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教会が暴政を布くので、悪魔を呼び出して対抗しました~早起きは5000兆円の不徳~
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「もっと寄越せ」
くぐもった声が僕らの鼓膜を震わせた。
僕らは互いに顔を見合わせ、お互いのやつれた顔に嘆息した。
あいつが街にやってきて早ひと月か。
これじゃあ、何も変わらない。
日の出を報せるに等しい、早朝の鐘。
教会から聞こえてくるけたたましい金属音で、僕らは目を覚ます。
心臓に悪いそれで年寄りのそれが止まることだってある。現に、先週トムん家のトッペゼ爺さんがそれで死んだ。
「神に召されたのです」
トムん家のおじさんとおばさんが抗議に行っても、十字教のヒキガエルみたいな神父はその一点張り。その次の日にはトムん家のおじさんとおばさんは異端審問にかけられて広場で丸焼きだ。
「メルヴィン。僕はどうしたらいい」
僧兵に取り押さえられ、両親の丸焼きを見せられたトムが僕に会って最初に言ったのがそれだ。
そりゃ、どうしていいかわからないかもしれないけどエレメンタリーを出たばかりの僕にそんなのわかるわけがない。
「知らんがな」
「君の好きなサーニャの両親が、地下でこっそり異邦の神を祀ってることを密告するぞ」
「わかったよ、もう」
サーニャのことは好きだが、僕のお小遣いで身請けするのは無理だ。
婚約? プロポーズ?
違う、身請けだ。
サーニャはゴンザレスのことが好きだから、まともにやり合ったって無理だ。
金しか手段はない。
ともかく教会はクソ野郎というのが、この段落の要旨だ。
鐘で市民をたたき起こし、始業前に教会ででっちあげの白髭への祈りを強要してくるんだ。
「朝は神聖な時間! さっさと起きて神に祈りを捧げるんだ、この愚図で下賤な豚ども!!」
睡眠を削られると人心は荒れていじめが頻発し、脳は委縮して仕事や学業で致命的なミスを犯す。
トムのいとこのミランダは先月いじめを苦に自殺したし、サーニャの叔父のサルシッチャはサーモンと間違えてフグのカルパッチョを客に出して人死にを出した。
教会のやつらだってそうだ。人が死んでも何も思わないのは、心が荒れて脳が委縮しているからだ。
だから余計に市民に当たり散らす。
ともかく邪知暴虐の徒たる教会を討ち果たす必要がある、と誰もが思っていた。
僕には政治がわからないが、領主と教会がずぶずぶなのはわかる。
市民から吸い上げた税金を、領主や貴族と教会でぐるぐる回しているせいで僕らの暮らしは楽にならない。
「貴様ら下賤の民が神に拝謁するのに、どうして無料でそれが叶うと思う? 拝謁料を収めろ!!」
もちろん拝謁料にも消費税が課される。
何をするにも税金がかかる。
サーニャを身請けするときだって、きっと消費税がかかるのだ。
愛にまで課税する連中が神の愛を説くとはどういうことなのか。説いているのか知らんけど。
「メルヴィン、どうしたらいい」
教会の悪事を再確認したところでトムが改めて尋ねてきた。
逡巡の後、僕は首にかけられたロザリオを引きちぎり、十字を逆さに向けた。
「ウルーウァ・スーキン・ポールチオ! バルトーリン・デンタッタ・ペツサーリ! カウーパ・エレクチーオン・クラジミーア!!」
朗々とトムの詠唱が響く中、校庭で炎が燃える。
炎に照らされる中、無数の男女がやることをやっている。
何とは明言しないが男女が広いところで炎を囲めばやることは一つだ。
君たちだって文化祭の後夜祭や林間学校でやったはずだろ。
「トムが悪魔を呼び出したいそうなんですよ」
サーニャの両親にそう言うと、大喜びでこの魔宴が開かれることになった。
「すごい! すごいわメルヴィン!! ゴンザレスより上手い!! あなたと組むのって気持ちいい!!」
僕はサーニャと踊れるし、トムは悪魔が呼び出せる。サーニャの両親は騒げる。
これだけやっても消費税ゼロ!
うーん、三方ヨシ!
「貴様ら!! 一体ここで何をしておる!!」
異端審問官と神父がやってきて、大音声を張り上げた。
ナニをやってんだって? 見ればわかるだろ!!
夜のフォークダンスだよ。夜の。
「ウルーウァ・スーキン・ポールチオ! バルトーリン・デンタッタ・ペツサーリ! カウーパ・エレクチーオン・クラジミーア!!」
解散しないと逮捕するぞ、と叫ぶ肥え太ったヒキガエル神父。
だけど僕らは挫けない。もう泣くのは嫌だ、とトムに重ねて同じ呪文を詠唱する。
その時だった。
突如として炎は爆ぜ、火中より無数の泡が起こったのである。
【楽しそうだな、人間ども。俺様に供える贄はあるか】
くぐもった、しかし尊大な声が泡より発せられたのである。
「おお、偉大なる夜の王よ。贄はここに。我らが宴を開いたというのに、王への謁見に遅参せし者どもの魂。どうぞ召し上がりくださいませ」
サーニャの両親は異端審問官と神父を指差し、朗々と奏上した。
「き、貴様ら! 正気か!? 人の命をなんだと思っている!!」
慌てた神父が自分より偉い異端審問官を前に突き出して喚く。
異端審問官は動じず、聖句を唱えながら神父をサーベルで斬り殺した。
「悪魔よ、去れ! 俺は異端審問官だぞ! 先祖は従三位だぞ!!」
しかし悪魔は泡立つばかりで、眉一つ動かさない。もっとも、泡だからどこに眉があるのかはわからないが。
【聖職者が聖職者を殺すとは、気に入ったぞ】
泡は急に膨張すると、異端審問官へと肉薄し、その口から中へと入りこんだ。
「よっこらせ」
異端審問官に憑依した悪魔は、神父の死体を軽々と放り投げて炎へとくべた。
瞬間、炎は火柱となって天を焦がした。
そんなわけで教会は悪魔に乗っ取られた。
鐘は鋳溶かされ、教会はソープ店へと改修された。
領主も貴族も財産没収の上で豚舎へ繋がれ、糞尿まみれの体を毎日デッキブラシで磨かれている。
国が遣わした騎士団は悪魔が泡から出したサキュバスの群れの前に陥落し、僕らの街は治外法権の魔界と化した。
今では逆に王都から税金が入ってくる。
そこまではよかったのだが。
「せっかく受肉したんだし、美食飽食の限りを尽くしたいと思う」
前領主のもも肉を噛みちぎりながら、悪魔はそんなことを言い出した。
悪魔は牛でも人間でもペロリと平らげる大食漢で、厳格で禁欲的だった異端審問官の身体は見る影もない。
まるであのヒキガエル神父のごとく肥え太っていた。
人間でないのだから例えはおかしいかもしれないが、まさに規格外の食事量により、街の人々は食べるものがなくなってやつれていったのだ。
教会の祀る神は不在が証明されたが、悪魔は存在が証明されている。
騎士も英雄も勇者も骨抜きにされ、誰も悪魔に抗えない。
睡眠は保証され税金から解放され人々は巨万の富を得た。しかし食うものはあらず。
この状況を打破するものはあるのか?
いや、ないと嘆いて語尾に(反語)とつけて結びかけた時だった。
「できたぞ!!」
王都からドナドナされてきた王女を屠殺場で磔にした時だった。
僕より夜のフォークダンスが下手と発覚したゴンザレスが、屠殺場の扉を大袈裟に開いたのは。
「神も悪魔も超えるのはそう、科学!!」
ゴンザレスが天高く掲げたそれは、ちっぽけなゴム風船だった。
「なんだよ、それ」
悪魔を呼び出した廉で処刑されて肉になったトム、の妹のポリーが尋ねた。
「受肉しようが何しようが、悪魔の本体は泡だ。泡はどうすれば消える?」
「弾ければ消えるけど」
当然、そんなことは散々試されてきた。
王都から派遣された魔術師のアドバイスで暗殺、狙撃、あらゆる攻撃は試されたが駄目だった。
悪魔の防御相性は物理無効、呪殺反射だったし、神聖属性は不在を証明されている。
「それは、外的な攻撃だろう? こいつは違う」
ゴンザレス曰く、この風船は胃酸と反応してとてつもなく膨張する性質がある薬品が入っているのだという。
「内部だ。つまり、これを悪魔に食べさせれば、やつは消える」
早速それは実行に移された。
王女とフグの合い挽き肉で作ったギガ盛りハンバーグに風船を入れたものを、悪魔はまんまと平らげた。
「ぐおっ、貴様ら! 俺様に毒を盛りやがったな!?」
だぶついたヒキガエルボディがパンパンに張っていき、顔も手足も膨張する肉体に埋もれて、まさしく肉塊へとなり果てる。
「愚かな……愚かな……! そうやって都合が悪くなれば首を挿げ替えればいいと思っているのか!! 恥を知れ、人間どもがああああああっ!!」
刹那、悪魔の肉体は爆裂した。
無数の泡が弾ける音ともに肉片が飛び散った。
大質量の肉塊が衝撃波に乗って四散、無差別に街を爆撃した。
壁をなぎ倒し、人体を削ぎ落し、地を穿つ嫌なかけらは街を蹂躙した。
それでも、悪魔による食料の強制徴収は終わったのである。
「倒した……悪魔を、倒したぞおおおお!!」
何人もの血が流れたし、土地も荒れ果てたし、下手くそゴンザレスにサーニャが抱き着いていたが。
それでも、僕たちは人間の尊厳を取り戻した喜びに沸いていた。
誰がこの後に街を統べ、玉座につくのかという問題から目を逸らして────。
くぐもった声が僕らの鼓膜を震わせた。
僕らは互いに顔を見合わせ、お互いのやつれた顔に嘆息した。
あいつが街にやってきて早ひと月か。
これじゃあ、何も変わらない。
日の出を報せるに等しい、早朝の鐘。
教会から聞こえてくるけたたましい金属音で、僕らは目を覚ます。
心臓に悪いそれで年寄りのそれが止まることだってある。現に、先週トムん家のトッペゼ爺さんがそれで死んだ。
「神に召されたのです」
トムん家のおじさんとおばさんが抗議に行っても、十字教のヒキガエルみたいな神父はその一点張り。その次の日にはトムん家のおじさんとおばさんは異端審問にかけられて広場で丸焼きだ。
「メルヴィン。僕はどうしたらいい」
僧兵に取り押さえられ、両親の丸焼きを見せられたトムが僕に会って最初に言ったのがそれだ。
そりゃ、どうしていいかわからないかもしれないけどエレメンタリーを出たばかりの僕にそんなのわかるわけがない。
「知らんがな」
「君の好きなサーニャの両親が、地下でこっそり異邦の神を祀ってることを密告するぞ」
「わかったよ、もう」
サーニャのことは好きだが、僕のお小遣いで身請けするのは無理だ。
婚約? プロポーズ?
違う、身請けだ。
サーニャはゴンザレスのことが好きだから、まともにやり合ったって無理だ。
金しか手段はない。
ともかく教会はクソ野郎というのが、この段落の要旨だ。
鐘で市民をたたき起こし、始業前に教会ででっちあげの白髭への祈りを強要してくるんだ。
「朝は神聖な時間! さっさと起きて神に祈りを捧げるんだ、この愚図で下賤な豚ども!!」
睡眠を削られると人心は荒れていじめが頻発し、脳は委縮して仕事や学業で致命的なミスを犯す。
トムのいとこのミランダは先月いじめを苦に自殺したし、サーニャの叔父のサルシッチャはサーモンと間違えてフグのカルパッチョを客に出して人死にを出した。
教会のやつらだってそうだ。人が死んでも何も思わないのは、心が荒れて脳が委縮しているからだ。
だから余計に市民に当たり散らす。
ともかく邪知暴虐の徒たる教会を討ち果たす必要がある、と誰もが思っていた。
僕には政治がわからないが、領主と教会がずぶずぶなのはわかる。
市民から吸い上げた税金を、領主や貴族と教会でぐるぐる回しているせいで僕らの暮らしは楽にならない。
「貴様ら下賤の民が神に拝謁するのに、どうして無料でそれが叶うと思う? 拝謁料を収めろ!!」
もちろん拝謁料にも消費税が課される。
何をするにも税金がかかる。
サーニャを身請けするときだって、きっと消費税がかかるのだ。
愛にまで課税する連中が神の愛を説くとはどういうことなのか。説いているのか知らんけど。
「メルヴィン、どうしたらいい」
教会の悪事を再確認したところでトムが改めて尋ねてきた。
逡巡の後、僕は首にかけられたロザリオを引きちぎり、十字を逆さに向けた。
「ウルーウァ・スーキン・ポールチオ! バルトーリン・デンタッタ・ペツサーリ! カウーパ・エレクチーオン・クラジミーア!!」
朗々とトムの詠唱が響く中、校庭で炎が燃える。
炎に照らされる中、無数の男女がやることをやっている。
何とは明言しないが男女が広いところで炎を囲めばやることは一つだ。
君たちだって文化祭の後夜祭や林間学校でやったはずだろ。
「トムが悪魔を呼び出したいそうなんですよ」
サーニャの両親にそう言うと、大喜びでこの魔宴が開かれることになった。
「すごい! すごいわメルヴィン!! ゴンザレスより上手い!! あなたと組むのって気持ちいい!!」
僕はサーニャと踊れるし、トムは悪魔が呼び出せる。サーニャの両親は騒げる。
これだけやっても消費税ゼロ!
うーん、三方ヨシ!
「貴様ら!! 一体ここで何をしておる!!」
異端審問官と神父がやってきて、大音声を張り上げた。
ナニをやってんだって? 見ればわかるだろ!!
夜のフォークダンスだよ。夜の。
「ウルーウァ・スーキン・ポールチオ! バルトーリン・デンタッタ・ペツサーリ! カウーパ・エレクチーオン・クラジミーア!!」
解散しないと逮捕するぞ、と叫ぶ肥え太ったヒキガエル神父。
だけど僕らは挫けない。もう泣くのは嫌だ、とトムに重ねて同じ呪文を詠唱する。
その時だった。
突如として炎は爆ぜ、火中より無数の泡が起こったのである。
【楽しそうだな、人間ども。俺様に供える贄はあるか】
くぐもった、しかし尊大な声が泡より発せられたのである。
「おお、偉大なる夜の王よ。贄はここに。我らが宴を開いたというのに、王への謁見に遅参せし者どもの魂。どうぞ召し上がりくださいませ」
サーニャの両親は異端審問官と神父を指差し、朗々と奏上した。
「き、貴様ら! 正気か!? 人の命をなんだと思っている!!」
慌てた神父が自分より偉い異端審問官を前に突き出して喚く。
異端審問官は動じず、聖句を唱えながら神父をサーベルで斬り殺した。
「悪魔よ、去れ! 俺は異端審問官だぞ! 先祖は従三位だぞ!!」
しかし悪魔は泡立つばかりで、眉一つ動かさない。もっとも、泡だからどこに眉があるのかはわからないが。
【聖職者が聖職者を殺すとは、気に入ったぞ】
泡は急に膨張すると、異端審問官へと肉薄し、その口から中へと入りこんだ。
「よっこらせ」
異端審問官に憑依した悪魔は、神父の死体を軽々と放り投げて炎へとくべた。
瞬間、炎は火柱となって天を焦がした。
そんなわけで教会は悪魔に乗っ取られた。
鐘は鋳溶かされ、教会はソープ店へと改修された。
領主も貴族も財産没収の上で豚舎へ繋がれ、糞尿まみれの体を毎日デッキブラシで磨かれている。
国が遣わした騎士団は悪魔が泡から出したサキュバスの群れの前に陥落し、僕らの街は治外法権の魔界と化した。
今では逆に王都から税金が入ってくる。
そこまではよかったのだが。
「せっかく受肉したんだし、美食飽食の限りを尽くしたいと思う」
前領主のもも肉を噛みちぎりながら、悪魔はそんなことを言い出した。
悪魔は牛でも人間でもペロリと平らげる大食漢で、厳格で禁欲的だった異端審問官の身体は見る影もない。
まるであのヒキガエル神父のごとく肥え太っていた。
人間でないのだから例えはおかしいかもしれないが、まさに規格外の食事量により、街の人々は食べるものがなくなってやつれていったのだ。
教会の祀る神は不在が証明されたが、悪魔は存在が証明されている。
騎士も英雄も勇者も骨抜きにされ、誰も悪魔に抗えない。
睡眠は保証され税金から解放され人々は巨万の富を得た。しかし食うものはあらず。
この状況を打破するものはあるのか?
いや、ないと嘆いて語尾に(反語)とつけて結びかけた時だった。
「できたぞ!!」
王都からドナドナされてきた王女を屠殺場で磔にした時だった。
僕より夜のフォークダンスが下手と発覚したゴンザレスが、屠殺場の扉を大袈裟に開いたのは。
「神も悪魔も超えるのはそう、科学!!」
ゴンザレスが天高く掲げたそれは、ちっぽけなゴム風船だった。
「なんだよ、それ」
悪魔を呼び出した廉で処刑されて肉になったトム、の妹のポリーが尋ねた。
「受肉しようが何しようが、悪魔の本体は泡だ。泡はどうすれば消える?」
「弾ければ消えるけど」
当然、そんなことは散々試されてきた。
王都から派遣された魔術師のアドバイスで暗殺、狙撃、あらゆる攻撃は試されたが駄目だった。
悪魔の防御相性は物理無効、呪殺反射だったし、神聖属性は不在を証明されている。
「それは、外的な攻撃だろう? こいつは違う」
ゴンザレス曰く、この風船は胃酸と反応してとてつもなく膨張する性質がある薬品が入っているのだという。
「内部だ。つまり、これを悪魔に食べさせれば、やつは消える」
早速それは実行に移された。
王女とフグの合い挽き肉で作ったギガ盛りハンバーグに風船を入れたものを、悪魔はまんまと平らげた。
「ぐおっ、貴様ら! 俺様に毒を盛りやがったな!?」
だぶついたヒキガエルボディがパンパンに張っていき、顔も手足も膨張する肉体に埋もれて、まさしく肉塊へとなり果てる。
「愚かな……愚かな……! そうやって都合が悪くなれば首を挿げ替えればいいと思っているのか!! 恥を知れ、人間どもがああああああっ!!」
刹那、悪魔の肉体は爆裂した。
無数の泡が弾ける音ともに肉片が飛び散った。
大質量の肉塊が衝撃波に乗って四散、無差別に街を爆撃した。
壁をなぎ倒し、人体を削ぎ落し、地を穿つ嫌なかけらは街を蹂躙した。
それでも、悪魔による食料の強制徴収は終わったのである。
「倒した……悪魔を、倒したぞおおおお!!」
何人もの血が流れたし、土地も荒れ果てたし、下手くそゴンザレスにサーニャが抱き着いていたが。
それでも、僕たちは人間の尊厳を取り戻した喜びに沸いていた。
誰がこの後に街を統べ、玉座につくのかという問題から目を逸らして────。
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