魔法のフェノメノンとブツリガク ～２０年ぶりに異世界に帰ってきた中年サラリーマンはそこで再び日常を過ごす事を決意しました～

０－３ 何かが落ちる音

「３万出たことだし、今日は家で缶チューハイだな」

　俺はこの細い路地から抜ける為に歩みだそうとした。
　そう、その時だった。
　俺がそれをしようとした時、裏路地の奥から『ドチャ！』という音が聞こえた。
　クソガキ共が入っていった方向からだ。
　俺は振り返った。
　何の音だ？
　何かが落ちる音だ。
　それは地面に何か柔らかい物が落ちた音……というか……。
　その時俺はある可能性を感じ、言い知れぬ恐怖を感じたが把捉を欲するという興味の方が勝った。

　漫画やラノベならこういう時、大抵『あれ』が落ちている。

　いや、そんなわけがない。さっきのクソガキ共が何かを捨てた音だろう。
　が、確かめておいた方がいい。そのゴミをあさったらクソガキ共の事が何か解るかもしれないから。
　そう考えながら音がした方に歩みよった。
　やはり床に何かがある。

「暗くてよく見えないな」

　独り言。
　自分の今抱えている悚然を少しでも和らげようという無意識的行為。
　俺はそれを良くする。弱い人間ゆえに。
　そうやって毎日の理不尽な葛藤やイラ立ちを紛らわしていると言うわけだ。
　そういうわけで、俺は様々な事を呟きながらポケットからスマホを出す。そして、懐中電灯のスマホアプリのアイコンをタップした。

「何かあるな。なんだ？」