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3-9(エロ)

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 すべらかな肌触りの何かに挟まれたまま、精液を放出する。
 総身に襲い掛かる倦怠感、脱力感。
 しかし、亀頭から伝わる不思議な感触に違和感を覚える。
 ペニスを包んでいたものが、精液でふやけているのだ。
 下着がそんな風になるわけもない。
 じゃあ俺は、何に射精したのだ?
 理解するよりも早く、俺の精液を受け止めたものが取り去られる。
 そして。
「あははははっ! 冬玄のチンポ、ザコすぎなんだけど!」
 降って来た哄笑は、聞き覚えのある声だった。
 射精の快楽に耐えるように閉じていた目を開く。
「お、尾羽!?」
 エナメル製の黒くて露出度の高い衣装に身を包んだ尾羽が、俺を見下ろしている。
 その手にライトノベルが握られているのが、よくわからない。
 もちろんどんな格好で読んでもいいのだが、わざわざその格好で読む……?
 状況の理解に努めようと、周囲を見回す。
 自室のベッドに仰向けになった俺は、全裸だった。
 ベッドの四隅に見慣れぬ柱が立っており、四肢を鎖でそれに縛られて前を隠すこともできない。
 どこにも繋がっていないが、首にも鎖のついた首輪が嵌められていた。
 そうか、ここが天国か。
 悪魔と契約して、あまつさえその能力で好きな女の子を殺そうとしたのに?
 では、地獄か?
 好きな女の子を模した姿の獄卒に責められることで、罪の意識を持てというのか。
 ドMに目覚めた俺への罰としては、ぬるいのではないのか?
「尾羽、だぁ?」
「うっ……!」
 急に眉をしかめた尾羽が、足の親指と人差し指で俺のカリ首を挟んで来た。
 足の指って、そんな器用なことできたのか。
 じゃなくて、それは尾羽が裸足であることを意味する。
 体温、汗、柔らかさ。
 ペニスに伝わるすべてで、俺は尾羽を感じている。
 射精したばかりのペニスが、硬度を失う前に再度勃起する。
「イオ様、だろうが」
 腹に張り付くペニス、その裏筋をしっとりとした尾羽の足が左右にぐりぐりと動き、責める。
「イオ……様……」
 い・お・さ・ま、と唇の形だけで繰り返され、復唱を促されていると理解。
 試しに口にしてみると、胸が切なくなるような甘い疼きを感じた。
 なんだ、これは。
 言葉を発するだけで、ペニスが跳ね、脳の奧が痺れるような快感が走る。
「Good boy」
 犬にかけるほめ言葉をねっとりした調子で口にする、イオ様。
 紅を塗った唇は、脳に焼き付くほど鮮烈で、つい見とれてしまう。
「Good boyなんてとんでもない! 俺はドブを這いずる汚いクソブタです!!」
「ブタなら私の許可なくしゃべるんじゃないっ!!」
「ア“ッ……!」
 カリ首を締めあげていたイオ様の足が浮いた、と思った瞬間。
 足コキをやめないでと思う間もなく、ズボリという音とともに肛門が熱を帯びる。
 ケツから脳天へと突き抜ける痛みに、涙が滲む。
 見れば、玉袋の下にイオ様のおみ足が潜り込んでいた。
「あ、ああっ……ああっ!!」
 慣らしもなしに、足の親指を直腸へと突き込まれた。
 突飛な事実を理解するのに、俺の頭では数秒を要してしまった。
 爪が伸びているようで、親指を動かされる度に内壁を掻かれる痛みで変な声が出る。
「わかった?」
「はい」
「ブタはそんな返事しないでしょうが!」
 イオ様は親指を根本までぶち込んでくださり、そのまま直腸を突き上げてくださった。
「ぶ、ぶひぃぃぃぃっ!!」
「よくできました、ブタ」
「あうっ!? ……ぶひぃぃぃ」
 勢いよく親指が抜かれ、先までとは別種の痛みに襲われる。
 もう少し堪能したかったような気もしつつ、再びカリ首を足で挟んでもらえたのが嬉しくなってしまう。
 敢えて、指を舐めろと言ってくださらないとは、イオ様はブタめにどこまでも厳しいのですね。
「次は、もう少し我慢しなさいよ。でないと」
 俺の生殺与奪の権を握るイオ様は、手に持っていたラノベを広げた。
 あ、あれはっ!!
 タイトルを確認して、羞恥のあまり肛門責めによる脳の痺れがぶっ飛んでしまった。
 イオ様に貸すことはないと思っていた、ブタめが夜の楽しみとして秘蔵していた怪作!!
 その名も『名門キャットファイト学園に男の俺が特別スパーリングパートナーとして入学させられました!?~負ける度にバニーガール女装で女性ホルモン注射されてしまいます!?~』だ。
 全年齢レーベルで出すのが狂気としか言いようのないタイトルだが、実際KENZENの範疇にある。
 それなのに、変態紳士の妄想力次第では“実用性”を帯びるという芸術性の高いラノベだ。
 作者のグルメシャンプー越前先生は、変態のオリンピックがあれば金メダルを我が国にもたらしてくれること請け合いだ。
 まさか、あれを音読しながら俺のペニスをしごくというのか!
「冬玄のラノベ、二度と読めなくなっても知らないからね?」
 イオ様は表紙ではなく、紙面を俺に向けて見せた。
 白い液体が糸を引くラノベは、中がぐっしょりと濡れてふやけてしまっていた。
「うわああああああああああああああああああああっ!!」
 起き上がろうと暴れるが、ガシャガシャと鎖が擦れる音を虚しく鳴らすだけ。
 知っていたとも、俺に鎖を引きちぎるほどの怪力などないことは。
「エロ寄りのをダメにするのもいいけど」
 言葉を一度切り、イオ様は俺の本棚を物色する。
 一冊だけでなく、まだ俺のラノベをティッシュ代わりにしようってのか!?
「やめてください、イオ様! 後生ですから!」
「純愛寄りの恋愛ものを精液で汚すのも心にクるでしょ? エロ同人描くやつをぶっ飛ばしたくなるような作品のヒロインを、まさか自分の精液で穢す罪悪感。最高でしょ?」
「おい、マジか。マジなのか」
 イオ様が手に取ったのは『透き通ったビスクドール、月光に照らされる青い薔薇』。
 戦時下、敵国の姫君に恋をしてしまったエリート将校の主人公が、スパイとして潜入することを命じられたことから始まる真面目な恋愛ものだ。
 設定こそ、目新しさはない。
 だが敵国に顔も割れているのに潜入するためのアイデアや、祖国をも敵に回して姫を連れて逃げる王道展開の熱さ、主人公が恋心を打ち明けられず第三勢力と偽って姫に接するもどかしさ、何より姫の可憐ながらもどこか恐ろしいミステリアスな雰囲気がたまらない傑作なのだ。
「さて、と。じゃあ、私がこれを読み終わるまで我慢できたら、解放してあげる」
「バカか!? 何ページあると思ってやがる!!」
 一巻から四五〇ページあるんだぞ。
 いくら速読が可能なイオ様でも、その口ぶりから察するに普通以下の速度で読むに決まっている。
「バカぁ? 誰に向かって言ってんだよ!」
 口をすぼめたかと思えば、イオ様の口から音を立てて放たれた唾が俺の亀頭に命中する。
「おっほ♡♡♡ イオしゃまぁ♡♡♡♡」
 仕方がないじゃないか。
 間接キスもまだなのに、ペニスに唾を吐いてもらえるなんて我々の業界ではご褒美以外の何物でもない。
 腰を浮かせて振りまくり、早くしごいて欲しいとアピールしてしまうってものだ。
 ブリッジって、体育で習った時はやる意味がわからなかったけど、役に立つものなんだな。
「あー! やっぱり私に向かってバカって言ったんだ」
「ち、ちがいましゅううう♡♡♡♡ バカは俺でしゅううう♡♡♡♡」
「今さら遅い、っての!」
「んおっ…………!」
 イオ様の足の甲が、睾丸に叩きつけられる。
 玉を押し潰される痛みの後、鈍い痛みが下腹部全体へと広がっていく。
「どう? 痛い? 痛かったら痛いって言いなさいよ!」
 再度の蹴撃。
 四肢を縛られているせいで、手で押さえることすらできない。
 無防備に晒した睾丸を三度、四度と蹴られてしまう。
「……痛い、痛いですぅ!」
 責め苦を与え、しかし歯を食いしばって痛みに耐えることすら許さない。
 俺を見下ろす嗜虐的な笑みに、胸の奥が温かくなり、下腹部もいっそう熱を帯びる。
 そのせいか、エスカレートするイオ様のボルテージに合わせ、蹴りからイオ様の恵んでくださる愛を感じられるようになった。
 ドM感覚が研ぎ澄まされた結果、睾丸が潰れる度に、微かに甘い疼きが広がっているのを知覚してしまったのだ。
 あぁっ♡ もっと蹴ってくだしゃい♡♡♡
 ブタめを女の子、いえ、メス豚にしてくだしゃああああい♡♡♡♡
「痛いだぁ? だからブタは人間の言葉を遣わねぇんだよ、オラッ!!」
「ピッ!? ピギィ~~~~~~~ッ!!」
 ああああああああああああああんっ♡♡♡
 性転換キックで女の子になっちゃううううううううううううううっ♡♡♡♡
 会陰部に玉袋がめり込む痛みで、目から星が散った。
「いい? 今度反抗的な態度を取ったら」
 ペニスを踏んでいた足で、イオ様は俺の胸に乗った。
 カウパー氏腺液と精液と汗の混じった不快な肌触りの液体が、ぐちょぐちょと塗りつけられる。
 そのままイオ様は俺に顔を近づけ、首輪についた鎖を持って俺の首を引っ張り上げた。
「ホントにキンタマ潰すからね♡」
「は、はい♡♡♡♡」
 キンタマ潰す、と言われてペニスを跳ねさせてしまうブタめを、どうかもっといじめてください♡♡♡♡
「勃起が止まらないねぇ? あ~、ヤラシイ。私の足だけで何回イケるのかなぁ?」
「何回もイキたいでしゅうう♡♡♡♡」
「何回もイッたら、何冊もラノベが逝っちゃうよ?」
「それはあぁっ! んああああ、でもイキたいでしゅううう♡♡♡♡」
「あははははっ! 冬玄の脳みそ、おちんちんに敗北しちゃったねぇ!」
「敗北射精したいでしゅううう♡♡♡♡」
「あ、でも。面白いところで射精したら、キンタマ潰すからね。飽くまでも我慢しなさいよ」
「しょんなああああ、負け射精させてよおおおおお♡♡♡♡」
 キンタマ潰したら、今度は本格的にアナル開発してくださいね♡
 ……とはいえ、既に一度射精しているのだ。
 ワンチャン、射精を堪えて『透き通ったビスクドール、月光に照らされる青い薔薇』は守れるかもしれない。
 風前の灯火状態の理性で、そんなことを考える。
 だが、そんな浅はかな考えはイオ様にはお見通しだったのだ。
「足コキも、案外運動になるのねぇ。暑くなっちゃった」
 首輪の鎖から手を放すと、演技する気もないわざとらしさで、イオ様はエナメル服をおもむろに脱ぎ始めた。
 好きな子が、目の前で胸を露わにしようとしている。
 状況を認識して、もはやそれだけで射精しそうなほどにペニスが膨張する。
 一方で、死にかけの理性がか細い声でそれは反則だろうと抗議している。
 けれど、見ないという選択肢を取れるだろうか。
 いや、取れない。
 エナメル服の下で抑圧されていた、イオ様の豊かな双丘が解放を喜ぶように揺れた。
 蒸れた谷間に鼻を埋めて匂いを堪能したい、溜まった汗を味わいたい。ついでに綺麗な色の乳首も転がしたい。総じてつまり、胸にむしゃぶりつきたい。
 湧き起こる獣欲、しかし俺は縛り付けられているのでその一切が適わない。
「ふう、スッキリした。じゃあ、読むから。冬玄は射精、我慢してなさい」
 俺の股間へと移動し、イオ様は右足を上げて俺のペニスを踏みつけた。
 甘い刺激が総身に走り、射精への期待感で胸が切なくなる。
 エナメルのミニスカートも丈が短すぎるせいで、仰向けの俺からパンツが丸見えだ。
 胸に釘付けでも、視界の端にそれが映る欲張りセット。
 もしも一生、こうしていられるなら。
 蔵書をすべてダメにすることとの交換でも、本当は釣り合いの取れない幸せなのかもしれない。

「えとぉ……そろそろ満足した?」
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