魔法のフェノメノンとブツリガク ~20年ぶりに異世界に帰ってきた中年サラリーマンはそこで再び日常を過ごす事を決意しました~

ネコのカリカリ

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0-11 事情聴取

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 警官の一人が言う。

「どうされました?」

 レッドドラゴンが答える。

「あ、コミュホでの通話の説明の通りです。あの旦那があっしに魔法で攻撃しようと」

 コミュホ? さっきの端末の事かな。
 警官が受け答える。

「なるほど。では身分証を提示してください」

 レッドドラゴンは腰に巻き付けていたベルトについているバックの中から一枚の書類を出す。
 それを警官隊の一人が見ながら確認していく。

「えーっと、あなたはドラゴン種で、名前はマイケル。年齢は132歳と。職業は……」

「自営業です。運送会社の社長をしてます」

「なるほど。社長さんね。まだ若いのにしっかりしてらっしゃる」

 うん。そう若い。
 人間で言えば20代前半位か。
 なんて話はどうでもいい。
 ドラゴンが社長? いやいや、そもそも運送会社って……。
 もうどういう事か全然わからん。
 あ! 警官が俺の方をチラッと見ているぞ!

「で、あの人に魔法で攻撃されそうになったと。どんな魔法かわかります?」

「はい。おそらく精神系の魔法です。あっしは昔は狩りの対象だったのでわかります」

 いや、そりゃ俺もドラゴン狩ってたけどさぁ。
 存在自体が迷惑だったんだから仕方ないだろ……。
 人里の村とか度々焼いてたことだし……。
 レッドドラゴンが説明しだす。

「この旦那は今日この世界に戻って来た異世界人で……」

 警官隊がレッドドラゴンに言う。

「いや、大丈夫です。私たちが彼に聞きますから。被害届は出しますか?」

 レッドドラゴンが受け答える。

「いえ、まだ魔法の詠唱の途中だったので」

「と言う事は魔法はまだ行使されていない」

「そうなりますね」

「わかりました。ではあなたは帰っていいですよ。何かあったらまた通報してください」

「来ていただいてありがとうございました」

「いえいえ。で、あなたですが……」

 俺に話が向けられたぞ!

「服装から見るにあなたは異世界人ですね?」

「あ、えっと、今日この世界に戻ってきました」

「なるほど。何年ほど前にこの世界に居られたんです?」

「20年前です」

「なるほど。とりあえず身分証などを作りたいので、これから近くの警官隊の詰め所に来ていただけますか。色々説明しますので」

「あ、ちょっと連れと約束しているんですが……」

「忙しければ明日でも構いませんよ。今ここで臨時の身分証を作れますから」

 なんか手馴れてるな……。

「しかし、仮の身分証を制作しますがこれだけは守ってください。まずこの国の法を知ってください。そして魔法の行使は絶対にしないでください。後、他人や他種族などに傷害など危害を与えないでください。昔モンスターとされていた人達にも今では権利と言うものがありますから。その事を遵守できますか?」

「あ、はい。守ります……」

「しかし、攻撃などを受けた場合など反撃、つまり正当防衛の時は魔法の行使は認められています。まあそれは緊急の時ですから何かあったらなるべく私達警官隊を呼んでください。異世界から来られて色々大変でしょうがそれだけは守ってくださいね」

「えっと、俺の名前や年齢なんかは……」

「大丈夫です。あくまで『仮』ですから。身分証の提示を求められたらこれを出してください。そして正式な身分証を一週間以内に必ず作ってください」

 警官隊は俺に一枚の書類を渡して撤退していった……。
 うん。なんていうかね。
 なんか煮え切らんな……。
 というか、魔法禁止とか俺の存在価値が皆無と言うか……。

「旦那」

 そう、警官を呼んだレッドドラゴンはまだ帰ってなかったのだ。
 どうやら俺に話があるようだ。
 まあ俺に害を加える意思も無いようだし、ちょっとレッドドラゴンと意思疎通してみるか。

「あ、レッドドラゴンさんじゃなく、マイケルさん。すいません。ご迷惑おかけして……」

「いえ。大丈夫ですよ。しかし、あなたは高位の魔法が使えるんですね。第零魔法スリーピングファング。かなり初期の魔法ですが、戦争屋達が使っていた魔法ですよね」

「あ! わかります? その魔法俺が開発したんです」

「え! 魔法研究者とかすごいじゃないですか! ちょっとこれから一緒にご飯でもどうですか?」

「いや、まあ研究者ではないんですがね。でもいいですよ。ちょうど腹ペコだし。しかし、俺はこの世界に来たばかりなので持ち合わせが……」

「大丈夫です。私のおごりと言う事で」

「迷惑かけたのにそういうわけには……」

「いえいえ。魔法の事にお詳しい方の話を聞けるなんてめったには無いですから。あっしはおいしい骨付き肉の店を知っているんです。あ、酒はいけますか?」

 と言う事で、レッドドラゴン、いや、マイケルさんと一緒に飯を食う事になったのだ。
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