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夜の自主学習 後

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「ぬわああああん疲れたもおおおおん」

 早々に自宅へ戻った俺は夜の……いや日中の自主学習に取り掛かったのだが、千字書き二千字書き、なんとか五千字を回ったあたりで遂に力尽きた(三千字を過ぎたあたりで「夜の自主学習」になってた)。

 現在時刻は二十時半くらい。まだ日付が変わるまで三時間以上あるが、慣れないことをした疲労から完全に集中力の切れた俺はもうレポートの続きが書けなくなっていた。

「あーもう! できないできない! 俺もうわかんないもん! 赤ちゃんだもん!!!!」

 ベッドへ身体を投げ出し駄々っ子のように叫んだら、なんの解決にもなっていないがいくらか気は紛れた。
 このまま気力が回復するまでちょっと休憩しよっと。いやでも眠っちゃいそうで怖いな。
 ここで寝たらマジで終わる。そう思うほど瞼が重くなってきた。「やばい……寝そう……」

「なら、私が寝かしつけてやろう」
「ふぁ?」

 偉そうな呟きとともに魔法少女さん二十九歳がベッドの下からぬらりと這い出してきた。もはやそこまで驚けなくなっている自分が悲しい。

「よく埃まみれにならなかったな。自慢じゃないがこの部屋で暮らし始めてからろくに掃除してないぞ」
「うむ。ゴミや埃が溜まっていたから綺麗にしておいたぞ」
「そりゃどうも……」
「ではさっそく甘えるといい」

 そう言って、ベッドに這い上がってきた氷崎がいきなり抱きついてきた。腹に俺の頭を抱え込むような体勢だ。
 途端、ふわりと石鹸のようなかすかに甘い香りに包まれる。
 傍から見れば優しく抱きかかえられているように見えるかもしれないが、実際のところかなり強い力で抑え込まれ、ろくに声も出すことができなかった。

「ん、ぐ、っはあ! な、なにしてんだ!」

 なんとか身体の向きをぐるりと変えた俺が文句を言うが、相手は聞く耳を持たない。うん知ってた。

「仰向けがいいのか。よしよし、いいこ、いいこ」

 膝枕の状態で頭を撫でられる。なんだこれは……。

「だって、赤ちゃんなのだろう?」
「こんなデカい赤ちゃんがいるかよ」
「自分で言ったくせに」

 言って、ほんの少し口の端を持ち上げる氷崎。

「いいから身を任せるといい。お勉強、頑張ったのだろう。偉いな。すごいな」
「なんで知ってるんだよ」

 微笑みで応えられた。まあいいや。
 それにしてもこうして横になっていると、張り詰めていた気が緩んでどっと疲れが湧いてきたな。疲れからか黒塗りの……じゃなかった。なんだか眠くなってきた……。おちんちんも気持ちいい……。

「ってなにしてんの!?」
「おちんちんをよしよししている」

 すげえなこの人……。真顔だよ。
 戦慄している俺に構わず、氷崎は股間を撫で回し続ける。指先でつーっとなぞったり、親指と人差し指とで輪っかを作って優しくしごいたり……あっ、こら、パンツに手を入れるな!

「よしよし。いつでも射精していいからな……そうだ」
「んっ、ちょ、やめ、っうぶぶぶ!?」

 しゅこしゅこと小気味よくチンポを扱いていた氷崎は急に手を止めたかと思えば、突然魔法少女服(笑)(痛)の上半身を捲り上げた。そして主張の激しい双丘を俺の顔に押しつけてきた。

「んっ……ミルクは出ないけれど、いっぱい吸っていいぞ」

 息ができず、たまらず喘ぐように口を動かすと、図らずも先端の突起が口内に収まった。舌で退かすように押してみたが、やや大きめの乳首はすぐに固くなり、居座って立ち退こうとしない。

「ん、ううっ……そんなに乳首をいじめないで」

 熱っぽい言葉を吐きつつも、チンポを扱く手は止めない。どうして俺は、不法侵入された女に授乳手コキされているんだ? 冷静に考えると気が狂いそうになったので、俺は考えることをやめた。バブバブ。

 触れた部分が際限なく沈み込むくらい柔らかな乳房に包まれ、コリコリになった乳首を吸わされている。どこか甘く、本能を刺激する香りでいっぱいになっている。
 ときに激しく、ときにゆっくりと。チンポは緩急をつけて扱かれ、時折玉袋まで優しく揉まれている。

 ああ、これは間もなく射精ますね。はい。まるで他人事のように自らの絶頂を予感したときだった。
 チンポを扱いていた手が唐突に止まった。

「な……なんで」

 思わず漏れてしまった呟きにはっとする。顔が熱い。

「ふふ……大丈夫、やめないよ」

 そんな俺に目を細めた氷崎の手には、なにやら筒状のものが……ってそれどうみてもオナホだ。え? どっから出したの?

「これは精液を搾り取ることに特化した特別製らしい」

 いやオナホってそういうものだから。精液を搾り取ることに特化してないオナホなんてないだろ。
 などという心の声は次の瞬間、チンポを襲った衝撃に打ち消され霧散した。

 ズニュンッ。

「ッうぁああっ!?」

 衝撃。そうとしか表現できなかった。ゴムだかシリコンだかエラストマーだか知らないが、まるで人肌のようないやそれ以上の質感を持ったに亀頭が吸い込まれた瞬間、抑え込まれてびくともしなかった腰が勝手に跳ね上がった。
 膝をガクガクと震わせながら見上げれば氷崎と目が会う。

「ちょっと待ってこれはやばい」
「わかった。大丈夫」
「絶対わかってなぁあっ!?」

 俺の返事を待たずにピストン運動が開始された。

「っふふ。どう、気持ちいい?」
「~~~~~~っ!」

 もはや声も出せない。声を上げた瞬間、チンポから体の中身が出ていってしまいそう。それほどまでに凶悪な代物だった。
 人肌に温められた陰穴は、鈴口から根元までヒダと突起が絡みついてくる。電動かと紛うくらい中がうねり、一刻もはやく精液を搾り取ろうとする。

「はあっ、はあっ……」
「んぐ!」
「ほら、もう我慢しなくていいんだ。射精して。ほら、射精して」

 オナホコキに興奮したのか、氷崎は再び強引に乳首を押し込んできた。すっかり固くなった先端が俺の舌をなぶるように動く。
 視界を覆う乳房の隙間から、空いたほうの手が俺の胸元に伸びるのが見えた。この期に及んでなにをするつ……。

「ぴぎゃぁっ!?」

 唐突に、乳首を軽く抓られた(五・七・五)。

 ギリギリまで張り詰めていた状態だった。不意の刺激によって、ザーメンダムは呆気なく決壊した。

 ビュウウウウウウウウウウウッ! ビュルルルルッ! ビュビュッ! ビューッ! ビュウウウウウウッ! ビュウウウッ! ビュプッ! ビュウウッ! ビューッ! ビュルルルッ! ビュウウウウウウッ!

 出し切った後の倦怠感が、穏やかな心地よさに包まれる。
 あ、これはだめだ。もう意識が――……


 * * * * *


「……はっ!?」

 目覚めは唐突だった。
 なんだか柔らかくて温かいものを枕にしていた俺は、がばっと身体を起こす。

「起きたか。おはよう」

 穏やかな顔をした氷崎が声を掛けてきた。いつの間に着替えたのか、ヒラヒラのコスプレ衣装はラフな部屋着へと変わっていた。

「ああ、おはよ……じゃなくて! い、いま何時!?」
「ん、午前二時を回ったところだな」
「お、終わった…………」

 現在時刻が無慈悲にも告げられ、ミッション失敗が確定した。これで単位も落としただろうな。あーあ……。
 とはいえ即留年というわけではない。四年間のうちどこかで再取得できる機会はある。なんとか挽回するしかないだろう。

 落としてしまったもんは仕方ないと、開き直ったら少し気が楽になった。
 そしてようやく俺は自分の状況を顧みることができた。氷崎はベッドに膝を折って座り、さっき俺はそこから身体を起こしたような……なるほど。どうやら俺は、膝枕をされたまま眠っていたらしい。ということは、氷崎はこんな時間までずっと膝枕をしてくれていたのか。

「あー、その、すまん、な?」
「……?」
「いやさ、そっちも仕事があるだろうに」
「ああ、構わないよ。私が好きでやっていることだ」
「そうかい」

 真っ直ぐな物言いに気恥ずかしくなって目を逸らした俺の目が、開きっぱなしになっているPCの画面を捉えた。

「んん……?」

 表示されていたのはメールソフトだった。俺はそこに違和感を覚えた。レポートの作成途中で力尽きたのだから、PCでは文書作成ソフトが開かれているはずだ。なのにどうして?

 気になってよく見れば、新着メール欄に山野井先生からのものがあった。どうせ説教だろうな……と重い気持ちで開いたのだが。

「四人の中で提出してきたのは極立さんだけでした。内容もよくまとまっています。頑張りましたね」

 ……え? は? え?
 どういうことだ?

 慌てて送信メールボックスを見れば、二十三時四十五分に山野井先生あてにメールを送っていた。添付ファイルを開けば、途中だったはずのレポートが完成していた。
 これは小人さんのしわざ……ではないだろう。俺は座ったままの氷崎をちらと見た。

 人のPCを勝手に、とか、勝手に課題を、とか、言語学の知識があるの? とか言いたいことはいろいろあったが、鍵を掛けても自由に出入りしてきたり、壁をぶち抜いたりする奴に言っても今更だった。それよりもいまは言わなきゃならんことがある。

「……助かった。ありがとう」

 俺の呟きに目を見開いた氷崎は、小さく微笑んで言った。

「すまない。きっと怒るだろうと思ったのだが、私のせいで疲れさせてしまったかと思うと我慢できなくてな。でも、お礼を言うのはこちらのほうだ」
「どうして……あ、補給がどうのこうのっていう」
「それもあるが。その、君の寝顔が思った以上に可愛らしかったからな。眼福、というやつだ」
「な……っ」

 氷崎は歯を見せて照れ臭そうに笑った。初めて見る笑顔だった。

 かあっと顔が熱くなった俺は「よ、よけいなところは触ってないだろうなあ」とかなんとか言ってPCにかじりついた。
 そして結局、氷崎が帰るまで振り向かないままでいるのだった。
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