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見ての通り私は魔法少女なのだが 後

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 数度の誤タップを経てから一一〇番に繋がるやいなや、俺は声を張り上げた。

「はい」
「も、もしもし、警察ですか? た、助けて下さい!」
「どうしました? 事件ですか、事故ですか?」

「ピンポーン! ピポピポーン!」

「じ、事件です! おおおお俺のど……て、貞操が狙われています!」
「…………はい?」

「ピポピポピン! ピピピポーン!」

 思っている以上にテンパっているせいか、舌がもつれてうまく回らない。
 対応してくれた警察の女性は呆れ半分苛立ち半分といった様子だ。これはマズい。

「ピピピピンポーン! ピポン! ピン、ポーン!」

「ほ、ほんとなんです! 魔法少女に! いや少女じゃないんですけど! とととにかく俺の精液が!」
「あのねえ! イタズラはやめなさい」

 それから「一一〇番へのイタズラは犯罪だ、あなたのような人がいるとほんとうに緊急の電話が繋がらなくなるのだ」と説教をされ電話を切られてしまった。

 いや「切られてしまった」じゃないが! 名前も住所も聞かれなかったぞ!? どうなってるんだ日本の警察は!
 強姦罪が強制性交等罪に名称変更されても男性の性被害が認知されないわけだ! 法学部です!

「ピピピピピピピピピピピピンポピポピポピポポーン!」

 うるっせえええ! 社会情勢を憂いている間にもチャイムは鳴り続ける。あの女、妙なリズムをつけて鳴らしてきやがって。聞いているだけで頭がおかしくなりそうだ。

 うううどうしよう……。巻き込んでしまうのはしのびないが、もう形振なりふり構わず友人たちに助けを呼ぶか……?
 玄関ドアに背を預け、土間にしゃがみ込み頭を抱えていると、唐突にチャイムの音が止んだ。

「ふむ、このくらいでいいか。こっちは……まあ仕方ない。すぐに補給できるだろう」

 郵便受け越しにそんな呟きが聞こえ訝しんでいると、女は早口でなにか聞き取れない言葉を口走った。英語……? ではないと思うが、なんなんだ……?

 首を傾げていたらすぐそばから「カシャリ」「カシャリ」と立て続けに音がした。
 なんの音だろうと思う間もなく、身体がバランスを崩して尻もちをついた。

 なにが起きたかわからない。へたり込んだ際に身体の向きが変わっていた。視界の先には二十センチほど開かれたドアが見える。
 呆気にとられている俺が見つめる先でヌルリと細い腕がありえない角度で侵入してきて、あっという間にチェーンが外されてしまった。

 体重を支えていた壁、いや、玄関ドアが引かれたのだと気づいたときにはもう遅かった。
 ピッキングの技術を持っていたのか、悠々とドアを開いたそいつが、腰が抜けてしまった俺を無表情で見下ろしていた。


 人はほんとうに恐怖を感じたとき、声も出ないのだ。俺はそれを身を持って思い知っていた。
 逃げ出そうにも腰が抜けてしまって立ち上がれない。仮に動けたとしてもここはアパートの二階。部屋の出入り口は玄関しかない。袋のネズミだ。

「さて、」

 女は淡々とした口調で言いながら一歩前に踏み出した。女の歩幅に合わせるように、ずりずりと俺は後退する。

「玄関先でのもなんだな。どうだろう、自分が射精する様子を他人に見られたい願望がなければ、もう少し奥に詰めてくれないか」

 返事などできるはずがない。ヒューヒューと音を鳴らす喉はカラカラに乾いて張りついている。原始的な恐怖心が勝手に身体を動かしているようだった。

 女がまた一歩踏み出し、その分だけ俺が下がる。それを何度か繰り返し、俺は土間から完全に後退した。

 びくびくしながら、俺は女を見上げる。
 女の身長は一六〇センチくらいか。ところどころムチッとしてはいるが、全体的には華奢と言っていい。
 対する俺は一八五センチ九十五キロ(ちょっと太った♡)だ。普通に考えたらこれだけ体格差のある相手に臆することはない、それは頭ではわかっているのだが、女の醸し出す異様な雰囲気に呑まれ、圧倒されてしまっていた。この女には、「こいつには絶対に勝てない」と思わせるなにかがあった。

 土間に立った女は後ろ手で玄関を閉めた。バタンと無慈悲な音が響き、その風圧でヒラヒラのスカート部分がフワリと持ち上がった。紫の紐パンだった。
 普通だったら喜んでもいいところだが、それを目にした俺はゾッと怖気が走った。

「よし、と。ちょっと靴を脱ぐから、待っていてくれ」

 言うと女は、俺に背を向けて玄関先に座り込んだ。ゴツい編み上げブーツの紐をゆっくりと解いていく女を目にして、思考がようやく冷静になってきた。
 油断している今が逃げるチャンスじゃないか? 抑え込んでしまえば……。

 だがしかし、そんなチャンスは訪れなかった。
 まったく身体が動かないのだ。腰が抜けているせいだけじゃない。指先ひとつ動かせず、瞬きさえできないのである。

 動け……! 動けよ……っ! 心のなかで叫んでも、身じろぎひとつできなかった。

 そのとき俺の心を読んだように、靴を脱ぎ終えてしまった女が振り返った。

「無駄だよ。君に拘束魔法を掛けたからね。ついでに催淫魔法も」

 なにをトチ狂ったことを言っているのだと思ったが、直前の行動を思い返してハッとした。

 女は玄関チャイムをやたらとリズムよく鳴らしていた。
 きっとこいつは、特殊なリズムでチャイムを鳴らすことで、俺を催眠誘導状態にしたんだ。突然俺が動けなくなったのも催眠術をかけられたからに違いない。

「とはいえ瞬きもできないのはつらいだろう。すまない、もういいよ」

 女が指をパチンと鳴らすと、見えない縄が解けたかのように全身が弛緩した。弛緩しているせいで立ち上がれそうにはないが……「あー、あー」お、声は出るようになっている。

 こりゃやっぱ催眠術に間違いない。合点はいったが、かといってどうすることもできなかった。
 せめて口だけでも一矢報いようと、俺は言った。

「催眠術で好き放題するつもりだな!? エロ同人みたいに!!」
「催眠……? なにを言っているんだ君は」

 首を傾げられてしまった。や、やめろ! 奇異の目を向けるな!
 目を丸くしていた女は、すぐにまた無表情に……いや、口の端が僅かに持ち上がっている。こいつ、笑っているのか?

「まあ〝エロ同人みたいに〟というのはその通りかもしれない、な」

 女は真っ赤な舌をチロ、と下唇に這わせた。その所作がやけに淫靡にみえたのはなぜだろう。これも催眠術のせいなのか。

 混乱する俺の前に女が屈み込む。そして両腕を伸ばし、ベルトに手をかけてきた。待て待て待て。

「他人のを外すのはなかなか難しいな……っと、よし」

 よしじゃないが。もう声に出して突っ込む気力もなくなっていた。
 いまの俺はまさにまな板の鯉。されるがままだ。どうせ体が動かないし、もうただただ早く終わってくれという気持ちにシフトしつつあった。
 エロ漫画とかでレイプされるときに泣き叫ばず静かになっちゃう女の子の気持ちがわかった気がした。

 満足気に頷いた女がずるずると腕を引くと、おパンツごとジーンズがずり下げられた。オチンポくんついにコンニチハだ。

「おお、これが君のペニスか」

 女は俺のイチモツを見て、感心したように呟く(こいつ躊躇なくペニスって言ったな)。

 無理やり引きずり出されたそれは、もちろん萎えきっていた。当然、当たり前である。こんな無理やりされて勃つわけがないのだ。童貞は繊細なのだ。

 しかしこの女……目の前にしゃがんでいるせいか食い込んだ紐パンが丸見えだな。

 ふーん、わりかしがっつりと食い込んでいるのに、毛がハミ出したりはしていないな。
 もしや剃ってるのか……? え、パイパン……? しかしビラビラも見えないし案外綺麗なアソコしてるんだなってなんで俺はこんな女の股間をまじまじと眺めているんだ! あ、だめだ! 反応するんじゃない! らめえ!

 ムクムクと勃ち上がるジュニアを見て、女は心なしか嬉しそうに言った。

「おお? 大きくなったよ」

 そのハスキーボイスで大きいとか言うのやめてよ! さらに反応しちゃうだろうが!?

「それに……すごく硬い」
「あふっう!?」

 唐突にチンポを優しく握られ、思わず情けない声が漏れてしまった。

「大丈夫、優しくしてあげよう。なあに、天井の染みでも数えていればいい」

 娼館で始めて客をとった嬢に手ほどきをする常連ジジイみたいな台詞を吐いて、女は身を乗り出した。
 背側に回り込み、後ろから腕を伸ばしてチンポを握ってくる。だが、位置がしっくりこないのか微調整を重ね、斜め後ろあたりに落ち着いた。
 そのままチンポをしごいてくるが、どうにもぎこちない。

「んっ、うーん。動画みたいにするのは難しいな……そうだ」

 なにかを思いついた様子の女は頭をひょっこりと突き出し、唾液を垂らしてきた。糸を引くそれが亀頭に触れた瞬間、ビクンと身体が勝手に跳ねる。

 そして手コキをが再開された。今度は唾液が潤滑液代わりになり動きもスムーズだ。
 ぬちゃぬちゃと卑猥な音を立て、チンポを握った手が上下に動く度に、ぽいんぽいんと豊かなバストが背中に押し付けられた。シャンプーなのか香水なのか、密着した女からはふわりと良い香りも漂ってくる。

 あーこれはもうダメかもわからんね。

「気持ちいいのかい?」
「んひゃあっ!?」

 耳元で囁くのはやめろぉ!
 俺の反応にクスクスと笑い声を上げながらも、扱く手は止めない。
 言ったそばから(言ってないが)女は再び耳元で口を開き、

「いいよ……もう射精しても……んっ♡」
「ん゛うゔっ!?」

 あろうことか俺の敏感・イヤーに勢いよく舌を突っ込んできたのだ!

 そのままグリングリンと舐め回され童貞の俺はそんな未知の刺激にしかもめちゃめちゃにチンポもしごかれてておおおおおんああそんならめっああああああああ!

「~~~~~~~~~~ッ!」

 ビュルルルルルルルルルルルッ! ビュウウウウウウウッ! ビュグッ! ビュブブッ! ビュウウウウッ! ビュッグンッ! ビュグン! ビュルルルッ! ビュウウウッ! ビュグン!

 間欠泉みたいに大量の精液が放たれた。女はチンポを握る手は離さず、もう片方の手をお椀状にして、放たれる白濁液を器用に受け止めていた。受け止めきれずにリボンに垂れているのがなんだかエロい。

 長い射精が終わると、女は精液がたっぷり溜まった手を口元に運んだ。そしてそのまま「ズズズ……」と下品な音を立てて吸い込むと、「……ンっ」小さく喉を鳴らして出したてホヤホヤのザーメンを嚥下した。さらには指先や衣装についた精液まで丁寧に舐め取っていく。

 そして俺の子種が吸いつくされた瞬間、女の全身を淡い光が包んだ……ように見えたが、目を凝らしてみればそんなことはなかった。
 きっと強烈な射精で血圧かなんかに影響が出て目眩がしたせいだ。見間違いだな。うん。

「ごちそうさま。助かったよ。今日のところは・・・・・・・ひとまずこれでいい」

 コスプレ女はゴックンを決めるやいなや、踵を返して帰り支度を始めていた。

「いや、え……?」

 戸惑う俺をよそに編み上げブーツを履いた女は、ヒラヒラと身体の前で手を振ってから玄関ドアを開けた。

「は? え? 帰るの?」
「じゃあ、また・・

 キイーッ、バタン。
 玄関が閉まってからも俺は立ち上がれなかった。
 ようやく絞り出すようにポツリ。

「またって言ったぁ……」

 その夜、俺の部屋では、玄関を眺めて呆然とする大男がいつまでも床に座り込んでいた。
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