紅一点の呉睦を入れて七人。大半がオカ研の姫である彼女を中心に取り囲んで盛り上がっている。仙一郎は独り邪魔されることなく椅子に座って、金欠でご無沙汰だった肉にかぶりついて至福の時間を楽しんでいた。

「肉、うめぇ…。」

おもわずつぶやく仙一郎は、こんな旨い肉を食べてると知ったらアルマは怒るだろうなと思った。もしアルマにバーベキューのことを話したら嬉々としてついてきて易々と肉を喰いつくししまう可能性があったので今夜の件はUFOの事しか言わなかったのだ。

また心配していたのはそれだけではない。巨乳の呉睦に逢わせたら

「その豊満な乳で予の食料をたぶらかすか!この泥棒猫が!」

と喧嘩を売るかもしれなかったのでなおさら連れてこれなかった。そんな愚にもつかないことを考えていると上空から声がする。

「スィア!仙一郎!」

聞き覚えのあるその声に見上げると塔屋の上から羽根のようにふわりと舞い降りて来る人影があった。

「リザ!」

仙一郎が名前を呼ぶのとほぼ同時に白いワンピース姿の女性は座る彼に抱き付き勢い余って二人は地面に倒れこんだ。

「久しぶりデスネ!逢いたかったデスヨ!」

リザは声を弾ませ彼の頬に猫のように顔を擦り付ける。仙一郎が唖然としていると騒動に気づいて軽沢らが集まってきた。

「早見…君?その方は?」

軽沢の言葉にリザが反応する。

「ワタシは仙一郎のガールフレンドのリザデース!」

「イヤ!ただの友達!」

仙一郎は飛び起きて被せるように否定する。

「ま!そういうコトにしておきまシヨウ!皆さんコンバンワ!」

そう挨拶すると彼女は、あっという間にオカ研部員らに囲まれてしまうが、金髪碧眼のすらっとしたモデル体型の美人なのだからそれも当然である。しかしそんな彼女の正体は、アルマと敵対し仙一郎を殺しかけた吸血鬼にして太陽の光を苦にしないデイウォーカー。

情けをかけて見逃した彼女が、また現れたことに緊張感が高まる。リザはと言えばオカ研メンバーと呑気に談笑しハイタッチまで飛び出している。そして一通り挨拶を済ませると仙一郎の元に戻ってきたので彼は身構えた。

「仙一郎!ちょっと込み入ったお話があるのデ二人きりになれませんカ?」

リザがそう言うと仙一郎が答えるより先に軽沢が反応した。

「どーぞ!どーぞ!俺らはイイんでどーぞ連れてって下さい!」

「おい!軽沢!」

不満の声を上げると軽沢は肩に腕をまわし強引に引き寄せ耳元で囁く。

「いーから!俺らもそんなに野暮じゃないって!しかしお前がこんな綺麗な人と付き合ってるとは隅に置けないなぁ。」

「だから違うって!」

「分かった!分かった!ところでお前ちゃんと準備はしてあるのか?突然来ただろ?」

「何をだよ?」

「お前のことだから常備してねーだろ!これだよ!これ!」

そういうと軽沢は懐の財布から避妊具を取り出した。

「だから違うって言ってるだろ!」

仙一郎は慌てて避妊具を持つ手を押し戻す。

「仙一郎~!早くイキましょ~ネ!」

焦れたリザは仙一郎の腕をつかむと強引に引っ張った。軽沢は連れ去られる仙一郎に向かって親指を立て声援を送った。

「ちゃんと避妊はしろよ!」

「だから本当に違うんだってば!」

仙一郎はその言葉を全力で否認した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

八奈結び商店街を歩いてみれば

世津路 章
キャラ文芸
こんな商店街に、帰りたい―― 平成ノスタルジー風味な、なにわ人情コメディ長編! ========= 大阪のどっかにある《八奈結び商店街》。 両親のいない兄妹、繁雄・和希はしょっちゅうケンカ。 二人と似た境遇の千十世・美也の兄妹と、幼なじみでしょっちゅうコケるなずな。 5人の少年少女を軸に織りなされる、騒々しくもあたたかく、時々切ない日常の物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サイキックな隠密諜報員見習いの日常

はれのいち
キャラ文芸
特殊能力を持つ主人公、国守祭喜(クニモリ サイキ) 高校一年生。   両親がいないサイキは、孤児院で育ち、天涯孤独で心の奥底で親の愛を求めて生きていく……なんて微塵もない男。 超楽観的で能天気なサイキは、極秘孤児院でも美女の職員に囲まれ楽しく育つ。 そんなとある日に諜報員が訪れ特殊な能力があるサイキに目をつけ諜報部養成施設で教育を受けさせる。そこで夏野と古湖に出会う。 諜報員の試験を受けるが不合格になり落ちこぼれ、サイキ達は国の指定する高校へ進学する事となる。  高校に通いながら、国の隠密諜報員の見習いとして細かな雑用任務を遂行する事となったサイキと仲間の日常の物語である。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...